薬師岳  富山県 2926m    百名山 
 


201189

 真夜中に自宅を出る。昨夜は家族の誕生祝いで外食、10時に帰宅して少し仮眠しただけなのでかなり睡眠不足だ。当初の予定では初日は山歩きはせずに飛騨地方を観光するつもりだったのだが、意外に早く安房峠辺りまで来ることができたので、薬師岳をクリアしてしまおうかと欲がでてきた。平湯で最終決断し、進路を高山から山之村経由折立へと変更した。数えきれないほどのカーブを結構飛ばしたので遠心力に抵抗し続けた腹筋がおかしくなりそうだ。有料ゲートを通過してさらに湖畔沿いに腹筋運動を続け、折立には640分に着いた。

 いつもの山歩きなら早朝
5時前に出発するのが通例なので、今日はかなり出遅れている。急いで出発準備を整え、7時に車を後にした。登山口周辺は、バスで乗りつけた人達などで結構賑わっている。十三重の塔の慰霊碑を左に見た後は、だらだらとした登りが続く。木や岩に摑まって体を引き揚げるような急登はないが、ともかく距離が長い。下界は記録的猛暑だとか、山にいても標高が低いうちは暑さが辛い。湧き出た汗が滴になって額からポタポタと垂れ落ちる。


         大きな荷物を背負って歩きだす人々                         遭難記念碑


 樹林帯のなかは展望も無い代わりに直射日光が遮られるのでありがたい。標高が
1800mを越える頃になると、視界が開けてきて背後には有峰湖を望むことができるようになってきた。やがて左手には北アルプス北部の山々が見えてきた。剣岳らしき峰が遠望できて暑さを忘れさせてくれる。尾根の続く先には北ノ俣岳と薬師岳を結ぶ稜線を望むことが出来るが、まだまだ遠い。


           北アルプス北部の峰々                            まだ稜線は遥か彼方


 大きなザックを背負った人達をどんどんと追い抜く。別に私の足が速いわけではない。荷物が軽量のデイバッグだからだ。遅い出発のせいか私のような日帰り組は見当たらないようだ。広い草原状の緩やかな尾根につけられた石畳みや木道がうねうねと続いている。まるで中国の万里の長城のようだ。時折振り返って稼いだ高度を確認する。次第に小さくなる有峰湖の彼方に見えるのは白山だろうか。所々にニッコウキスゲの群生があり、草原一体に広がっている。


         万里の長城は上へ上へと続く                             有峰湖



          ニッコウキスゲの群落                            稜線まであとわずか


 木道も少々飽きてきたと思う頃、太郎平小屋が見えてきた。なかなか近くならない小屋だが、登りきると正面には水晶岳、鷲羽岳、黒部五郎岳など昨年来お馴染みの山々が待っていてくれた。ここまでの所要時間は
2時間半。ちょっとオーバーペース立ったかも知れない。トイレを借りて一休みする。水はすでに1リッター消費してしまった。


太郎平小屋より三俣蓮華、鷲羽岳、水晶岳方面


水晶岳アップ


 広々した稜線上に付けられた木道を通って薬師峠へと向かう。テントが数張あるが、住人は外出中のようだ。ガスが次第に濃くなって上方はすっかり灰色のベールに隠れてしまった。登り返しは沢沿いの道だ。冷たい流れに一息つきつつ少し急な道をどんどん登る。そのうち沢は水が涸れてガレ場となる。ここを抜けてはい松帯に入ると、ガスの合間からたおやかな薬師岳が姿を現した。


               薬師峠へと向かう                             テント場



             沢沿いの登山道                              やがてガレ場に



実際の頂上は左側のピークの奥


 フラットになった尾根をゆるゆると歩いて行くと、大きなケルンがあり登山者が休憩している。薬師平だ。ここからまた一しきり登ると薬師岳山荘が見えてきた。ガスのかかり方はまだら模様らしく、山頂近くになると雲の平方面の視界が一気に広がった。山頂には沢山の人が雄大な景色を楽しんでいる。時刻は
1140分。折立てから4時間40分で山頂に立つことができた。学生時代以来およそ40年ぶりの薬師岳だ。


            薬師小屋へと登る                            薬師小屋が見えた



         山頂手前のケルン                      薬師岳山頂


正面は水晶岳



北薬師岳



赤牛岳


 水晶岳や鷲羽岳など雲の平を取り囲む峰々が勢ぞろいしている。特に正面の赤牛岳は印象的だ。菓子パンで栄養補給をしつつしばらく景色を楽しんだ。それにしてもと思う。山頂にいる人達はおそらく私と同年代なのだが、掛け声をかけねば持ち上がらない程大きなザックを背負って何日も縦走を楽しんでいる人、目を輝かせながら雷鳥との出合いを語る人、皆それぞれとても生き生きしている。翻って自らを省みるに最近は山における滞在時間を最小化するなど効率的なピークハントの追及のみに堕しているのではないだろうか。それでは何のための山歩きかわからない。

 ともあれ昼を回ってしまったので下山することにしよう。再びガスのなかに突入すると、続々と登ってくる人達と行き違うようになった。途中で追い越した折立からの人達だろうか。沢まで下りたところで持参した
2リッターの最後の一滴が無くなった。冷たい流れには抗しがたい。登山道近くの沢水をがぶ飲みし、さらにペットボトルにつめる。長丁場のコースに加えてこの暑さでは3リッターのハイドレーションが必要だったことになる計算だ。

 登山者で賑わう太郎平小屋を素通りし、ひたすら下り続ける。石畳みの道は、意外に滑りやすく疲れた足に堪える。標高が下がるにつれてまた汗が噴き出て来た。駐車場帰着は
1540分、8時間40分で86座目の百名山を終えた。着替えもそこそこに車を出して白山の登山口、大白川温泉へと向かった。

行動時間 8時間40分
歩行時間 8時間


白山へ続く

 


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