ニュージーランド旅行記(2010年3月)       
 

313

 次女の大学卒業に伴い、二人の子供が社会人として巣立つことになりました。これからは一家揃っての家族旅行は難しくなるでしょうから、次女の卒業旅行を兼ねて家族全員で海外旅行をすることにしました。選んだ目的地は最近ブームになっているニュージーランド(以下NZ)です。1週間しか皆の都合が合わないので、風光明媚な南島南部を中心にした小旅行を計画しました。出来るだけ安上がりにするため、マイレージをフル活用しましたが、特典航空券の予約は中々厳しくて結局確保できたのは、羽田から関空経由オークランド行きでした。関空からの夜行便で早朝オークランドに到着、ここで国内線に乗り換えてクイーンズランドへ向かいます。初秋に差し掛かったせいもあるのかも知れませんが、機上から見るNZの景色は以外に緑が少なくて荒涼とした感じです。映画のロードオブザリングの撮影現場になったロケ地が点在しているというのも納得できる景色でした。

 クイーンズタウンの空港で荷物を引き取りすぐにレンタカー屋のカウンターへ向かいました。ネットで予約していた「
Europcar」にはイギリス出身の女性が一人でお客対応をしていました。係りがいないとのことでしばらく待たされた後、マオリ族の女性が戻ってきて車に案内してくれました。車はカローラ、以前乗っていたので慣れているし、何よりも右ハンドルなので運転は楽チンです。荷物を積み4人が乗り込むと、ちょっと窮屈でしたが、ロングドライブは無いので大丈夫でしょう。空港を出ると一路南へと向かいます。道路は意外に狭く起伏がある上、曲がりくねっています。ワカティプ湖沿いの6号線を南下していきますが、制限速度を守る私達の車を地元の車がびゅんびゅん追い抜いていきます。地元の皆さん、結構荒い運転なので身構えてしまいます。湖の景観を楽しみながらキングストンに立ち寄ってみました。なかなかきれいな住宅地(別荘地?)ですが、ともかく人気がなくて閑散としています。



       ワカティプ湖畔の荒涼とした景色



 
さらに南下を続けて94号線を今度は北西に進み、ティアナウの町に入りました。ネットで予約していたモーテルを探して町をしばらくうろうろしてようやく探し当てました。宿泊先は、Fiordland Hotel & Motelというところ。ネットで見た通りの概観で、まずまずで一安心。しかし予約した部屋はここにはないとのことで別のアドレスを告げられました。そこにあったモーテルはいかにも安宿、かなり簡素なつくりでした。それでもスペースだけはたっぷりで、我々夫婦と子供達のアパートが別々に二棟あります。家族の「え〜。何コレ?」の声に安かったのだから文句なしと口を封じてなかに入ります。一応設備はしっかりしているし、清潔なので一安心。家内も使いやすそうなキッチンを見てご機嫌を直してくれました。この日は近くのスーパーに行って買出しをしました。物価は決して安い国ではありませんが、食品類はボリュームたっぷり、パンの種類も豊富でした。晩御飯は家内の手料理に、地元のワインを楽しみました。一日の疲れで私はいつの間にかバタンキュー、速攻で爆睡モードに入ってしまいました。翌朝子供達を起こしに隣の部屋に行くと家内がえらいお冠です。夜中に用事があって子供達のアパートに行ったら、自分のアパートのドアがロックして締め出されてしまったそう。いくら叫んでも私が起きてこないので諦めて子供のアパートで寝たこと云々。ま、旅には色々行き違いがあります。



          真昼間からビールで乾杯                           ティアナウ市内にて


 今日はミルフォードサウンドの船旅に向かいます。ティアナウからは120Kmほど。町を出てからしばらくはテ・アナウ湖に沿って大自然のなかを走ります。次第に雪を頂いた山々が雲間に見えてくると素晴らしい景観に一同歓声を上げました。大型の観光バスも展望スポットで停まって観光客がぞろぞろ降りてきています。途中でショートコースのトランピングが出来る登山口をチェックしておきました。時間があれば寄る計画です。フィヨードランド国立公園では早速クルーズの申し込みをしました。世界中の観光地同様、ここでも押し売りカメラが横行しています。乗船時に撮影して帰りがけに買わせようという算段です。風が冷たいので船内のベンチに座りましたが、欧米人は寒さへの耐性が違うのでしょうか、殆どの人が吹きさらしのデッキに上がっていきました。出向して間もなくイルカがいるとのアナウンスがありました。舳先辺りに子供連れのイルカが伴走しています。

 
サウンドというのは入り江のことで海と繋がっていますから、船はどんどん外海へ向けて進んでいきます。途中滝やらアザラシを見学したりしますが、山好きな私はどうしても、ミルフォードサウンドの周囲は氷河を頂いたアルペン風の雄大な山々に目がいってしまいます。船は一旦外海に出た後、Uターンして再び入り江のなかを引き返します。およそ3時間の船旅を終えて再び桟橋に戻ってきました。このままティアナウへ戻るには時間が早すぎるので往路でチェックした登山口からトランピング(トレッキングのこと)をすることにしました。トランピングトラックはよく整備されていて驚いたことに、日本語の案内まであります。小一時間ほど尾根道を歩いて素晴らしい景色を堪能しました。ほんのさわりだけのトランピングでしたが、登山をしない家族もこの小トランピングを気に入ってくれたようです。この日は昨日同様、モーテル内で自炊しNZワインを堪能して昨晩に引き続いて前後不覚となってしまいました。


ミルフォードサウンドへの途中で見かけた風景



           道路に迫る大岸壁                          頭上には氷河が迫る



        ミルフォードサウンドは絵葉書の世界                         遊覧船上にて



            いるかの出迎え                         オットセイがいるのだが分かりにくい



           外洋がもうじき                              いるかの見送りが続く



絵葉書の世界



高緯度なので低山でもこれだけの威厳



      乗船したのは青い船             ティアナウへの帰路


山ガール達?




何度ためいきをついたことか。。。



315

  2日連泊したモーテルをチェックアウトして今日はクイーンズタウンへ向かいます。その前にティアナウ湖名物の土蛍を見学することにしました。昨日と打って変わって雨模様の天気のなか、高速船で対岸にある鍾乳洞へと向かいました。ここでいくつかのグループに分かれてボートに乗船。いよいよ鍾乳洞のなかを静かに漕ぎ出します。真っ暗闇の中で点々と幻想的な光が見えます。土蛍が群生しているところは、まるで夜空の銀河のようです。光の様子はロマンチックですらあり、おどろおどろしいミミズのような虫が発光しているとはとても思えません。説明員が、ボートに乗る前に一通り説明してくれましたが、良く観るとさっきの高速船の船長さんがこの説明員をやっていました。人口の少ないこの国ではマルチタレントが当たり前のようです。高速船で帰途につく頃にはすっかり雨模様になってしまいました。

 下船してから再びハンドルを握りますが、この日は出たとこ勝負、寝場所はオープンにしていましたので、これからの成り行き次第です。クイーンズタウン市内はバイパスしてアロータウンを散策することにしました。もともと金鉱のあったところで寂れた町を想像していましたが、小奇麗な町でこのメインスリート沿いを散策しながら買い物をしました。家内には日本人の女性店員のいる店でメリノウールのウエアを買いました。(これは汗をかいても暖かい優れもので後日登山に重宝しました)博物館には開拓時代を再現してあって蝋人形が置かれていました。家内が悲鳴を上げたので何事かと駆けつけると、トイレに人(蝋人形)が入っていて「ただいま使用中」みたいな録音が流れたのだとわかって笑ってしまいました。


          鍾乳洞へ向かう高速船                           鍾乳洞桟橋にて



             アロータウンにて



              蝋人形館



 
さてこの日の宿をどうするかですが、一度は体験したかったB&Bに予約なしでトライすることにしました。クイーンズタウンへの戻り道で見かけたWillowbrookというB&Bが素晴らしく絵になっていましたので、ここに飛び込んでみました。予約なしでもOKとのことでしたのでここに即決しました。もともと田舎の個人の住宅を間貸しするよう改装したものですが、クラシックな造りに利便性も備えてとても快適でした。夕食はアロータウンのゴールドラッシュ時大を模したレストランでラム料理を注文、まずまずでした。



              B&B Willowbrook



             B&Bのオヤジさん                             リッチな朝食



316

  B&Bでの朝食は一緒に旅行しているイギリス人男性二人との相席でした。NZ人のオーナーとは同じ英語圏同士で文化も共有していますから、我々はとても彼らの会話のペースに付いていけません。それでも適当に話を合わせて肩の凝る朝食を終えました。それにしても一人はしぐさ、話し方が明らかにゲイ。中々得がたい経験でした。B&Bをチェックアウトした後は、素晴らしい景色のなかのドライブです。クイーンズタウン市内中心部にあるワカティプ湖の桟橋で1912年生の古い蒸気船(TSS Earnslaw)のツアーを申し込みました。出船まで時間があったので皆で繁華街をウインドショッピングしました。お土産グッズはどれもこれも似たりよったりであまり興味がわきません。

 出船直前にサウンドイッチを買い込んで船に乗り込みました。船の内部は機関室がよく見えるようになっていて真っ赤な釜のなかに石炭をくべている様子がよくわかります。蒸気機関車もそうですが、ビンテージなモノほど力強い機械らしさを感じさせられるので不思議です。この船を内陸の湖まで運び込むのがいかに大変だったかなど説明していました。

 小一時間ほどで湖の対岸にある
Walter Peak High Country Farmという牧場に着きました。ここにはその昔は牧場主のものであったろう絵になる建物が建っています。この中でティーを楽しんだ後は、お待ちかねのアトラクションです。牧羊犬による羊たちの誘導ショーに続いて毛刈りのデモです。丸々した羊があれよあれよという間に丸裸にされてしまいました。それにしてもこれら一連のショーをオジサン一人がマルチタレントでてきぱきと捌いているのは見事でした。昨日の高速船の船長さんもそうでしたが、この国では総じて少人数のスタッフが何でもこなしているのが非常に印象的でした。帰りの船のなかではおばあちゃんが登場しピアノの伴奏によるカラオケになりました。このショーもその一つですが、観光客を楽しませるため、もてる資産や人を有効に活用していることにいたく感銘を受けました。日本も観光立国を目指すそうですが、NZから学ぶ点は沢山あるのではないかと思います


          桟橋にて(赤い煙突の蒸気船に乗船)



            農場の邸宅でティー



牧羊犬のショー



               Before                               After さっぱり〜



 
船着場から今日の宿のモーテルへと向かいます。ネットで予約していたのは、クイーンズタウン空港の近くにある湖畔のMantra Marina Queenstownというモーテルでした。外観はあまりぱっとしないのですが、内部はとてもモダンで部屋も大きく特にキッチン設備が抜群に整っていて家内は小躍りして喜びました。この日はキューイを見に行くことにしていましたが、動物園が閉園後で断念、近くのケーブルカーに乗ろうとしたらものすごい団体さんの行列でこれまた諦めてということで、その分を豪華なディナーで埋め合わせることにしました。早速ダウンタウンのスーパーで買出し。リッチな夕食を楽しんでクイーンズタウン最後の夜を終えました。


            モーテルで豪華なディナー




317

 今日はフライト予約の都合で長女が一足早くオークランドへ向かいます。彼女を空港に見送った後、モーテルをチェックアウトしました。ゴミは分別して宿泊者が捨てるシステムでともかく省力化が徹底しています。これも少ない人口で何事もやりくりしなければいけない背景があるからなのでしょうか。昨日入園出来なかった動物園(KiwiBirdlife Park)でキューイを見ました。夜行性の鳥なので、正確に言うと真っ暗闇のなかでおぼろげに眺めただけと言った感じです。この公園を後にしてケーブルカーでボブズヒルの展望台へ登りました。あいにくの天気であまり眺めはよくありません。これが晴天であればさぞかし素晴らしいパノラマが楽しめたのでしょうが。岡の頂上にはコンクリートのコースを滑り降りるリュージュの遊び場が作られていました。若者達がきそって遊んでいます。物は試しなので次女と一緒に乗ってみました。ヘルメットを被って勇ましく坂を下りますが、実際にはそれほどスピードも出ないのでちょっと物足りませんでした。隣に上級者用のコースもありましたが、やめておきます。フライトまで時間があったのでギブソンハイウエイにあるバンジージャンプで有名な橋に向かいました。ここでインド人のおっさんと若い女性のジャンプを見学しました。飛び降りた後はまた引き上げるのかと思っていましたが、下で待ち構えていたボートに収容されていました。私もチャレンジしたかったのですが、残念ながら時間切れでまたの機会となりました。


          前準備が結構たいへん                        女性が飛び降りたところ



 
クイーンズタウン空港からひと飛びオークランドです。森と湖の世界から、いきなり大都会の喧騒でちょっと戸惑いました。インド出身のタクシーで市中心部のホテルへと向かいます。着いたホテルの部屋は昨日泊まったモーテルのおよそ10分の1、ものすごい落差を感じました。一足先にオークランド入りしていた長女がちゃんとホテルに来れるか心配していましたが、約束の時間にショーアップしたので一安心。この晩はフェリーターミナル近くの日本レストランに行って久しぶりの和食を楽しみました。



318

 今日は一日オークランドの市内観光です。大都会と言っても知れていますから出来るだけ歩いて回ることにしました。私は朝早く一人で近場を一巡りしてきました。オークランド大学が近くにあったせいか、或いはちょうど登校時間に当たったせいか、ともかく学生が多いこと、その多くがアジア系であることが驚きでした。白人以外はマオリ族しかいないのかと思っていましたが、とんでもない誤解でした。朝食後は家族と一緒に散策しました。目的地は博物館です。この中でマオリダンスショーを観ました。極めつけは例の目を大きく見開いて舌を突き出すハカです。敵を威嚇する行為らしいのですが、笑われちゃったらどうするのでしょう。その後、マオリの若者の案内で博物館内を回ります。アメリカインディアンとは異なり、マオリには平和の民といったイメージを漠然と抱いていましたが、昔は相当暴れまわっていたようです。展示されているものは戦闘に纏わるものばかり、木舟は戦士を乗せる戦闘艦だし、大型のしゃもじは敵の頭をかちわる武器、細長いシャベルは敵のハラワタを掻き出す道具とか。博物館の後はマーメル通りをぶらぶらしました。途中でロシアレストランでボルシチを注文、これがとっても美味でした。この後は対岸のノースヘッドへフェリーで渡って観光。イチジクの巨木が印象的でしたが、その他にはあまり見るべきものは無かったというのが正直な感想です。この日は最後なので巨泉の店などでお土産品を買いあさり、仕上げは奮発してフェリーターミナルにあるレストランでシーフードを楽しみました。



            マオリの踊り                                



           ノースヘッドへ向かう                           巨大なイチジクの木



319

 朝の直行便で成田へ向かいます。およそ12時間のフライトでタイムトンネルを抜けて現実世界へ戻りました。本当にあっという間の1週間でした。行ってみて初めてわかりましたが、今回は本当にNZの代表的な観光スポット、それも極一部をさっと撫でただけでした。NZを楽しむポイントは何と言っても「自然」。時間に余裕を持ってトランピングを楽しむのが、一番の過ごし方ではないかと思いました。この次は是非マウントクックにも行ってみたいし、再訪を秘かに誓いました。

 
  Home Top   Menu
inserted by FC2 system