槍ヶ岳  長野・岐阜県 3180m    百名山 

  
 

201081

 夜半に目を覚まし時刻をチェックする。ずいぶん寝たつもりなのに午後9時過ぎだ。おかしなことにまだ2時間しかたっていない。もうひと眠りして時計を見ると何とまた同じ時刻???。よく見れば時計の針は動いていない!別のガジェットで時刻をチェックすると午前3時だ。周囲のテントから話し声や物音がしている。早立ちのグループが食事の準備を始めているようだ。テントから這い出して空を見上げると昨日の曇天が嘘のように満天の星。最近はすっかり晴れ男が定着したらしい。湯を沸かしてラーメンで簡単な朝食を済ます。水は500mリットルのペットボトル3本を用意した。コースは沢沿いであるし途中に水場があるので1,5リットルでも困らないだろう。暗闇のなかヘッドランプを点けて歩きだした。しばらく槍沢沿いの平坦な道を行く。一ノ俣、二ノ俣を渡った頃から登山道らしくなってくる。陽が昇る前に槍沢ロッジに到着。ここまで下山するハイカー一名とすれ違っただけで静かなものである。ロッジでは出発の準備をしているハイカーが多数。一気に人口密度が増えてきた感じだ。それでもこの時点では日中、銀座を歩くような賑わいになるとは予想もできなかった。ここから槍沢のキャンプ場までは結構な距離がある。このキャンプ場でも皆さん出発準備で忙しそうだ。


槍沢のキャンプ場


先行する登山者に追いついた


次第にアルペン風景が広がってくる


 
槍沢を左に見ながらどんどん登ると喜作新道の水俣乗越への分岐につく。次第に高度が上がるにつれてどんどんアルペン風景が広がってきた。天気は上々、体調も悪くない。呼吸が乱れない程度に歩くスピードをセーブしているのに、槍沢ロッジを出発したと思しきハイカーに次から次に追いついてしまう。徹底的に荷物の軽量化を図っていることが奏功しているのだろうか。天狗原の分岐から道は勾配を増しジグザグにどんどん高度を上げていくようになる。所々雪渓をトラバースするが、春先の山と違ってどうということなし。続々と下山してくるハイカーの群れ。雪渓トラバース箇所で対岸にグループ登山の数十人が並んでいるのを見て思わず先にいかせてくださいと頼みこむ。かくも多数の登山者を見るのは昨年の甲斐駒ケ岳以来だろうか。


槍の穂先が見えてきた



雪渓を越えていく



槍ヶ岳が眼前に大きく聳えてきた


 
ヒュッテ大槍の分岐までノンストップで歩いてきたが、流石に少々燃料切れになってきた。最後のきつい登りに備えてここで一息入れコンビニの調理パンを頬張った。再び歩きだすが、空気が薄いこともあるのだろうか、息は切れるし次第に足が重くなる。山頂小屋からそのまま槍の穂先に取りつく。途中で勝手がわからず下山用の梯子を登ってしまい引き返すはめになったりもしたが、それでも出発から5時間で槍の頂上に立つことが出来た。


山頂小屋からもう一息



この高度感はすごい



槍ヶ岳頂上から北鎌尾根方面



狭い頂上に人がいっぱい



北鎌尾根を覗く



穂高連峰



皆必死で登り降り


 頂上は
10人も滞在すればすれ違えない程狭い。まさに絶頂という言葉が相応しい素晴らしい高度感である。ここからの360度の眺望は感動ものだ。残念ながら雲海に加えてガスが上がって来ているので遠望はきかない。それでも北アルプスのこの山域の名峰は指呼の距離にあって圧巻である。穂高の峰々はもとより近場の大天井岳、常念岳、先々週歩いた黒部五郎岳等々。恐竜の背骨の化石のような北鎌尾根が不気味に横たわっている。狭い頂上に続々と人が上がってくるので長居はしていられない。名残惜しいが下山することにしよう。70歳前後と思われる方が「槍とはお別れだ、もう来ることはないだろう」と言っていたシーンが自らにダブって妙に心に残った。感傷を振り切って再び梯子と鎖を伝って下りる。槍ヶ岳山荘の前にある分岐でこのまま同じコースを下山するか、それとも中岳方面へ寄り道するか考えた。予定よりも早く着いたので時間的には余裕があるし体力も持ちそうだ。


大喰岳から、槍がすごい



中岳山頂には中学生の団体さんがいっぱい



天狗原への下り、結構険しい



ニホンザルの群れ



突然雪渓が崩落、写真ではそう見えないが結構な迫力



 大喰岳、中岳から天狗原へのルートをとることに決定。しかし地図ではわずかな距離と思ったのが歩いてみると大違い。山を二つ越えるアップダウンは当然として鎖や梯子だらけの天狗原への痩せ尾根の下山が疲れた足には堪えた。それにしても先ほどまでの銀座状態とは打って変わって何と静かなコースであろうか。殆ど往き交う人もない。ということは動物の天国かも知れない。途中の氷河公園で雪渓を滑り降りてくる多数の黒点を目撃した。何事かと目を凝らして見ると何とニホンザルの群れ。雪渓上に立てられたコース表示のポールによじ登って遊んでいる奴もいる。ボス猿と思しき白い毛並みの大猿が何かに向かって大声で吠えて威嚇している。後続の登山者だったらちょっと怖い思いをしたかも知れない迫力だ。これがかの有名なアルパインモンキーなのだろうか。遠回りをしたおかげで思いもかけない光景を目撃することができた。

 それも天狗原分岐まで、再び銀座通りに逆戻りだ。格段に行きかう人が多くなった。「こんにちは」と挨拶しても応えが無いし道を譲っても有難うの一言もない人達が増えた。仲間内で話している言葉は中国語と韓国語らしい。日本の山は閉鎖的であってはならないし、
NZのようにトランピングコースに日本語表記があるのと同様に国際化することは至極当然のことだ。近隣諸国の台頭で製品輸出がますます厳しくなる日本にとっては観光資源を最大限有効に使うべきとも思う。しかし日本の山を歩く上でのマナー教育は必要ではないかというのは内なる声。下山する間ずっと観察していると日本人とそうでないかは区別できるようになった。中国人や韓国人ハイカーはウエアをばっちり決めているし、黒系が圧倒的に多いしパワフルに歩いている。日本人の場合、若い人はカラフルでタイツ系、中高年は私同様、ちょっとあか抜けない「ダサイ」服装なのですぐにわかる。長い下山路であったが、こんな気の紛らわし方もあった。

 ピストンするよりも
CT2時間半余計にかけたため、流石に最後はかなり足に疲れがきた。例によって頭にうかぶのはキンキンに冷えたビールの3文字。出発から11時間半要してマイホームのテントに帰着した。標準CTを積算すると14時間30分なので少々無理をし過ぎたかも知れない。明日の奥穂高が心配だ。ともかくビールで疲労回復、500mリットル缶を二つ空けて英気を養う。早めの夕食をとってまだ明るいうちからさっさと寝てしまった。

行動時間    11時間30分
歩行時間    10時間30分くらいか
標準CT     14時間30分

一日目   二日目    三日目     四日目
焼岳    槍ヶ岳    奥穂高岳   上高地へ下山
 
   Map  Track
 トップ  山歩き
inserted by FC2 system