2010年9月4日(二日目)
昨夜は7時過ぎに就寝したが、鼾の大合唱でよく寝られなかった。左隣の若い人もしばらく寝付かれないようだったが、そのうち大合唱の中心メンバーに変身、他を圧する大音響を発するようになった。右隣の年配者は未明の3時に出発とのことで2時に床を離れたが、この人は鼾に対抗するように大声でクシャミを連発していた。私はしばらく騒音を我慢していたが、もはや限界。3時半に起き出して4時過ぎに小屋を後にした。空には満点の星、すっかり晴れ男が定着したようだ。ヘッドライトのビームに浮かび上がるマーキングを追って剣山荘へと向かう。早出の人が結構いるらしい。黒々とした一服剣に幾つものランプの明かりが見える。剣山荘脇からその一服剣への登りにかかった。間もなく追いついた先行パーティの女性はもう息が相当乱れている。登り始めたばかりで核心部はこれからなのに今からこんな状態で大丈夫かと人ごとながら心配になる。一服剣の山頂には中高年の一団がいて朝飯を摂っていた。夜はすっかり明けて別山や剣御前のモルゲンロートが素晴らしい。ここから観る前剣が壮観で知らなければこれが剣岳そのものと勘違いしてしまいそうだ。
後立山連峰の夜明け 前剣の威容
立山がモルゲンロートに染まる 剣岳への道
前剣からはいよいよ緊張の鎖場の連続になる。平蔵の頭、コルを越えて最後の難場はかの有名なカニのタテバイだ。ステンレスの立派な鎖があるので不安はない。岩登りの経験はないのでよくわからないが、もし鎖が無かったら相当難易度の高い岩場になるのではないか。剣岳山頂には午前7時ちょうどに着いた。既に10名近くの人達が居て賑やかだ。逆光になるものの山頂からは後立山連峰の峰々が正面に連なっていて壮観だ。ちょっと遠くには槍穂高や笠ヶ岳、はるか彼方には富士山まで遠望できる。近いところでは北方稜線のギザギザした凄まじい尾根が、その昔地獄に例えられたことが納得できる姿で聳えている。先日6名パーティが道迷いで遭難したのも頷ける険しさだ。雲海の切れ目から宇奈月温泉、黒部市も見渡せた。ここで小屋のお弁当を食べて次の行程に備える。
前剣に着いた 隠れていた御本尊が見えた
鎖場(写真では高度感がわからないので残念)
カニのたてばいのプレート カニのよこばいのプレート
剣岳山頂の社 狭い頂上は人でいっぱい
すさまじく険しい北方稜線
立山とその背後には槍穂らしき山容が見える
帰路はカニのヨコバイから下る。鎖場も登りとは違うルート設定がされている。混雑するピーク時期には渋滞してすごいことになるのだろう。一服剣からは剣山荘へは降りずに、くろゆりのコルへと向かう。このルートは剣山荘をバイパスすることになるせいか、明らかに人の手が入っていない。特にはい松で登山道が覆い隠されてしまっている箇所が多く泳ぐように進まねばならない。そろそろ日差しがきつくなり、汗がとめどもなく流れる。やがて剣山荘からの道が合流してくると格段に歩きやすくなった。左手下方に剣沢のテント場を眺めながらだらだらと登っていく。別山乗越には室堂からのハイカーが大勢いた。剣御前小舎でポカリスエットを2本購入、1000円なり。1CCが1円の計算だがよく冷えた飲み物には抗し難い。
険しい道のり、山腹に張り付く人の姿が見えるだろうか
昨日登った剣沢 ライチョウを見かける
剣山荘と左手奥に剣沢小屋
剣御前小舎 乗越からは室堂方面が見えた
ここから別山へと向かう。寄り道になるが、北峰まで歩を進めて剣岳の勇姿を眺めた。ここは剣岳を鑑賞する最高の展望台だ。再び稜線へと戻り真砂岳へ向けて下る。どうやらここは反時計回りの人が圧倒的に多いらしい。すれ違いの都度、道を譲ったり譲られたりで煩わしい。特に下って来る数十名規模の団体さんとすれ違うのは、川の流れに逆らって上流に向かうに等しい。立山最高峰の大汝山は人で埋め尽くされていた。すぐに雄山へと向かう。ここは更に人また人でごった返していた。あまりの混雑ぶりに本日二つ目の百名山登頂にも感動もへったくりもない、早々に下山することにする。下りも行列で遅々として進まない。一ノ越山荘の前にも大変な人だかりだ。この山荘にもう一泊するなどという甘い気持ちは完全に吹き飛んでしまった。もう鼾と人ごみは沢山だ。室堂へ向けさっさと下山することにした。室堂ターミナルには午後2時15分に到着。トロリーバス、ロープウエイ、ケーブルカー、そして再びトロリーバスと乗り継いで扇沢に帰着した。
別山から剣岳
立山連峰 ザレた道を行く
大汝山 雄山
室堂へ向けて下る
天気に恵まれて最高だった
行動時間 10時間
歩行時間 9時間
標準CT 11時間15分
GPSの記録は深い谷間のせいか、かなり乱れています。
Part1 Part2
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