前日より 2017年8月11日(金) 今日は聖平まで標準CTで15時間弱とかなりの長丁場。午前3時にスタートするつもりで2時30分に起床。身支度を済ませ、小屋の戸を開けると、外は何と雨。それもザーザーと本降りの様相だ。暫く様子を見るが、非情にも雨脚は強くなるばかり。すぐには止みそうにないので、一旦寝床に引き返し仮眠をとった。 暫くして、雨脚も収まってきた頃合いを見計らい、小屋を後にした。時刻は4時25分。昨日に引き続き今日も出遅れてしまった。百高山ピークハントのメインイベントが控えている日なのに、文字通り水を差されたことになる。 そぼ降る小雨の下、歩きながら代案を色々シュミレーションしてみた。このまま雨が降り続くようなら百高山は次の機会までお預け。せっかくなので赤石岳には登頂して引き返す。 雨が止むようなら、取敢えずPoint of returnとなる百間洞山の家まで行って様子見。天候次第でGo/No go判定を行う。Goの場合、タイムリミットを正午と定め、それ以前に兎岳を越えることができたら聖平へ強行する。もし正午を回っても兎岳に到達できない場合は、兎岳の登頂を済ませ、所要時間が聖平へ向かう場合の半分で済む百間洞山の家に引き返す等々、、、と頭の中で今日の行動シナリオを取りまとめた。
ラクダの背から稜線直下の沢の源頭部をトラバースしていく。ここはお花畑天国だ。雨に濡れた花々の露が輝いている。それはそれで美しいが、晴れていればさぞかし見事だろう。 幸い夜明けとともに雨は上がってくれたが、流石に3000mを越えると風が冷たく手が凍えそうだ。7時5分に赤石岳山頂に到着。濃いガスで視界ゼロの山頂は早々に辞して直下の避難小屋へ。髭面のダンディーなご主人と愛想のいい奥さんが夏季限定で管理しており、とても居心地が良さそうだだった。当初の予定通りであれば、ここに宿泊できたのに残念だ。
ストーブの焚かれた暖かい小屋の中でこれからのハードワークに備えカロリーを補給しておく。管理人ご夫妻に別れを告げ、予定のシナリオに沿って次のマイルストーン、百間洞へと向かうことにした。 赤石岳からは、ともかく急坂の下山が続く。時折百閒洞からの登山者が霧の中から姿を現すが、皆一様に急坂に喘いでいる。この激下りが一段落すると馬の背で、さらにその先は百間平。植生保護のため張られたロープ内を進む。この辺り美しい公園にでも迷い込んだようだ。天候が悪い時の常で雷鳥の姿を垣間見ることもできた。
百間平から同山の家までは再び容赦のない下り坂が始まる。森林限界を越え樹林帯に入ると途端に気温と湿度が上がったように感じられる。それに突然湧いてきたかのように虫の大群が纏わりついて煩い。 眼下に百間洞山の家が望めるようになると、大沢岳への分岐が出てきた。大沢岳はスルーする人が多いのか、このコースの踏み跡は明らかに薄く頼りない。迷わず大沢岳へと向かい、再び森林限界を越えると容赦の無い激登りとなった。今回の行程で一番勾配がきつかったところだ。
標高差300mの辛い登りを終えると、本日初の百高山、大沢岳、標高2819mの頂が待っていた。まだ先は長い。山頂には証拠写真を撮るだけのショートステイですぐ次のピークへと向かう。 シラビソ峠への分岐から中盛丸山へ上る辺りで、束の間ながらガスが少し晴れてくれた。一瞬でも青空を望めたので、モチベーションは大いにアップ。100mの標高差を難なく登り切って2番目の百高山、2807mの中盛丸山の頂に立った。
足の疲れも相俟って、ここから兎岳までが意外に長丁場だった。小兎岳を越え、もうひと頑張りで3番目の百高山、2818mの兎岳のピークハント達成に漕ぎつけることができた。 この時点で時刻は12時30分。正午前に通過することは叶わなかった。ここから聖平まで標準CTで4時間。一方、百間洞へは同2時間40分。聖平まで頑張ってみようかという思いも捨てきれなかったが、やはり一度決めたシナリオ通り、後者の道を選ぶことにした。百間洞山の家に着いた後、午後4時過ぎから雨模様になったので、結果的にもこの判断は正しかったのだと思う。 しかし一度歩いた道とは言え、再び小兎岳、中盛丸山と二つのピークを登り返すのは楽ではなかった。大沢岳との鞍部からは百間洞山の家まで延々とトラバース。
3時15分に本日の宿にチェックインした。早速与えられたねぐらで着替えをしていると、ポツポツと雨が降り出し、やがて土砂降りとなった。タッチの差で濡れ鼠にならずに済んだことになる。思わず胸をなでおろした。 行動時間 11時間 翌日へ |