3033m 長野・山梨県 | |
私の山歩きの楽しみの一つは未踏の縦走路繋ぎ。若い人達のように重荷を背負い、まとめて一筆書きという訳にはいかないが、小刻みに踏破することで楽しみは長く味わえる。 南アルプスで残された未踏の縦走路は、北部が仙丈ケ岳と三峰岳間の所謂、仙塩尾根、中部が小河内岳と荒川三山の前岳間、南部が易老岳と茶臼岳間の三区間。今回は台風襲来の狭間の好天を利用して、北部のミッシングリンク、仙塩尾根を歩くことにした。 2018年8月5日(日) 起点とするのは標高が2030mと高くて多少なりともパワーセーブできる北沢峠。伊奈、甲府のどちらからでもアクセスが可能。後者は広河原での乗り継ぎのロスタイムがあり、北沢峠到着が遅くなる難点はあるものの、自宅から近いので迷うことなくこちらを選んだ。 来てみれば夏山最盛期とあって幸運にも臨時便がフライングスタート。午前6時40分には長衛荘前に到着し、その5分後には歩き出すことができた。
仙丈ケ岳は比較的簡単に登ることのできる3000m級の山。しかも日本百名山、花の百名山など、いくつものナントカ名山に重複選定されている人気の山だけに驚くほど登山客が多い。今回も出発から山頂に至るまで前後に人の姿が絶えることは無かった。 登山道は良く手入れされており歩き易く、樹林限界を過ぎれば甲斐駒ヶ岳や北岳の大パノラマを目にすることが出来る。8月に入り花は今一つだったが、至る所に群生している、涼し気な青い花が暑さを和らげてくれた。形状からしてチシマギキョウだろうか。
2時間55分で仙丈ケ岳山頂に到着。実に9年ぶりの頂だ。山頂は大勢のハイカーで大賑わい。押し出されるように早々に山頂を辞し、大仙丈ヶ岳への縦走路を少し下ったところで仙塩尾根を眺めながらのランチタイムとした。 人の列が途切れることの無かったこれまでの登山道とは対照的に見る限り縦走路にハイカーの姿はない。何たる落差。仙塩尾根に踏み込むハイカーは千人に一人もいないのではなかろうか。
先の行程は長いので食後すぐに行動再開。仙塩尾根上には大仙丈ケ岳を初め、いくつかのピークがあるものの大体が下り基調だ。これなら両俣小屋まで楽勝のはず、、、はとんだ誤算だった。思いもしなかった厄介なハザードが待ち受けていたのだ。
暑さと限りなく続くアップダウンがボディーブローとなって効き始めた頃、ようやく樹林帯へと入った。苔やシダ類の下草が美しい樹林帯は良く出来た日本庭園のようだ。うだるような暑さからも逃れることができ、ルンルン気分で朽ち果てた標識が残る伊那荒倉岳を通過する。
後で考えるとこの辺りが極楽から地獄への境界線だったようだ。登山道の状況は一変し倒木でズタズタ状態。風になぎ倒されたシラビソが幾重にも登山道に覆い重なっている。それが一か所や二か所どころではない。迂回するにも別の倒木を越えなければならない。まるで連続する天然のジャングルジムだ。やっと倒木を越えてもその先に登山道は見当たらず行ったり来たりを強いられた。
独標が近くなるにつれようやくこの倒木地獄を脱することができた。途中で私よりかなり高齢の3人パーティに追いついが、跨いだりくぐったりの倒木アスレチックにはかなり苦戦されているようだった。両俣小屋との分岐には大きなザックを脇に置きぐったりした様子の若者が休憩中。やはり倒木地獄にやられて精根尽き果てた由。 後で両俣小屋のスタッフに聞くと、倒木帯は先日の逆走台風12号の置き土産とか。被害直後で登山道整備はまだ手付かずらしい。原状回復はとても無理と思われるので新たについた踏み跡が自然と道になっていくのかも知れない。
分岐点から両俣小屋への道は翌日の登り返し意欲が萎えそうになる激下り。野呂川源流の沢音が大きくなったところで本日のネグラ、両俣小屋に到着した。時刻は2時50分。
チェックインの際、小屋のスタッフに先ほどの高齢3人組のこと伝えておいた。結局彼等は、そろそろ皆が心配しだした5時近くなってヨレヨレ状態で到着。夕食時、隣り合ったこの方々とお話すると、何と皆さん御年81歳、学生時代からの山仲間とのこと。今日の想定外のハードワークで力尽きたため、翌日の縦走計画は断念し、北沢橋まで下ってバスを摑まえることにした由だ。 私も古希を迎えた身。色々とお話を伺いながら、彼等に見習いまだまだ山は続けられそうという思いと、その一方で皆さんの倒木現場での苦闘を見ていたので、遠からず私も限界という思いが交錯し複雑な心境だった。。。 行動時間 8時間10分 二日目へ |