トムラウシ  北海道 2141m    百名山 
 


大雪山(旭岳)より続く

2011727

 北海道の朝は早い。午前3時半、夜明けとともに目が覚めた。完全にフラットとは言い難いレンタカー車内の仮設ベッドだったが、旭川のビジネスホテルより余程快適に眠ることができた。外を見渡すと車の数がどんどん増えているし、ツアーの団体さんは準備体操の真っ最中だ。隣の名古屋ナンバーの車からも年配のご夫妻が出てきて登山靴を履いている。周囲の慌ただしさにつられて、私もコンビニのお稲荷さんをパクつきながら出発の用意を始めた。日帰りなのでパッキングも簡単だ。起床から30分、4時過ぎに車を後にした。

 しばらくは熊笹の中の、ゆるやかだが延々と続く道を行く。昨日の旭岳とは違い、粘土質の道で所々にぬかるみがある。夜中に一度トイレに立った時は一面の星空で、快晴を確信したが、どうやら裏切られたようだ。霞がかかったようで今一つぱっとしない天気だ。昨日の旭岳で高所順応ができたのか、熟睡できたせいか、体調は申し分ない。先行していたハイカーをどんどん追い越す。早出の
20名の団体さんを抜くともう先には誰もいないようだ。カムイ天上分岐から笹が刈り払われた尾根筋の道へと出た。ここから左に見えているのは美瑛岳や十勝岳へと続く稜線だろうか。


         このような道が延々と続く                        トムラウシ8.5kmにはちょっと動揺



          左手の山はコスヌマニプリ?                    右手の山は前トムラウシ山


 しばらく行くとコマドリ沢へ向けてどんどんと下るようになる。およそ
100mの大下り。帰りの登り返しがきつそうだ。分岐の気持ちよさそうなせせらぎを渡ると雪渓が出てきた。これがネットでお馴染みのコマドリ沢の雪渓だ。雪解けが進んであちこち陥没しているので、安全そうな岸の際を歩く。雪渓が終わると前トム平まで大きな石が累々と積み重なる斜面を登るようになる。ごつごつした石だらけの道はまるで沢歩きのようだ。


            コマドリ沢へと下る                            コマドリ沢雪渓



          雪渓から離れる                    大きな石だらけの道 


トムラウシが顔を覗かせる


 やがて稜線に出ると待望のトムラウシご本尊が見えてきた。ここからいったん下ると見事な庭園の散策になる。石庭とお花畑の連続だ。ここはトムラウシ公園というらしい。昨年の大量遭難では、この辺りでも亡くなった方がいたらしいが、平和そのものの様子からはとてもそのような悲劇は想像することができない。ところが、無神経にもこのような天国の地にテントを張っているバカがいたのだ。流石にこれは見過ごせないので注意しようとしたら、折よく下ってきたおばさんが先に一喝。このバカはその後も下山途中に狭い岩場に荷物を広げて通路を塞いでいたが、分別あって然るべき団塊の世代と思しき風体にも関わらず一体どういう神経をしているのだろう。


        



 天気は明らかに下り坂で、ガスが次第に濃厚になってきた。縦走路との分岐へ出た後は最後の登りとなるが、この頃には山頂はすっかりガスに隠れてしまった。トムラウシ山頂には
8時少し前に着いた。登山口からノンストップで3時間50分、意外にすんなり着いてしまったので拍子抜けだ。山頂には二人いたが、すぐにロックガーデン方面へと向かっていったので、独り占めの頂となる。ガスで視界はかなり限定されているものの、大雪縦走路方面は辛うじて見えている。


            山頂までもう一息                            北海道百名山完登!



北沼方面


 北海道百名山9座がこれで全てクリアできたので何とも感慨深い。20097月の利尻岳からスタートしてちょうど2年目。これまで5回に及ぶ北海道遠征で随分と費用と時間がかかったが、得られた達成感と素晴らしいこの地の山岳美はそうしたコストに十分見合うものだと思う。ともあれ、そうした感傷は一時だけ、ガスが見る見る視界を閉ざしてしまったので、昼食替わりの菓子パンを食べて後はすぐに下山することにする。

 思いの他、早く目的を達成したので、帰路は余裕なのだ。お花畑にカメラを向けつつ、怪我をしないように慎重にゆっくりと下る。人気の山らしく、登ってくるハイカー多数とすれ違う。展望は無くてもバテた旦那を叱咤激励しているタフな奥さんもいたりして飽きることがない。出会ったのは人ばかりではない。ナキウサギは鳴き声だけと諦めていたが、目の前にいきなり飛び出てきて走り去っていったのには驚いた。体長
10cmから15cmほどでネズミに似た体躯、慌ててカメラを向けたが、あっという間に視界から消え去っていた。


コバイケイソウ群生


 コマドリ沢の雪渓を下り、今度は沢の流れで一休みし登り返しに備えた。次第に蒸し暑くなって、それほどではない運動量でも止めども無く汗が流れる。再び笹原に突入したところで昨年幌尻岳の額平川の渡渉で出合ったガイド氏に再会した。数名のオバチャン連中を連れている。彼はヒマラヤでも実績があり、マスコミにも登場している著名ガイドだ。

 笹原をどんどん下って登山口には
12時過ぎに帰着した。ちょうど8時間でトムラウシを完遂できた。汗まみれの衣類を着替えて、ハンドルを握る。今日の宿、糠平温泉へ向けて車を出すと同時に雨が降り出した。


ニペソツ山へと続く

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