2013年4月4日(木)
先日初めて訪れた浅草岳に感銘を受けて、ますます越後の山のファンになってしまった。この山域は、標高1500m前後の中級山岳ながら日本有数と言われる豪雪の御蔭で、アルプスに勝とも劣らない豪快な雪景色が満喫できるし、何よりもスキーの適地に恵まれているのが好い。そんな訳で今回も飽きずに越後の山を目指すことにした。
初日はこれで3度目となる守門大岳。予報によれば天気が回復傾向にあるのは間違いないが、出掛けるタイミングが少し早すぎたようだ。関越トンネルを抜けた途端、関東地方の晴れの天気から一転、濃いガスに包まれてしまった。目的地が近くなるにつれ、すっかり雨模様となり、モチベーションも低下の一途だ。
二分集落には午前8時前に到着。除雪最終地点にはゲートが設置されていた。いつもはここから雪壁を乗り越えてハイクアップのスタートとなるのだが、今年は護岸工事とやらで、その先もずっと除雪されている。
天候回復を待ってしばらく車中で待機。うつらうつら不貞寝をしていると、中高年の男女4人パーティの車が到着。バタバタと手際よく支度をして、雨をものともせず出発していった。さらにもう一台、新潟ナンバーの車が到来。運転していた中年男性は、しばらく様子見の後、空を恨めしそうに眺めて引き返していった。高速とガソリンに大枚払わずに済む近場の人は、いつでも来れるのであっさり諦めもつくのだろう。羨ましい限り。
9時過ぎになって、ようやく雨が上がったので私も出発。ゲートから暫くは舗装道路、橋を渡ったところで雪になったのでシール登行開始。このところの雨のせいか、雪面は泥や小枝混じりで何とも薄汚い。昨年の同時期に来たときは、雪も深く、降雪直後だったこともあり、一面白銀の世界だった。何とも様変わりの今回。今年は融雪が早いペースで進んで、季節が例年の半月から一月先を行っているような感じだ。
汚れた雪面を行く 上空には濃密なガス
ガスは次第に濃くなって、、 視界2~30mくらい
長峰からの尾根筋は天気が良ければ大岳を望む最高の展望台。今日は視界が2~30メートルと言ったところだろうか。保久礼小屋を過ぎた辺りで先行の4人組をキャッチアップ。どうやら皆さん地元の方で、足元は揃ってワカンジキだった。
保久礼小屋を過ぎて、、、 ブナ林の中を登って行く
ブナ林の急登に差し掛かるとガスはますます濃くなって10m先のものが辛うじて視認出来る程度。そのせいかキビタキ避難小屋を見過ごしてしまった。
視界が狭い範囲に限られているので、左右に寄り過ぎないよう注意して無木立の斜面を真っ直ぐに登り上げていく。幸いと言うか、残念と言うか、適度に緩んだザラメにシールがよく効いてくれるので初登板となるはずのクトー、Voileの出番はない。
勾配が緩んできたので、そろそろ山頂かと目を凝らすと、釣鐘の上部(正確には枠だけ)が顔を出していた。時刻はちょうど正午。天候回復は時間の問題とは言え、眺望も無く冷たい風が間断なく吹き付ける山頂でガスが晴れるのを待ち続ける根性は持ち合わせていない。シールを剥がしてさっさと下山にかかった。
尾根の左側に走るクラック 釣鐘が頭を出している
当初の計画では南西尾根か、中津又岳経由の滑降を予定していたが、こんな天気では論外だ。安全第一、大人しく往路を引き返すことにした。視界はちょうど1ターン分。自分の登行トレースを外さないように慎重にターンを刻んで行く。降りるほどにガスが薄くなったので、少しスピードアップ。気持ちのよいザラメでようやくスキーが楽しくなってきた。
キビタキ避難小屋 ガスが薄くなってきた
登行中の4人組と行き交い、ブナの疎林に突入。ツリーランを楽しみながら保久礼小屋に帰着。ここでランチタイム。さてこれからどうするか。せっかく天候回復の兆しがあるのにこのまま下ってしまうには忍びない。行きそびれた中津又岳の尾根を偵察がてら、時間の許す限り登ってみることにしよう。タイムリミットは午後2時半としておく。
屋根にちょこんと雪の乗った保久礼小屋 左側の尾根に取り付いた
保久礼小屋から一旦沢筋に下り、目の前に延びている尾根に取り付く。消えかけてはいるもののツボ足の跡や赤いテープがところどころにあるので登降する人も少なくないようだ。稜線に出るまでしばらくは急登ながら、その先は程よい緩斜面となった。
やっと晴れてきたが、、、 稜線にはまだガスが
広々した尾根
高度を上げるにつれ天候も回復。頭上には青空が広がり、大岳にかかっていたガスも晴れてきた。高度1300mまで登ったところでタイムアウト。この先、中津又岳は目の前だし、高度差にして100m足らず。ものの15分もあれば到達できそうだ。少し逡巡したが、やはり無理は禁物。一度決めた腹積もり通りここから引き返すことにしよう。
中津又岳を目前にしてタイムアウト
大岳がくっきり
広々したバーンを気持ちよく滑降する
シールを外して滑降開始。斜度はそれほど急ではないものの、雪質は上々だ。ともかく広々した無木立の尾根を独占して好きなようにシュプールを描けるのが嬉しい。樹林帯のなかも快適に滑降して20分もかからずに保久礼小屋まで帰り着いてしまった。
すっかり晴れ渡った稜線
小屋からスキーを担いで登り返し。尾根沿いをゆるゆる滑っていくと、またもや下山途中の4人組と遭遇。「あれ、この人、また~?」の声を背中に下降を続けて3時40分にゲートに帰着した。
中津又岳へ登り返した御蔭で素晴らしい景観とスキーを楽しむことができた。累積1600mに及ぶ登行は楽ではなかったが、かいた汗に見合う分、それなりの素晴らしいご褒美もあったので大満足だ。今日は越後須原の民宿に泊まり、明日は守門黒姫に向かう予定。
行動時間 6時間30分
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