3180m 長野・岐阜県 | |
2013年9月17日(火) 台風一過、ここしばらくは秋晴れが期待できそうなので、テントを背負って北アルプス「点から線」計画をまた一つ実行することにする。今回は西鎌尾根を三俣蓮華岳まで歩くことがハイライト。これで過去の山行記録と合わせると、西穂高から長野側は水晶岳まで、富山側は薬師岳までがつながることになる。 まだ台風の余波が残る深夜に自宅を発ち、新穂高温泉には早朝5時に到着。蒲田川の水量が少し多いように見えるものの、台風の影響はそれほど無さそうなので一安心。 5時30分、登山センターに立ち寄り、届を出して歩き始める。穂高平避難小屋へのショートカットを除き白出沢出合まで、ザックの重さにじっと耐えるだけの単調な林道歩き。奥穂高への登山道を別け、白出沢を過ぎるとようやく山歩きらしくなる。
石畳の歩き易い道をどんどん登って行くと、青空の下、左手に笠ヶ岳へと連なる稜線が視界に入ってきて弥が上にもモチベーションアップ。滝谷出合に着くと、水量の多い滝谷に渡された一枚板の橋を大はしゃぎしながら渡る若いハイカー達がいた。彼らを尻目にもうひと頑張りし、3時間半かけて槍平小屋に到着。ここで大休止とする。
行動食のお握りにパクついていると、金髪、茶髪、色とりどりの頭と渋谷辺りを歩くようなファッショナブルなウェアを着た少年少女が小屋から出てきた。足元はスニーカー履き。この出立ちで槍ケ岳に登るつもりだろうか。富士山でも時々似たような光景を見かけますが。。。 水場で水2リットルを補給して登行再開。槍平からは一段と勾配がきつくなるが、その分眺望がどんどん開けてくるのが救い。飛騨沢の最終水場を過ぎた辺りから植生の樹高が低くなり、そろそろ高山帯の様相。西鎌尾根らしき岩峰が左前方に望めるようになってきた。
しばらく登り続けて行くと千丈乗越との分岐に到着。そちらに進むと明日の西鎌尾根とかぶるので、槍ケ岳にダイレクトに突きあげる飛騨乗越へと足を向ける。相前後しながらほぼ同じペースで登ってきていた3人の単独の姿が見えなくなったので、皆前者を選んだようだ。私はガレた急斜面を一人黙々と登っていく。
槍ヶ岳山荘が意外に近く見えるが、これは期待交じりのいつもの錯覚。中々近づいてこないので期待が失望へと変わるのもいつものこと。失望を通り越すと今度は無心の境地になる。悟りを開いて一頻り登り続けるうちに、稜線を歩くハイカーの姿が目に入ってきた。ここでまた邪念に取り付かれ、にわかに重くなった足が空回り。上らない太腿を無理やり引き上げての最後のひと踏ん張りで頂上直下のテントサイトに出た。
ここまで7時間10分、時間がまだ早いし天気は雲ひとつない最高の秋晴れ。ゆっくりテントを張ってから穂先に登ることにする。小屋で早速受付を済ませて指定されたテント場へと向かう。大岩の真下で日照に難ありだが、格好の風除けになりそうな場所。ただ崖っぷちなので夜中のトイレ行きに気をつけないと槍沢に真っ逆さまだ。 テント設営後は早速山頂に向け空身で出発。重力を意識させ続けた背中の荷物が無いと何と楽なことか。足取りも軽く、幸い渋滞にも遇わず、スムーズに槍の穂先に立つことができた。360度、文句なしの大パノラマ。台風が大気のチリをすっかり払ってくれたようで北アルプスはもとより本州中部の山々がクリアに良く見えている。居合わせたハイカー達は、この絶景を前にして異口同音に感動を口にしながら記念撮影に余念が無い。勿論私もその一人。
今日は予定も無いのでこのまま山頂でのんびりしても良いのだが、ビールの誘惑に負けて適当なところで下山を開始する。岩場を慎重に下って小屋の売店に直行。よく冷えたビールを片手に小屋前の見晴らし台ベンチに行くと、途中まで一緒だった富山の単独青年が寝そべっていた。早く稜線に上った方が景色を楽しめるので千丈乗越経由にした由。 しばらくおしゃべりをした後、穂先へと向かう同氏を見送るとビールも空に。今晩のねぐらへと戻り、ウイスキーをちびちびと飲みながら地上3065mにある天空の楽園を心行くまで楽しんだ。
行動時間 8時間40分 二日目へ続く |