大岳BC  新潟県 1432m     二百名山  
   

201248

 大岳は守門岳を構成するピークの一つ、昨年袴岳へ向かう際に通過した山だ。この頂きから眺める中ツ又岳にかけての大雪庇は評判通り素晴らしかった。大雪の今年は昨年にもまして見事な雪庇だろう。つぼ足をスキーに替えて再訪することにした。

 移動性高気圧に覆われるとの予報だが、
GPV気象予報をチェックすると、朝早いうちはこの近辺に雪雲が残っているのが気になる。案の定、関東地方は煌々と月が照っていたのに、関越トンネルを抜けた途端、真冬に逆戻りしたような雪模様になってしまった。小出ICを降りると路面に降り積もった雪の処理に多くの除雪車がフル回転していた。

 
 登山口となる二分へと続く細い道は、まるで雪壁の回廊だ。午前
6時過ぎに除雪最終地点に到着。既に数台の車が到着しているが、幸い駐車スペースは確保できた。隣は雪庇ツアーの団体さんのボックスカーで皆さん出発準備にいとまが無い。日曜日とあって後から後からどんどん車が来るが、元々限られた狭いスペースしか無いので大混乱だ。ここは早着きするに限る。













       二分への道は雪壁の回廊

 重たい雪がこんこんと降り続いていて、車があっという間に真っ白になってしまった。暫く様子を見たが、止む気配も無いので
、意を決して出発することにした。時刻は6時55分。見上げるような雪壁を登ってスキーを履く。有り難いことに先行者のラッセル跡がある。どうやら一人か二人のスノーシューらしい。


       駐車スペースは雪庇ツアーの団体で大賑わい              スノーシュー跡も降り積もる雪で消されがち


 文字通りスノーブリッジとなった橋を渡り、長峰への尾根へと向かう。この出だしの急坂で早くもシールがトラブル、外れて接着面に雪がべったりついてしまった。こんな調子では先が思いやられる。尾根上を緩やかな登りで後続のスノーシュー二人組に追いつかれたので道を譲った。彼らの後を追うと嘘のように歩き易くなった。
3人がかりで踏み固めたトレースは田圃のあぜ道が舗装道路になったかのようだ。すっかり堅固になったU字溝を歩く後続部隊が続々と追いついてきた。





 保久礼小屋が近くなると愈々雪が深くなり、先に立って膝から腿のラッセルに苦闘する単独のスノーボーダーが見えてきた。ここから
8名位が団子になって交代でラッセル。私も保久礼小屋からブナ林の急坂のラッセルを分担した。スキー板のトップが沈まないように努めながら、ぐっと踏み込んで足場を固めながら進む。トップが潜ってしまうと板の上の重い雪を跳ね上げるのが、大変な重労働だ。先頭のボーダー氏は相当な距離を一人でラッセルして、さぞかし大変だったろうと思う。


            スノーシュー二人組                       雪庇ツアーの皆さんは保久礼小屋へ



              交代でラッセル中


 私に代わった同年輩か団塊初期と思しき熟年スキーヤー二人が若者顔負けの馬力で道を切り開いて行く。団子は見る見る崩れ始めて、遅れる人が出始めた。彼らのパワーもさること、どうやら深雪ではスノーシューよりも浮力のあるスキーに軍配が上がるらしい。しばらくするうちに先頭集団はこの二人組と私の三人だけになってしまった。聞けば地元の方でこの山域に精通する山スキーの大ベテラン。樹林帯を抜けて吹き晒しになると雪面も締ってきて更にピッチが上がり、ついて行くのがやっとだ。


           地元のベテランスキーヤー                    下界は晴れてきたが上の雲に突入


 周囲は完全にホワイトアウト。ベテランと一緒でなければ、
GPSを頻繁にチェックせずには雪庇が怖くてとても前に進めない。11時ちょうどに大岳山頂に到着。釣鐘が少しだけ頭を出しているだけで、何も目印の無い頂、へたすれば雪庇の縁まで行ってしまいそうだ。

 滑降の準備をしている間にスノーシュー二人組が上ってきた。二人の老達人の熟練の滑りを見送り、私も後を追う。ところがシールを剥がし忘れたかと錯覚するほど、雪面に吸いついたように板が滑らない。こうした雪質もあることを初めて知った。それでもだましだまし滑降を始めると、雪面が大きく波打っていてストップがかかってしまう。視界不良に加えて波乗りではスキーにはならない。


        ピンボケだが釣鐘の一部                狭い尾根を滑り降りる

 ボーゲンで慎重に下って行くうちに、視界がいきなり開けた。眼下の尾根筋にいる沢山の登山者がまるで砂糖に群がる蟻のようだ。雪質もパウダーになりやっと気持ちの良いスキーになった。細尾根なので登って来る人達の脇を滑り降りねばならない。下手な滑りを皆から注目されてちと恥ずかしい。


一番気持ちよく滑れたところ



天気も良くなって最高!


 先に降りたベテラン二人のコースを辿って林間コースを降りて行く。保久礼小屋が近くなった所で、シュプールは右手の急斜面を谷合に滑り込んでいる。下には小デブリも見えるし、無理は禁物、斜面をトラバース気味に滑り降りた。


              ブナ林のツリーラン


 二階部分だけが露出している保久礼小屋に帰りついたところでランチライム。気温上昇とともに枝に積もった雪塊がどさっと頭上に落ちて来るので右往左往した。小屋前からは登り返し、再びシールを貼って歩きだす。尾根沿いの緩やかなトレース上をのんびりと滑る。振り返れば大岳から守門岳にかけての真白き稜線が青空の下にくっきりと映えていた。今日は
1時間早くて好天のタイミングを外してしまったようだ。不思議なことに余り悔しい思いはない。天気以外の収穫が多かったせいだろう。


            谷合を抜けて、、、                       大きな雪帽子を乗せた保久礼小屋に到着



振り返ると、、、タイミングがちょっと早過ぎた



二口コースの尾根を眺める



もう一度振り返るとこの景色


 湿気をたっぷり含んだ雪はとても重くて、トレースを一歩外せば全くと言って良いほど滑らない。ボブスレーの
コースのようなトレースを滑り続け、午後1時に除雪最終地点に帰着した。どうやら雪庇ツアーの団体さんは、結局保久礼小屋から引き返した様で、もう帰り支度をしていた。

 人気の山でおそらく日曜日のせいもあって、多数の車が雪壁に張り付くようにして縦列駐車している。その脇の狭いスペースを縫うようにして帰宅の途についた。今日は天候には恵まれなかったが、深雪のラッセルで大いに気持ちの良い汗を流せたし、ホワイトアウトのスキーも経験できた。それに何よりも多くのスキーヤーによってギタギタになったバーンを滑ることもなく、新鮮なパウダーを楽しむことが出来たので大満足の一日だった。

行動時間              6時間5
歩行時間              5時間45


追記
 前回平標山で苦しんだ靴ずれの対策が奏巧した。どなたかのブログで見たソックスを二枚ばきにして一枚目のソックスの踵の部分をビニールの買い物袋で覆うという方法。身支度に若干手間取ることと蒸れの点で難ありだが、お手軽でコストフリー。そのメリットは十分にあったと思う。

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