野口五郎岳      三百名山  
 

201499(火)

一日目

 先週の富士登山の後、太股の酷い筋肉痛は思いのほか長引いた。結局、完全に痛みが引くまで一週間近くもかかってしまった。筋肉痛が長く続くのは、「加齢により損傷した筋線維の回復に必要な細胞分裂のスピードが衰えるため」ということらしい。何はともあれ辛い痛みは去ったので、夏山の締めくくりとして二泊三日で北アルプスを歩くことにした。

 目的の山々は、野口五郎岳、三ッ岳、水晶岳、そして念願の赤牛岳。それでなくとも三日間というタイトな日程なのに、野暮用があって最終日は遅くとも昼前には下山しなければならない。地図を前にあれこれ思案した結果、初日は七倉からブナ立尾根を登り、裏銀座を縦走して野口五郎小屋泊。二日目は水晶岳、赤牛岳から読売新道を下山して奥黒部ヒュッテ泊。そして最終日は、平の渡しを経由して黒部ダムへ向かうという計画にした。逆コースでは最終日の行程がどうしても長くなり、一日がかりとなってしまうので不可だ。

 まだ夜の明けやらぬ午前
4時半に七倉山荘前の駐車場に到着。広い駐車場に車は疎らで人の気配もない。2年前の夏は満車状態だったのが嘘のようだ。これなら静かな山歩きができそうとほくそ笑む。一方で夏山シーズンも愈々終わりかといささか寂しい思いもある。

 身支度を整えてまだ夜の明けやらぬ午前
5時に車を後にする。最初のマイルストーンは6Km先の高瀬ダム。ゲートが開く6時半以降であればタクシーを使うこともできるらしい。七倉尾根を貫く1150mの山の神トンネルに入ると中は真っ暗。か細いヘッドランプの光を頼りに歩いていると、どこかに人感センサーでも設置されているのか、トンネル内の照明が一斉点灯した。やれやれ助かった。これで暗闇を歩かずに済む。


      閉所恐怖症の人には厳しそうな長いトンネル             その後も続く小トンネルやスノーシェッド


 その後もスノーシェッドや小トンネルが続く道をだらだら登って行くと、お馴染み、無数の石を積み上げたロックフィル式のダムが見えてきた。堤につけられた九十九折れの道は傾斜が緩くて楽だが遠回り。我慢してジグザグ登っていたが、最後の一折れは痺れを切らせて岩場を攀じ登りショートカット、肩で息をしながら高瀬ダムの上部へと出た。


                 高瀬ダム                               ダム上部に到着


 不動沢トンネルを抜けて吊り橋を渡ると、間もなくブナ立て尾根の取り付き点だ。陽が昇って気温も上昇、汗ばむ陽気になってきたが、深いブナ林のおかげで直接朝日を浴びずに済むのが救い。


              吊り橋を渡る                             ブナ立て尾根の登山口


 小1時間ほど急登に喘いだところで休憩中の単独男性に追いついた。彼は昨晩不動沢でキャンプし、今日は烏帽子小屋でテント泊とか。背負う荷物はいかにも重そうだが、ゆとりの旅程は羨ましい。

 標高と反比例して樹高が下がってくるにつれ周囲の展望が開けてきた。烏帽子岳から不動岳へと続く稜線が良く見える。南沢乗越辺りの崩壊が凄まじい。広範囲に白くザレていて痛々しいほどだ。


          緑のカーテンで暑さが和らぐ                      正面は不動岳 崩壊が凄まじい


 三角点を過ぎて、もうひと頑張りするとようやく稜線に出た。烏帽子小屋前のベンチにどっかと腰掛けて大休止。もうかなり足にきている。
2年前に同じコースを歩いた際にはここまで余裕で4時間、それが今回は息も絶え絶えで5時間もかかっている。山の先輩から65歳を境にがくんと体力が低下するとの話を聞いたことがあるが、どうやら本当のようだ。筋力、筋持久力は50歳を境に急激に低下し、特に60歳を越えると筋量減少に加速度がつくらしい。自然の摂理とは言え、こうして自らの衰えを実感させられるのは何とも切ない。


        展望が開けてきたが針ノ木岳は雲の中              小じんまりした烏帽子小屋 背後には烏帽子岳 



赤牛岳 読売新道の尾根がいかにも長い!


 少々ブルーになった気分は、真正面に広がる赤牛岳の大パノラマで癒して次のマイルストーン、三ツ岳へと向かう。左手には唐沢岳と餓鬼岳の山並み、右手には赤牛岳の長大な尾根を間近に眺めながらの稜線漫歩だ。


               烏帽子岳                                   唐沢岳、餓鬼岳


 登山道は三ツ岳を巻いているが、この山はどうしても登っておきたい日本百高山の一つ。本来の登山道は山頂の右側を巻いているが、同じ思いの人がいるようで山頂に向かって薄い踏み跡が付いている。植生にダメージを与えないよう細心の注意を払いつつ、踏み跡を辿って山頂に立った。
2845m、日本で47番目に高い山だ。


           三ツ岳への登り                                   三ッ岳山頂


 進行方向にはようやく野口五郎岳の雄大な山容が姿を現した。山腹を巻く縦走路には若者
3人パーティが軽快な足取りで先行しているのが見える。再び踏み跡を辿って登山道に戻り、彼等の後を追う。


槍ヶ岳を正面に野口五郎岳へと急ぐ


 午後
2時頃(GPS電池切れで詳細時間不明)に野口五郎小屋到着。スタッフ総出で屋根に青ペンキを塗っていた。午後になってどこからともなくガスが湧いてきたので、宿泊の受付は後回し。ザックを預けて野口五郎岳の山頂をピストンすることにした。頂き迄500mほどだろうか。だだっ広い広場のような山頂に到着した頃には、峰々は既に雲の中に没しつつあり期待した眺望は得られなかった。


       屋根のペンキ塗り最中の野口五郎小屋                     野口五郎岳山頂



明日歩く真砂岳、水晶岳方面の様子


 小屋に戻り受付を済ませ、与えられたねぐらに荷物を置いたら、さっそくビールで乾杯。そうこうしている間に登山者が続々と到着。この日は、竹村新道を登ってきたオバサン
4人組、水晶小屋から赤牛岳を往復してきたという年配の男性、若いご夫婦、それと私の8名が同宿となった。年配男性曰く、赤牛岳へ向かう途中で熊を目撃したとか。明日同じコースを歩く予定なのでちょっと心配だ。

 オバサン達は海外登山もこなすかなりのキャリアをお持ちのようで、色々と面白いお話を聞かせて頂いた。夕食後は早目に就寝。小さな小屋ながら殆ど個室状態でゆっくり休むことができた。


行動時間 
9時間30


二日目(赤牛岳)へ

三日目(黒部湖)へ


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