2014年2月7日(金)
南岸低気圧が接近しつつあるなか、つかの間の好天を狙って乗鞍岳へ。いつものように午前8時半のリフトの運転開始時間に合わせて深夜に自宅を出発、Mt.乗鞍スキー場のやまぼうしリフト前の駐車場に車をとめた。
予報通りで天気は申し分ないのだが、去年と比較すると雪がかなり少ないようだ。しかも最後に降ったのはいつかと思うような手垢の付いた雪。ここ数日暖かい日が続いたこともあり、悪い予感がする。。。
8時半、動き出したリフト3本を乗り継いでゲレンデ最上部へと移動。ビステンの入っていない雪面に踏み込むと、クラストした表面が割れて踵まで埋まる。予感的中、久しぶりに見る見事に出来上がったモナカ雪だ。おまけにツアーコースに刻まれたシュプールやトレースは、その部分だけカチカチのアイスバーン状態といった塩梅。
今日はスキーにならないなと覚悟して歩き出す。しょっぱなの急壁を何とかやり過ごし、緩やかになったコースをバリッ、ズボッとモナカの皮を破りながらハイクアップしていく。
モナカだらけでがっくりだが、、、 せっかくやって来たのでハイクアップ
雪質はともかく天気は最高
最初からクトーを装着して引きずっていたせいか、はたまた悪雪に気圧されたせいか、足取りが重く今一つペースが上がらない。皮肉なことに真冬にしては稀に見る穏やかな天気、見上げる剣ヶ峰の頂きには雪煙一つ舞っていない。願ってもないアタック日和だが、さてどうするか。昨冬初登頂しているので、モチベーションも今一つ背中を押してくれない。取り敢えず肩の小屋まで行って決めようと結論を先延ばしする。
位ヶ原山荘への分岐 昨冬の同じところ(積雪量が段違い)
位ヶ原への急坂を登りきると眼前に大雪原が広がった。今回で4度目になる積雪期の乗鞍岳だが、何度見てもこの非日常的な景色にはいたく感動させられる。ただ昨年よりもブッシュの露出が多いようだ。やはり今年は少雪なのかなと思う。
位ヶ原への登り 肩の小屋口
肩の小屋へ向かって歩き出すと、モナカの次に待っていたのは、アイスバーンと大きく成長した一面のシュカブラだ。こうした障害物を避けつつ、乗り越えつつ肩の口小屋まで歩いて一休み。行動食のアンパンを口に入れると、すっかり凍っていてジャリジャリと砂を噛むようだった。
食後再び試練のハイクアップを継続。肩の小屋へ近づくとシュカブラは益々大きく波打っていて、正に波を乗り越えていくといった感じ。ちょうど3時間かかって肩の小屋に着いた。
斜面はシュカブラだらけでスキーになりそうにない
シュカブラを越えて進む
先送りした山頂アタックの是非だが、我ながら軟弱と思うも結論は「回れ右」。剣ヶ峰から眺める大展望に未練はあるものの、下山のスキーで大苦戦が予想されるので体力を温存することにした。それでも、せめて西側の景色を一目と思い、肩の小屋のさらに奥にある宇宙線研究所へと向かう。室堂ヶ原には平凡な雪原が広がるだけでちょっとがっかり。ここを折り返し地点にすることにして、建物の一角で風を避けつつ滑降の支度をする。
肩の小屋 氷漬けの宇宙線研究所
氷の要塞? コロナ観測所
12時30分、お楽しみとは到底言えない試練の滑降開始。ガリガリと横滑りでアイスバーンやシュカブラをやり過ごし、ほんの少しだけある吹き溜りで何とかターンをつなげて肩の口小屋へと滑り降りた。
途中息継ぎをしながら下方を眺めると後続が3人いる。一人は夏道を富士見岳方面に向かい、もう二人は位ヶ原を行軍中だった。この日入山したモノ好きは、私を含め4人ということだ。
ここから試練の下り
下るにつれて悪雪レベルが増してきた。私の足前でも何とか板をコントロール出来ていたのは最初のうちだけ。位ヶ原を少し下った標高2000mを切る辺りからの雪質はまったく手に負えず、完全に操縦不能に陥ってしまった。
まるで鉄道の線路に嵌ったようなものだ。真っ直ぐ進むことは出来てもエッジングは到底不可能。ジャンプターンまがいで何とかスキーを回そうとしても、固くクラストした雪面の下に捕まった板はそう簡単には脱出させてくれない。自分でもどうなっているかわからないうちに、いとも簡単に転けてしまう。少し急な斜面は斜滑降+キックターンで恐る恐る下りる始末。
昨冬30分足らずで滑り降りた同じコースを1時間近く要して、あちこちに大穴を開けつつ、ヨレヨレになってスキー場へ無事帰り着いた。転けまくっても怪我一つしなかったのは何よりだった。駐車場へと戻る圧雪された斜面の何と心地よいことか。今日は山スキーの難しさを嫌と言うほど再認識させれられた苦行、修行の一日でした。
行動時間 4時間15分
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