富山・長野県 2696m | |
第一日目(五竜岳)より続く 2011年9月8日 第二日目 小屋泊まりにつきものの鼾に悩まされることもなく熟睡できた。逆に私の鼾に煩わされた人がいたかも知れないが、それは分からない。午前4時起床のつもりが早々と3時過ぎには起きだした人がいたので、つられるように寝床を離れた。 洗面や朝食を済ませて4時過ぎに山荘を出発。9月ともなるとこの時間はまだ真っ暗だ。ヘッドランプの明かりを頼りに白岳を登る。ピークからハイ松帯のなかを、標高差約200mを一気に下る。下りきった辺りで空が白んできた。朝焼けを背景に富士山がくっきりと見えている。直線距離で250kmほどだろうか。まだ夏の残り香がある季節なのに、大気がこれほど透明度の高い日も珍しい。
唐松岳が近くなると稜線は痩せて急峻な岩峰地帯になってきた。要所要所に鎖がついている。この難所を抜けると唐松頂上山荘が見えてきた。山荘前を素通りさせてもらい唐松岳へと向かう。唐松岳山頂は小屋から指呼の距離だ。緩やかな稜線を歩み、久々の唐松岳の頂に立った。その昔、5月に八方尾根からスキーを担いで登ったことがあるが、もう40年も前のことだ。
高曇りながら、目の前に聳える剣岳をはじめ北アルプスの峰々はもとより中部山岳の全てが見渡せそうな大展望。遠くは富士山、その両脇には八ヶ岳や南アルプス。これほどの眺望をエンジョイできるのは、北アルプスでは初めてかもしれない。山頂で五竜山荘に用意してもらった弁当を食べて、本日のハイライト、不帰キレットに備えて腹ごしらえをする。 今日のコースは誠にアップダウンが忙しい。登ったと思うとすぐに降りだ。山頂を後にして、しばらくは変わり映えのしない尾根道を下る。破線コースだけあって三峰を越えた辺りから途端に稜線は痩せて険しくなってきた。鎖の連続する急な登り下りをして唐松岳から300mほどを下る。ここからガレ場の急登が結構きつい。400mを高度差を一気に取り戻し、天狗ノ頭に立った。頭というより天狗岳と呼んでもいい程、立派なピークだ。ここからしばらく下ると天狗山荘が見えてきた。
小屋の前のベンチでライ麦パンにチーズのランチ。いつもは日持ちのするコンビニの調理パンなのだが、今回は少しメニューを変えてみた。目の前に聳える鑓ヶ岳はまるで砂利を積み上げたような山だ。石灰岩が含まれているのか、雪が積もったかのように白い。この頂に立ってようやく本日の目的地の白馬岳が視界に入ってきた。
しばらく下って行くと杓子岳の山腹をトラバースする道が見えた。杓子岳をパスすることも出来るが、白馬三山を踏破するせっかくの機会なので山頂へ向け直登する。山頂にはバンダナを巻いた髭のオジサンがいて山座同定を手伝ってくれた。それにしても正午を回っても大気の透明度が変わらないなんて、湿度が相当に低いのだろう。まるで晩秋のようだ。
今日は白馬山荘までの予定なので、時間的な余裕はたっぷりある。バンダナ氏と別れた後、しばらく一人になった杓子岳山頂で周囲を観察しつつのんびり寛いだ。前回白馬岳に登った際にはガスに隠れて気がつかなかったが、旭岳が意外な存在感で聳えている。登山道は山腹をトラバースしているが、山頂へのルートはあるのだろうか。小雪渓の雪は殆ど融けて登山道がむき出しになっている。大雪渓の下部にはまだ雪が残っているようだ。(昨年6月の様子はこちら)
午後零時半を回ったところで下山開始、ゆっくり白馬山荘に向けて歩いた。山荘にチェックインすると、8人分の布団が用意されている小部屋が割り当てられた。幸い宿泊者は5人で打ち止めだった。そのうちの二人は蓮華温泉から来られた方々で明日は雪倉岳をピストンして鉱山道経由、再び蓮華温泉へ下るとのこと。そのコースも面白そうだが、将来、特に花の季節にでもとっておこう。 明日の天気は下り坂とのことなので、今日中に白馬岳の山頂を踏んでおくことにする。一休みした後、手ぶらで白馬岳を目指した。山頂は人であふれていた。明日歩くつもりの雪倉岳を遠望、その向こうの朝日岳は何故かここだけ雲に隠れている。能登半島や日本海がクリアに展望できるのには驚いた。
再び山荘に戻りカフェテリアで生ビールを頂く。こんな優雅な登山はかつてあったろうか。これで個室にでも泊まれば完璧なのだが。それでも時間を持て余したので外のベンチで夕日を浴びながら再びビール。なまじ時間があるからいけない。あくせく日帰りしている方が余程健康的ということだろうか。夕食後は、なでしこの北朝鮮戦を地デジで観戦。山の上とはいえ別世界のようだ。どうやら明日の富山県は雨になるらしい。出来るだけ早や出しようと床に着いた。 行動時間 9時間20分 歩行時間 8時間10分 三日目へと続く |