至仏山BC  群馬県 2228m   百名山    
   

2012418

 冬季閉鎖の鳩待峠への道路が開通するのは427日。5月の連休後は環境保護のため入山禁止になってしまうので、10日間ほどの限られた期間に登山者やスキーヤーが大挙して押しかけるのだそうだ。静かな尾瀬を楽しもうとすれば、タイミング的には道路開通前の今しかない。そうなると問題は戸倉からの長いアプローチ。今回初めての試みとして自転車を活用してみることにした。もとよりMTBのようなしゃれたものは持ち合わせていないので、誰も使わず自宅に放置状態のママチャリ号を現役復帰させた。念のためブレーキとタイヤの点検だけはしておく。途中の津奈木橋から直接尾根筋をハイクアップすることで、道路歩きを更に短縮できるはずだ。

 長い行程を考慮して、いつもより早目に自宅を出発、午前
5時過ぎには戸倉温泉に到着。第二マイカー専用駐車場を過ぎて、さらに鳩待峠へと上って行くと尾瀬戸倉スキー場との分岐にゲートがあった。ここから先、一般車は通行できないようになっている。ゲートの手前に適当な駐車スペースがあったので、そこに車をとめた。

 いつものように朝食、身支度を整え5時50分、我がママチャリ号の初陣だ。買い物かごに兼用靴を積み込み、スキー板を背負ってスタート。
ゲートからは楽ちんの下りだ。数百メートルで下りきると、一転してそこからは心臓バクバクの上り坂がずっと続く。朝一番からいきなりの重労働で息切れが甚だしい。しばらく頑張ったが、歩くのと大差ないスピードまでスローダウン、結局押して歩く羽目になった。


             ママチャリ号の雄姿                           こんな格好でよろよろと


 その後も漕いだり押したりを繰り返しながら、
1時間ほどで津奈木橋に到着。自転車は小屋脇の除雪スペースにデポさせてもらった。兼用靴を履いて、ここからいよいよハイクアップ開始。空を見上げれば、申し分ない快晴。前回紅葉時期に訪れた際は、生憎の雨とガスだったのでリベンジできそうだ。


            次第に雪が深くなってきた                          津奈木の分岐



            小屋脇に自転車をデポ                電柱沿いに鳩待峠へ向かうと思われるトレースがあった


 道路の周囲は除雪で出来た高い壁ばかり。鳩待峠への道を少し登ったヘアピンカーブの辺りで、雪壁の一部が崩れていたのでそこをよじ登った。ここから取り付く尾根は
1867mピークへの最短コースだ。


           ここから尾根に取り付いた                         しばらくは疎林の斜面


 最初のうちは勾配も緩くて気持ちの良い林間コース、次第に急な登りになるが、ザラメにシールが良く利いてくれる。左手方向にはとんがり帽子が印象的な笠ヶ岳、右前方には
燧ヶ岳の双耳峰、後を振り返れば男性的な白根山がそれぞれ独自の個性で存在感をアピールしている。


         次第に傾斜がきつくなるが、                       笠ヶ岳の素晴らしい展望が待っていた



              どっしりした白根山                            小至仏山も姿を現した



燧ヶ岳、その左奥には会津駒ケ岳


 それにしても雪面の照り返しが凄まじく暑くてかなわない。ポタポタと汗が滴って眼鏡が水滴だらけになる。急斜面をジグザグに登り切って
1867mピークに到着。鳩待峠方面から、昨日かそれ以前のものと思われるスノーシューの跡があった。

 ぐんぐんと展望が開けてきた気持ちの良い稜線を、細かなアップダウンを繰り返しながら標高を上げて行く。正面には小至仏山が迫ってきた。当初、小至仏山はパスして東面の山腹をトラバースし、至仏山に直接登り上げるつもりだったが、小至仏山の山頂直下に落ちかけた雪のブロックがあるのを見て気が変わった。万一のことを考えて稜線沿いにルートを変更、小至仏山の山頂に向かう。


小至仏山へと向かう


 小至仏山からは、一旦ヒールを固定してシール装着のまま鞍部へと滑り降りた。そこから僅かな登りで
11時ちょうどに至仏山の山頂に立つ。天気は最高だし、風も穏やか。それに誰もいない山頂で大展望を一人占めさせてもらう。平ヶ岳、巻機山、谷川岳、武尊岳、燧ヶ岳の左奥には会津駒ケ岳などなど、大パノラマは見あきることがない。しかし予報によれば午後から天気は下り坂なので、あまり長居はできない。立ち去り難い思いを断ち切り、手早くランチを済ませて滑降の準備に入る。


              小至仏山山頂                                至仏山まで後僅か



           ワル沢の広大なスロープ                                山頂



越後三山と平ヶ岳



尾瀬と燧ヶ岳



中央は巻機山か


 いよいよお楽しみタイム。目の前に広がるワル沢の広大なバーンに滑り込んだ。以前のシュプールが消えておらずノートラックとは言えないものの、私以外、誰一人いない完全なプライベートゲレンデ。ザラメの気持ちよい斜面を楽しみながら、
700mの高度差を一気に滑り降りた。


              ワル沢の上部                               ワル沢の下部                


 下るにつれて重い雪に変わり、ターンがひっかかる。両足の板が外れる派手な転倒を
2回もやってしまった。最後は緩やかなツリーランでワル沢とオヤマ沢の分岐辺りに出た。ここで再びシールを装着し、鳩待峠に向けて100mの登り返し。無限軌道のトレールの上を歩く。峠の休憩所前の広場には除雪作業中の方が大勢いた。これまで人っ子一人いなかった静けさが嘘のようだ。


              樹林帯へ突入                             ワル沢とオヤマ沢分岐近く



至仏山よ、有難う、さようなら


               鳩待峠休憩所                          除雪作業は急ピッチで進んでいた


 鳩待峠からは、津奈木沢を下ることにした。たっぷり雪があったのは最初だけ。次第に沢は狭くなり、灌木も煩くなってきた。雪が途切れて水流が出てくるようになったところでギブアップ。折り良く交差した道路を歩くことにした。ところが道路周辺の雪壁が高くて降りるのに一苦労。幸いガードレールの一部が顔を出していたので、そこを足がかりに道に降り立った。


             津奈木沢を下る                            ここから道路へ降りた


 ここからはスキーを担いでの林道歩き。足首がやや自由な兼用靴とは言え、舗装道路をてくてく歩くのは辛かった。ようやく帰り着いた津奈木橋でママチャリを回収。戸倉に向けて楽しいサイクリングの開始だ。ブレーキをかけ続けても、下りは素晴らしく早かった。スキーと同様、重力を運動エネルギーに転換できる道具はものすごく快適だ。往路
1時間かけた道程を20分足らずでゲートに帰着。新たな道具の可能性も知って、どうやらますます山スキーにのめり込んでしまいそうだ。

行動時間  7時間45 

 

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