白毛門  1720m 群馬県      
 

2019年8月11日(日)

 昨年10月に東黒沢を遡行し丸山乗越へ、そこから広河原へ下降し今度はウツボギ沢を遡行、白毛門経由下山という一粒で二度おいしい上越の沢巡りを計画。その時は土合まで出向いたものの、生憎の空模様に嫌気がさして未遂に終わり、計画も意欲も萎んだまま先送りとなっていた。ところが、群馬のKさんが、最近同じコースを歩いたと知り、焼けぼっくいがメラメラと再燃。一週間遅れで私もこのダブル遡行を実行することにした。

 夏山は雷雨のリスクと隣り合わせ。リスクを少しでも軽減しようと夜が明けたばかりの午前4時45分、白毛門登山口の駐車場を後にする。白毛門への登山道と別れ、堰堤の先で東黒沢に入渓した。


入渓地点は殺風景だが、、、


 暫くは平凡な河原歩きだが、30分も歩かないうちに美しいナメが目を楽しませてくれるようになった。さらに進むと東黒沢の大看板、迫力満点で見応えのあるハナゲの滝が現れた。ここは右岸につけられた登山道で巻くことにして先を急ぐ。その先も美しいナメが続く。大岩の下をくぐると白毛門沢が分岐。暫くナメと吸い込まれそうな碧い渕や小滝が休む間もなく連続するようになった。時々半身浴でクールダウンしながら先へと進む。


ほどなくして美しいナメが現れる



およそ名前が似つかわしくない「ハナゲの滝」



上部はナメの傾斜が強い



ここは大岩の下から抜ける



白毛門沢が左から合流



ナメがどこまでも続く









 支沢の合流する二俣ではGPSで高度を確認してあらぬ方向に進まないよう気を付ける。それでも根っからの方向音痴の性は争えない。標高1040m地点で誤って右俣に入ってしまい、途中で気が付き引き返すハメに。


沢の分岐で始め、そろそろ要注意


 やがて水流が細くなり、愈々源頭が近くなってきたところで再び痛恨のルーファイミス。標高1200m地点で左股を進むべきところを気が付かずに右股へと入り込んでしまったのだ。運が悪いことに何故かこのタイミングでGPSが信号ロスト。現在地が確認できないまま、水流の絶えた沢筋を先へ先へと進んでしまった。


流れが細くなってきた


 GPSには頼れないし、辺りは深い笹薮で乗越を視認できないという状況。沢の源頭部を詰めて出た尾根筋は、結局大きく東側(武能岳1495mピーク側)に外れた地点。ここへ来てもGPSは相変わらず信号ロストを繰り返しており当てにならない。それでも周囲の様子から現在地はほぼ判明したので、西の鞍部に向かって進むことにした。しかし、背丈を越える密生した笹薮や灌木漕ぎに大苦戦。まるで深雪の腰ラッセルを強いられているようで大汗をかかされる。一時間近く藪と格闘し、ようやくウツボギ沢への下降点に合流することが出来た。文字通り「詰め」が甘かったせいで要らぬ時間と体力の浪費をしてしまった。


どうやら間違った源頭部に来てしまったらしい



藪また藪



やっとのことでウツボギ沢下降点に


 暫く沢下り。登りと違ってミスルートしようがないのが幸い。小沢の水を集めて流れは次第に太くなり、10時20分、無事ウツボギ沢との出合いに降り立った。ここで本日初めての大休止。ランチタイムとし第二ラウンドの沢遡行に備えた。


ウツボギ沢に合流


 伝え聞いていた通り、ウツボギ沢は明るく開けた美しい沢。威圧感のある大滝がある訳でもなく、ナメと渕を鑑賞しつつ、次から次ぎに現れる障害物をクリアしていく、沢歩きならではの楽しさを存分に味わえた。ホールドスタンスが細かく滝壺にドボンしそうな滝は東黒沢も合わせ二度ほど高巻いた。この際に大いに役立ったのはウイペット。手を伸ばしても届かない枝を引き寄せたり、泥壁にピックを打ち込んでホールドをつくったりと大活躍してくれた。


平和な沢












笠ヶ岳


 ウツボギ沢ではGPSも信号をロストすることなく、正確な情報を伝えてくれたので支沢の分岐点をミスることもなく順調に源頭へ。最後は草付きを登り、笠ヶ岳にかなり近い縦走路に登り上げた。当初は笠ヶ岳のピークを踏むつもりだったが、丸山乗越での藪漕ぎで気力体力を削がれ、すっかりその気は失せてしまった。


ガレ場の区間は短い



縦走路目前 ウツボギ沢を振り返る



笠ヶ岳に近い縦走路に出た



炎天下、白毛門へと向かう長い道程


 沢装備を解き、軽登山靴に履き替えた後は脇目も振らず白毛門へと向かった。しかし、所詮消化試合と問題にもしていなかった縦走路は甘くはなかった。風も弱く、想定していた以上の炎熱地獄。ウエアは清らかな冷たい沢水から一転して自ら発する熱い汗を含んでグショグショとなる。

 下手をすれば熱中症になりかねないと、たっぷり水分補給するがペースは落ちるばかり。都会では連日35度を記録するような盛夏に標高の低い山を歩くのは自虐志向が強いか、余程の物好きなのだろう。「山の日」にも関わらず、この日出会ったのは縦走路で3人だけ。沢で見かけた生き物は無数のカエルだけでやはり人影を見ることはなかった。午後4時40分、すっかり暑さにやられヘロヘロになりながら駐車場に帰着した。炎天下、70歳過ぎの老骨に沢のダブルヘッダーは決して楽ではなかったが、終えてみれば達成感も一入。良い一日となった。


行動時間  11時間55分


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