奥穂高岳  長野・岐阜県 3190m    百名山 

  
201082

 午前3時に起床、テントの中で出発の準備を整える。朝食は昨日同様ラーメン、同じものを二日連続で食べるとなると少々鼻についてきた。エネルギー源と割り切って胃に押し込み、4時前にテントを後にした。昨日の槍ヶ岳は大喰岳、中岳のおまけをつけてしまったため、疲労が残るのではと心配していたが、早く眠りにつくことができたのでかなり回復したようだ。空を見上げれば一面の星、今日も天気は最高だ。しばらくはヘッドランプを頼りに歩く。フラットな道から次第に勾配がきつくなる頃、足元が明るくなってきたのでランプを消した。左手には屏風岩がそそり立っているが、まだ薄暗いので写真は無理だ。帰路の楽しみにしよう。


横尾から涸沢への道(下山時撮影)


 道はさらに傾斜を増して高度を稼ぐようになる。ぽつぽつと下山者とすれ違うが、今のところ昨日ほどの人口密度ではない。横尾谷から涸沢に入ると次第に稜線が見えてきた。正面は前穂高の北尾根辺りであろうか。次第に青空の下に穂高連峰の岩尾根がせり上がってきた。写真で何度も見た素晴らしい眺めだ。テント場にはたくさんのカラフルなテントの花が咲いている。ごろごろとした石だらけのテント場なので、居住性はどうなのだろうと考えてしまう。



涸沢のキャンプ地


涸沢小屋



パノラマコースの雪渓を登る

 歩き易そうなところを拾ってテントの間をすり抜け、正面の雪渓に取りつく。このルートはパノラマコースと言うらしい。中学生の集団や家族連れが雪渓を登っているのが見える。そろそろラッシュに巻き込まれそうだ。彼らに追いつくが、その先にも多くのハイカーがぞろぞろと列をなしている。ちょうど涸沢から一斉に登り始めた時間に重なってしまったらしい。雪渓は横切る形でルートを示すポールが立っていたが、ほぼ直登してショートカットした。ザイテングラードの取りつき点には一息を入れている多くのハイカーがたむろしている。



奥穂高岳が次第に近くなってきた


ザイテングラードへの取りつき点


ザイテングラードから北穂高岳方面


 ザイテングラードという言葉はドイツ語から来ているとのこと。上高地を海外に紹介したのは英国人というが、なぜドイツ語なのだろう。興味深いことに同じ穂高にある急峻な岩峰はジャンダルムというフランス語で呼ばれている。いずれにしても横文字の命名がすっかり景観に融けこんで親しまれているのは面白い。それにしても槍穂高は様々な世代に人気がある山だ。他の地味な百名山では下手をすると出会う人は私と同世代か、さらに上のことが多いが、ここには若人もたくさんいる。それにしても穂高小屋から続々と下ってくる人達との鎖やはしごのある険しい岩峰でのすれ違いはたいへんだ。時間がかかることこの上ない。



穂高小屋から奥穂高岳を見上げる


ジャンダルム(頂きに人がいる)


奥穂高岳頂上


槍ヶ岳方面を望む


 人の多さと背中に照りつける日差しに耐えてようやく穂高小屋に到着。小休止した後すぐに頂上を目指した。この山も槍同様、岩の世界、いきなり鎖やはしごの連続となる。しかしこれは取りつきだけで上へ行くと傾斜は緩み歩きやすい。ジャンダルムが見えてくると頂上はもう一息。奥穂高岳山頂には850分に到着。横尾のテント場からちょうど5時間である。頂上には男女の中高年の一団がいて騒いでいる。男性はジャンダルムを往復してきたらしい。どこから登ったか、いかに見晴らしが素晴らしかったかを声高にしゃべっている。こうした解説が無くとも頂上からの展望する西穂高への荒々しい稜線とジャンダルムを含む峰々は、これぞ日本のアルプスと呼べるものだ。

 登りの道すがら、余裕があれば前穂高へ吊尾根を往復しようかと考えていたが、気力も体力も使い果たしてしまった。昨日も大喰岳への寄り道で消耗し、今日さらに
3時間超の寄り道をすることは流石にしんどい。山は逃げないし今回は百名山の奥穂高岳をクリアしただけでよしとしよう。下山を始めると人が次から次へと登ってくるのですぐに渋滞だ。待ち時間の多いこと。途中の雪渓の下から水が湧きだしていた。稜線上には穂高岳山荘があるので衛生的にどうかと思ったが、照りつける日差しに負けてぐびぐびと飲んでしまった。これが冷たくて旨いのなんの。下りコースはパノラマを止めて涸沢小屋へと向かう。涸沢小屋では女の子がベランダから懸垂下降の練習をしていた。こうした光景はいかにも岩登りのメッカらしい。



屏風岩がすごい迫力

 涸沢の素晴らしいパノラマビューに別れを告げて横尾へと下る。上高地に早朝に到着した人だろうか。ともかく人また人である。暑さと3日間の蓄積した疲労もあるのだろう、足取りが重い。横尾への長い道のりをだらだらと下り続ける。頭のなかは快楽を求める葛藤が、渦巻いている。横尾でもう一泊するのであれば、すぐにビールにありつける。もし一気に下山すれば風呂とまともな飯にありつけるが、ビールはしばらくお預けだ。脳内会議の結果、この判断は午後1時までに横尾に帰着できるか否かで決めることにした。結果は即ビール派が勝利、横尾到着は午後1時半になってしまった。すぐに自販機へ直行し、アサヒビール750ccを買い求め、プルトップを一気に引きぬいた。

 落ち着いて周囲を眺めると、周囲の幾つかのテントは撤収にかかっている。すっかり閑散としたテント場の日陰で、ぼんやりと過ごす。午後
3時を過ぎる頃から続々とキャンパーが到着し出した。新旧の住民入れ替わりだ。中学生の一団がテントを設営しだしたし、お隣には鼾の大きそうな中年のメタボ氏。今晩はうるさくなりそうだ。案の定、子供たちのはしゃぐ声とお隣の鼾で一晩中騒がしかった。翌朝は暗い内からテントをたたんで上高地へ下山。朝一番、640分の臨時バスで沢渡へと向かった。

行動時間    9時間35分
歩行時間    9時間


一日目   二日目    三日目     四日目
焼岳    槍ヶ岳    奥穂高岳   上高地へ下山
 
   Map  Track
 トップ  山歩き
inserted by FC2 system