剣岳  富山県 2999m   百名山
 立山 富山県 3015m  百名山 
  
201093日(一日目)

 百名山行脚を始めたものの、何故か北アルプスは敷居が高かった。特に槍穂高や剣岳等、ハイカーの行列の出来る有名山はなおさらである。しかし、いつまでも避けているわけにはいかないので、この夏は北アルプスを集中的に歩こうと計画してみた。7月の白馬岳を皮切りに先々週の笠ヶ岳まで、北アルプスの百名山15座のうち10座を登り終えることができたのでまずまずの出来だと思う(常念岳は昨年クリア)。残り5座のうち一番の大物は何といっても剣岳だ。険しい山ということもあるが、むしろ山小屋の混雑が嫌で足を運べないでいた。映画「点の記」が剣岳ブームに油を注いでいるのでなおさらだ。8月の初めに剣山荘に電話すると、予約は満杯で一人に一畳分のスペースはとても確保できませんとのこと。いわしの缶詰状態は勘弁なので比較的混雑の少ない黒部源流域の山々に行き先を変更した経緯もある。それから1ヶ月、再度電話すると平日であればそれほど込み合わない由、思い立って金曜日に宿泊する日程で出かけることにした。せっかくの機会なので、黒部下ノ廊下の下見、日本三大雪渓の一つである剣沢雪渓歩き、剣岳登頂後は二つ目の百名山の立山まで足を伸ばす等々もまとめてやってしまうことにした。その後は、そのまま下山するか、一ノ越山荘辺りにもう一泊して翌日ゆっくり黒部湖へ降りるかどうかを当日の状況を見て判断することにした。

  
この日の朝一番のトロリーバスは午前730分発だ。この始発に間に合うように自宅を午前2時過ぎに後にした。扇沢には午前630分に到着。余裕十分と思ったが、平日にもかかわらず無料駐車場はすでに満車に近い。それでも何とか空きを見つけて駐車することができた。関電トロリーバスは後立山連峰を貫いて僅か15分で黒部ダムへ運んでくれる。降車すると同じバスに乗り合わせた乗客は皆、ダム方面へぞろぞろ歩いていくが、私だけが彼らに背を向けてトンネル内を登山者用出口へと向かった。トイレを抜けたところが出口といういささか風変わりな出発点だ。ここから林道を黒部川に向けて下っていく。案内標識も何も見当たらず、人の気配も無く、いかにもマイナーなコースという印象だ。しばらく下り続けると、黒部川の河原に着いた。ここから板敷きの橋で対岸へ渡る。濡れて滑りやすそうな貧弱な橋だが、見上げる黒部ダムは圧巻だ。観光放水が霧になって降りてきている。



     黒部川に向け降りて行く           対岸へ渡る頼りない橋


黒部ダムを下から見上げる



 黒部川を右手に見ながらあまり整備されているとは言えない小道をどんどん下っていく。小沢を渡ったところに巨大なスノーブリッジが残っていた。このルートは標高
1300mをやや越える程度だが、9月になってもこれだけ大きな雪塊が融けずに残っているとは驚きだ。冬季の豪雪ぶりが想像されるというものだ。ほどなく内蔵助谷との分岐に着いた。本来のルートは真砂岳方面なのだが、下ノ廊下の雰囲気を少し垣間見るため旧日電歩道へと入る。登山者通行禁止の立て看板があってものものしい。9月になっても開通していないということだろうか。このコースは毎年雪害で登山道が相当な被害を受けるので、秋の極短い期間しか使用できないというのは本当らしい。看板のメッセージに逆らうのは抵抗があったが、ここから往復で一時間程度の下見を行うことにした。



      スノーブリッジ               通行禁止の看板



黒部川下の廊下




 
往復1時間の範囲ではマーキングや梯子などきちんと補修されている。しかしここまではほんの「さわり」の部分、下ノ廊下の核心部の様子は、さらに下流の白竜峡や十字峡を通らねばわからないのだが。今回は別山岩屋辺りまで行って引き返した。もう少し秋の深まった頃に再訪して欅平までの全行程を歩き通してみたいものだ。再び内蔵助谷との分岐へと戻り、内蔵助平へと向けて歩きだす。ここからいきなり高巻きになる。それも、超のつくほどの急斜面をロープにすがって登り降りするので大変だ。その後も急勾配のアップダウンの連続で息が切れる。余計な寄り道で体力を浪費するんじゃなかったと後悔する。



           内蔵助谷を登る                              骨の折れる巻き道



 
それでも沢音が次第に大人しくなり、傾斜が緩んでくると内蔵助平に到着だ。いつの間にか周囲は霧に包まれていて時折雨がぱらつくようになった。地図にある丸山東壁など姿が全く見えないので残念だ。水の涸れた沢床のような登山路を進むと再び勾配がきつくなってくる。沢から離れて尾根道をもう一頑張りすると傾斜が緩み、痩せた尾根上のハシゴ谷乗越に着く。ここから剣沢の大雪渓の一部が垣間見えた。乗越から剣沢へ向けての下りがものすごい。殆ど急降下と言ってよい角度で下っていく。ハシゴ谷乗越で苦労して稼いだせっかくの300mがパーだ。また登り返さねばならない。沢音が次第に大きくなり道が剣沢と平行するようになると真砂沢ロッジが近い。ロッジは小ぢんまりとしていて居心地は良さそうであるが、明日の行程を考えるとここに泊まることはできない。素通りして剣沢雪渓へと向かう。



           内蔵助平から川床を行く                    ようやく剣沢の核心部が姿を見せた




       ハシゴ谷乗越からようやく沢へ                              真砂沢ロッジ




          スプーンカットの剣沢雪渓




雪渓も終わり



 
天気はさらに悪化して時折ぱらぱらと大粒の雨が落ちてくる。しばらく雪渓上を行くと巨大なスノーブリッジが現れてきた。左岸を巻いてやり過ごし、再び雪の上に戻る。傾斜がきつくなってくるがアイゼンを履くほどではない。長次郎谷、平蔵谷を過ぎた頃から雨の勢いが強くなり風も出てきたので雨具を着た。左岸の陸路沿いに下ってきた中高年の二人組みとすれ違う。シェルンドがあるので雪渓は止めた方がいいとのアドバイス。しかし雪渓の方が断然歩きやすい。出来るだけ安全そうな陸地との際を歩き雪渓が切れるぎりぎりまで行った。剣山荘へは左岸に渡らなければならなかったが、ガスで視界も閉ざされているし、ずっと右岸沿いに来てしまったので今更面倒だ、予定を変更して剣沢小屋を今夜の寝場所にすることにした。小屋への到着は午後340分。混雑していれば剣山荘に向かおうと思ったが、布団一枚はOKとのことだった一安心。本日の行程をこれで終えることにした。




行動時間              8時間
歩行時間              7時間30分(下ノ廊下偵察約1時間を含む)
標準CT                 8時間25分(同含まず)

GPSの記録は深い谷間のせいか、かなり乱れています。

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