アサヨ峰  2799m 山梨県      三百名山
 

20158月22日(土)

 この夏は南アルプスの日本百高山巡りに傾注している。これまで赤石山脈を西から広河内岳、大籠岳、笹山、そして烏帽子岳、小河内岳の
5座に登頂したので、今回は北からアプローチすることにした。目標は日本65番目の高山であり、かつ日本300名山に選ばれし山梨県の名峰、アサヨ峰。本州の山名でカタカナは珍しいが、YAMAKEIに依れば、その昔朝日峰と称していたものが、いつの間にか「日」の第一画が落ちてヨになったのだそうな。

 いつものように深夜に自宅を発って早朝
4時過ぎに芦安に到着。始発バスが515分発なので十分余裕ありと踏んでいたが着いてみればとんだ見込み違い。バス発着場最寄の駐車場は満車で入れず、遠い高台に誘導される有様。急いで市営バスの切符売り場に向かうと既に大勢の登山者が長蛇の列をなしていた。

 それでも幸い積み残しや立ち席の憂き目に遭うこともなく、何とか臨時増発
4台目のバスに乗り込むことができた。多くの人でごった返す広河原でバスを乗り継ぎ北沢峠へと向かう。次々に到着するバスから降り立つ登山者で北沢峠も大賑わいだ。


                久々の北沢峠              テント村も大賑わい


 軽い食事、トイレを済ませて
7時ちょうどに出発。緩い坂を下って駒仙小屋へ。小屋前の決して狭くは無いテント場は色とりどりのテントで埋め尽くされていた。ここは山歩きを再開したばかりの6年前にテントデビューをした記念すべきところ。百名山のピークハントに躍起になっていた当時のことが昨日のように懐かしく思い出される。


            仙水峠との分岐                 すっとこんな景色の辛い登り


 小屋のすぐ前で仙水峠と栗沢山への登山道が分岐する。私と相前後して歩いていたハイカー達は一人残らず仙水峠へ向かってしまった。先を見渡しても栗沢山への登山道を歩いているのは私だけ。先ほどまでの喧騒が嘘のように静かなものだ。静かではあっても決して優しくはないのが南アルプスのお山。のっけから結構な急坂で暖気運転もあらばこそ、いきなりハードワークを強いられる。


甲斐駒を望む


 最近歳のせいか頓に弱くなった高度障害によるものか、体調が今一つ優れない。アンクルウエイトを付けたように足は重いし、増加させた呼吸数に見合うだけの酸素が肺に入ってこないのだ。ぜいぜいと誰はばかることも無く喘ぎ声をあげつつ鬱蒼と茂った深い樹林帯の中を登って行く。


 顔を上げればグレーの空、それも上に行くほどに天気は冴えない。低い雲底同様、モチベーションも下がりっぱなし。残念ながら「主稜線はガスに覆われる」とのヤマテンの予報は
100%的中だ。時折姿を現す甲斐駒ケ岳中腹の花崗岩の白い地肌だけが南アルプスを歩いていることを実感させてくれる。

 黙々と歩き続けること
1時間40分、やっとのことで栗沢山の頂きに立った。視界不良なので水分補給の小休止をしただけで、さっさと次のマイルストーンへと向かう。ここからは岩だらけの狭い稜線にハイマツの海。濡れて滑りやすい岩と、登山道が見えないほど繁茂したハイマツの枝をかき分けながら進む。


              岩稜を行く                  ハイマツに覆われる登山道


 栗沢山から
1時間、朝露をたっぷり含んだハイマツ漕ぎのお陰で下半身をびしょびしょにして本日の目的地、アサヨ峰の山頂に立った。ここまで行き合ったのは北沢峠からピストンしている数名だけと実に閑散としたものだ。喧騒を極めているだろう北岳や甲斐駒ケ岳とは何と言う違いだろうか。

 眺望の無い山頂は退屈だ。待機してもガスの晴れる見込みは無いので、先に進むことにした。山頂から急坂を一気に下って再び樹林帯へと入る。風が通る稜線とは違い、顔にまとわりつく虫の大群が鬱陶しい。


             アサヨ峰山頂                 樹林帯へと下る


 栗沢山、アサヨ峰間の岩稜地帯と比較するとずっと歩き易い道だが、細かなアップダウンが連続し、中々楽をさせてくれない。それを埋め合わせしてくれるかのように、ガスが晴れて来た。ミヨシノ頭辺りから地蔵岳のオベリスクが展望できるようになってきたのだ。


              ダケカンバの森                ミヨシノ頭?



地蔵岳方面を望む


 アサヨ峰から
1時間半ほどで早川尾根小屋に到着。小屋前のテント場では若い男女のグループが大型テントを設営していた。小屋は厳重に戸締りされており、明らかに営業はしていない様子。やはり人通りの少ない場所柄では集客に難ありなのだろうか。


             早坂尾根小屋は休業中?          快適な下り道


 小屋を過ぎると登山道は一段と快適になる。躓くような木の根や岩もない歩き易い緩い下り坂だ。ほどなく広河原峠に到着。実は計画段階では百高山をもう一山、高嶺にも足を延ばすことを目論んでいたのだが、この時点で当初案はあっさり撤回することに決めた。時刻は既に正午を回っているし、天気は冴えない、気力、余力も無い等々、毎度のことながら楽をするためなら言い分けはいくらでも出てくるのだ。


                 広河原峠                激坂を下る


 小休止後、峠から広河原に向けて下山開始。倒木が散乱し、踏み跡も乱れがち。どうやらこの道は夏のシーズン中といえども余り踏まれていないようだ。ピンクのマーキングを頼りに標高
2400mから1800m辺りまで一本調子の急降下。ここを登りにとるのは勘弁してほしいと思わず悲鳴があがるほどの激坂だ。


            沢沿いの散歩道                 南アルプス林道に出た


 斜度が緩んで一息つけるようになると、その先は沢沿いの気持ちの良い散歩道。次第に平坦な道が続くようになると程なく南アルプス林道に出た。時折通過する大型の工事車両に注意しながら、車道をぶらぶら歩いて午後
140分に無事バスターミナルに帰着した。

 結局この日、アサヨ峰から広河原までの区間で出会ったのは、早川尾根小屋の若者グループの他は鳳凰小屋から縦走していた
3人だけ。夏山ピークの週末であっても、人気の山からちょっと目先を変えただけで、信じられない程静穏な山歩きが楽しめるということを再認識した一日だった。


行動時間  
6時間40



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