白馬岳  富山・長野県 2932m   百名山
 
  

201065

 白馬岳には学生時代に白馬大池経由で一度登ったことがある。ちょうど夏の盛りの頃だったので、半ズボンにキャラバンシューズという出で立ちであったが、無防備の太腿や脹脛が真っ赤に日焼けして、とても辛い思いをした。以来山歩きにはどんなに暑くても長ズボンと決めている。ほぼ40年ぶりの白馬岳となるが、今回は雪がまだ豊富に残る大雪渓から頂上を往復することにした。

 自宅から未明の中央高速をとばして4時間半かけて猿倉に到着。猿倉荘下の登山者用駐車場には既に30台ほどが先着しており、身支度を終えた登山者が三々五々歩き始めている。空を見上げると峰々は雲に閉ざされているし、時折ぱらぱらと小雨が降ってくる。予報によれば、今日は寒気の影響で天候が不安定ということらしい。歩き出してすぐに立ち寄った猿倉荘で「小雪渓の雪のつき方が悪いのでピッケルを持参した方が良い」とのアドバイスを受けた。車まで取りに戻るのは面倒だったが、忠告には素直に従うことにした。ピッケルをザックに固定して出直しだ。時刻は6時ちょうど。




              猿倉の駐車場                             雪の残る林道歩き




 猿倉荘からは、いったん樹林のなかの小道を歩くが、すぐに林道歩きとなる。林道沿いの残雪が次第に多くなるが、急ピッチで進む融雪で道が川になっているところもある。樹林帯に入ると完全な雪道となる。6月の雪面はズブズブと頼りなく、踏み抜きに気をつけながら進む。やがて小さな沢を横切るが、適当な渡渉ポイントが見当たらない。少しジャンプすれば対岸の石に足が届きそうであるが、下手をすれば雪解け水にダイブして全身ずぶ濡れになるかも。ここは慎重に無理はやめよう。足首まで水に浸かったが、水流のなかのしっかりした石伝いに対岸へ渡った。しばらく進むと白馬尻周辺と思われるところまで来たが、山小屋らしきものは見当たらない。見落としたのか、雪の下であったのか???結局のところどうなっていたのかよくわからない。





            白馬尻へと向かう                           大雪渓らしくなってきた





天気は今ひとつだが眺めは最高





          下界は晴れているのだが。。。                   上を見ると深いガスがかかっている




 この辺りで休憩中の二人組みを追い越した。上を見上げると何人かの登山者が黒い点になっている。雪渓は次第に傾斜を増してきたが、つぼ足でも不安はない。落石が所々に目に付くようになった。一人のハイカーがこの落石に腰を下ろして休んでいる。足元を見ると何とスニーカー。流石にこの辺が限界で引き返すかどうか迷っているようだった。下山時にこのスニーカー君とすれ違うことは無かったので無謀なチャレンジはしなかったのだろう。この辺から勾配がさらに増してきたので当方も慎重を期してここでアイゼンを装着した。葱平を過ぎて、小雪渓と言われる辺りを登る。この辺りの傾斜がきつかった。上から降りてきた登山者が目の前でスリップ、彼はとっさにピッケルで滑落停止姿勢をとったが、すぐには止まらない。こちらも気をつけないと。





小雪渓、上に先行する登山者が点になって見える




 固い雪面にアイゼンの爪をたて逆ハの字で胸を突く斜面を一歩一歩慎重に登る。先を行く一人の登山者が視界に入って来たが、既に1400mの高度差で相当足にきている上に、シャリバテ状態で追いつくパワーが出ない。それでもようやく白馬岳頂上宿舎にたどり着いた。ここから山頂まで僅かであるが、ガス欠解消が先。コンビニのお握り3つが瞬時に胃のなかに姿を消す。ようやく落ち着いて上方を眺めると、白馬山荘があたかもチベットの寺院のような威厳を持ってガスのなかに見え隠れしている。




ガスに見え隠れする白馬山荘





       松沢貞逸(白馬山荘創設に貢献)のレリーフ              杓子岳方面を振り返るがガスのみ




 頂上宿舎から一頻り雪の急斜面を登ると稜線に出た。稜線上には雪がない。アイゼンを外すと何と軽やかに歩けることか。鉄下駄と呼んだ人もいたがうなづける。白馬山荘を過ぎると頂上はすぐそこである。1020分、40年ぶりに白馬岳の頂に立った。





白馬岳山頂






          下山しようとしたら天気に




雪に埋もれる白馬山荘




 ガスが時折切れると杓子岳方面が姿を現すこともあるが、期待していた黒部方面は残念ながら視界ゼロ。長居をしても仕方が無いので早々に下山にかかる。白馬荘近くで一人のテレマーカーとすれ違う。下山が楽ですねと挨拶するが、普通の登山靴を履いてきたので技術的にはターンがなかなか大変とのこと。この後も続々とスキーを背負ったテレマーカー達が登って来た。なかにはスキーを履いたままという人もいたが、いくら踵が上がっても楽ではなさそうだ。




スキー屋ー達





晴れ間がどんどん広がる





さらに晴れてくる





猿倉近くなるとこんなに晴れた。悔しい〜



小雪渓の急斜面ではどなたも、数歩進んでは小休止といった感じ。下山を開始してしばらくすると、あれよあれよという間に晴れ間が広がってきた。親譲りのせっかちで待つのが嫌いでいつも損をしている。結局、追い立てられるように歩いてしまう。後30分頂上でゆっくりしていればと悔しい思いをした。急斜面が少し緩んだところで尻セードで降りる。アイゼンが引っかからないよう両足を高く上げ、ピッケルでスピードをコントロールしながら滑り降りる。これを何回か繰り返すうちにあっと言う間に白馬尻まで降りてきてしまった。滑り降りたところは白くなっている。雪渓上の土汚れは尻雑巾がふき取ったというわけ。それにしてもスキーヤーが多い。一般の登山者は2割もいない。歩きながら来シーズンは山スキーにチャレンジしようかなどと年甲斐も無く考えている自分に気付く。樹林帯に入ってからは踏み抜きに気をつけ、益々晴れ渡った空を恨めしく見上げつつ1250分に猿倉に帰着した。帰路に見かけた露天風呂のおびなたの湯で汗を流す。さっぱりした後は後立山連峰の雄大な景色と新緑を楽しみながら148号線をゆっくり北上し、明日の目的地、雨飾山に向かった。




おびなたの湯


行動時間
                    6時間50
歩行時間                     6時間20
標準コースタイム        8時間15





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