ニペソツ山  北海道 2013m     二百名山
 


トムラウシより続く

2011728

 3時半、まだ暗いうちに宿を出る。タヌキだろうか、道路を横切る動物の目が赤く光っている。273号線を層雲峡方面へと向う。登山口の杉沢へは三股の橋の手前を左折するが、ここにはニペソツ山登山口とわかりやすく明示してあるので迷うことはない。ダート道を嫌になるほど走らされて、ようやく登山口に着いた。先客が一名。福島県会津市から来られた方だ。私の到着と入れ違いに熊避けのホイッスルを力強く吹き鳴らしながら出発していった。

 
425分、身支度を整えて福島氏のあとを追う。沢を渡ってすぐに急斜面を登る。尾根に取り付いた後は、緩やかな登りだ。大雪山、トムラウシを連荘して、さすがに足に疲労が残っているようだ。ゆっくりと歩を進める。しばらく鬱蒼とした針葉樹のなかを行く。木々の間から前天狗の姿が望めるようになった頃、福島氏に追いついたので、先行させてもらった。


         登山口からすぐの十六の沢を渡る                     うっそうとした針葉樹帯


 小天狗の岩場からは展望が一気に広がった。残念なことに、どこからか湧き出てきたガスが見る見る視界を遮ってしまった。どうも昨日のトムラウシと同じパターンのようで天気が今ひとつ冴えない。天狗のコルに向けて下りだすと背丈ほどの笹が両側から登山道に迫って生い茂り、足元が見えないほどだ。始末の悪いことに、これが朝露をたっぷり葉に乗せているのだ。最初はストックで水滴を叩き落としたりしていたが、時間もかかるしきりがない。覚悟を決めて笹の生い茂る中に飛び込んだ。
5分と経たないうちに全身ずぶ濡れとなった。スパッツをしているにも関わらず、靴の中にも浸水し下着もびしょ濡れで気色が悪い。雨具をつけるべきと後悔したが手遅れだ。


          登山道の両側から迫る草木                           小天狗の岩場



前天狗、この後すぐにガスに隠れた



           生い茂る笹で踏み跡が見えない                     ぐっしょりのズボン


 植生は次第に岳樺に変わり、そのうちはい松が出てきた。道は前天狗岳を巻いて行く。濃いガスで展望が全く無いのが辛い。幌加温泉からのコースと合流するピークにはポツンとトイレブースが建っていた。ここから一旦下って登り返すことになる。一息入れているとガスが少し晴れてニペソツの右半部が姿を現した。この調子なら全貌が見えるかと期待して暫く待ったが、また東側から押し寄せるガスの中に隠れてしまった。


               岳樺がでてきた                             そしてはい松帯へ



天狗岳の背後に見えるニペソツ山


 痩せた稜線上に付けられた道をどんどん進んでいくと、時折ガスの切れ目から二ぺソツがうっすらと姿を現す。しかしすぐに隠れてしまうのが何とももどかしい。森林限界は
1800m辺りだと思うが、すっきりした稜線漫歩にはほど遠い。笹の代わりに今度ははい松が強力な抵抗勢力になった。はい松の通路を押し通ろうとすると、激しく抵抗され、背負ったザックすら剥がされる始末。加えて激しいアップダウン。天狗岳を越えると150mほどのうんざりする大下りだ。降り切ったところからいよいよ最後の登りとなる。


           天狗岳への痩せた稜線                        天狗岳まであとわずか


 とんがった頂上のわりにはゆるい傾斜の道を上って行くとやっと絶頂だ。単純標高差
1000m程度にも関わらず、4時間10分を要してしまった。ニペソツ山は周囲に高い山が無いのでまさに絶頂という表現が相応しい。それにしても天気が冴えない。菓子パンで栄養補給したり、濡れたソックスを絞ったりしながらガスの切れるのを待つ。しばらく我慢したが、結局晴れ間が出る気配が無い。仕方ない、下山することにしよう。入れ替わりに登頂してきた福島氏に狭い頂を譲って下山を開始した。


        頂上が見えてきた                    ニペソツ山山頂

 天狗岳への登り返しで単独のハイカー
.二人とすれ違う。今日はこのままニペソツの姿は拝めないのかと不運を嘆いていたが、山の神様は見捨てなかった。前天狗まで戻ったところで振り返ると奇跡が。ガスの薄いベールがかかっているものの、やっと全体像を眺めることができた。これで思い残すことはない。ここで幌加温泉から登ってきたハイカーと出合った。はい松漕ぎ、笹漕ぎ、道迷いが数え切れないほどと大変な苦労だったらしい。十六の沢コース程度で悲鳴を上げていたのが恥ずかしい。


            東壁に広がるお花畑                           うんざりする登り返し



やっと見えたピーク


 ここからは振り返ることも無く一気に下った。あれほど濡れていた笹も今は乾いていて濡れる心配が無い。登山口には
1240分に帰着した。着替えもせずそのまますぐにハンドルを握る。翌日に予定している石狩岳への林道が工事で通行禁止のため、う回路に回る必要がある。一旦273号線に出てから、層雲峡方面に向けて車を走らせ、う回路への入り口を確認した後、糠平温泉の宿へと向かった。

行動時間  8時間15分
歩行時間  7時間30分



石狩岳へと続く

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