鋸山    1998m 栃木・群馬県        
      


2019年6月6日(木)

 この日は梅雨入りを目前に控えて貴重な晴れの予報。この時期はお花見に限ると、地図を眺めながら色々物色していると、庚申山が目に留まった。この山域は天然記念物の絶滅危惧種コウシンソウの自生地だそうな。しかも自宅から200Km圏内とアクセスも申し分ない。

 生来、人の名前を覚えるのも一苦労する質なので、高山植物の名前は何度聞いても、左から右へと頭の中を素通りしてしまう。しかし準絶滅危惧種のキタダケソウも然り、ずばり山名を冠した花名は忘れようがない。そんなコウシンソウを求めて庚申山に向かうことにした。ついでに体力つくりがてら、破線ルートを辿って鋸山まで足を伸ばすつもり。

 9年前、皇海山の百名山ハントの余勢を駆ってこの山のピークを踏んでいるが、急峻な鎖場続きでえらく険しい山だった。前回は群馬県側から登ったこの山に、今度は栃木県側からアプローチすることになる。

 夜明けとともに銀山平に到着。広い登山者用駐車場に他の車は見当たらず、どうやら私が一番乗り。4時40分、軽く朝飯を済ませ愛用のバイクに跨りペダルを漕ぎ始める。しかし快適だったのは最初のうちだけ。舗装が途切れると石が散乱する悪路となる。25cの細タイヤを履いた私のバイクでは太刀打ちできない区間は我慢の押し歩き。それでも無理無理何とか漕ぎ進み、登山口となる一の鳥居に着いた。


登山者用駐車場を後にする



参道歩きスタート


 鳥居の前で安全登山祈願をして入山。沢沿いの良く整備された道を緩やかに登って行く。6時25分、最初のマイルストーン、庚申山荘に到着。そそり立つ岸壁を背景にこれ以上無いと言って良い素晴らしいロケーションに建つ立派なログハウスだ。


新緑の散歩道



庚申山荘


 お山めぐりコースはパスして庚申山をまっしぐらに目指す。これまでの参道のお散歩路とは様相が一変し、梯子交じりの岩場の急登が連続するようになった。この辺りでお目当てのコウシンソウに遭遇するのではと期待していたのだが、残念ながらその可憐な姿を目にすることはかなわなかった。後で山スキーの相棒Kさんにその話をすると、知る人ぞ知る群生地があるのだそうな。


これまでとは打って変わり険しい登山道だが、、、



癒しもある コウシンユキワリソウ




 それでも稜線に登り上げると、そこは石楠花のオンパレード、ピンクの花がそこかしこに咲き乱れていて、コウシンソウの無念を癒してくれた。


ようやく尾根に



石楠花がお出迎え


 7時40分、庚申山に到着。山頂の少し先に皇海山を望む絶好の展望台があった。ここから眺める皇海山はその名前に恥じない凛々しい姿をしている。前回登った際は展望の無い山頂に失望しただけの皇海山だが、深田久弥氏が百名山の一つに加えた理由が初めて理解できる気がした。



少し雲がかかった皇海山


 さらに先へと進むと、稜線上にはいくつものピークが連続する。アップダウンが激しく疲れるが、そうした労苦を相殺してくれる花々と眺望があるのが救いだ。


いくつもピークを越えていく



西丹沢で不発だったシロヤシオがここでは満開



堂々たる皇海山


 しかし、石楠花やシロヤシオを鑑賞しながらのお気楽ハイキングはいつまでも続けさせてはもらえなかった。鋸山へ近くなる程に小ピークの登下降は険しさを増し、鎖やロープ頼りとなってきた。特に最後の急登はまるで垂直の壁、高度感満点でかなり緊張させられた。


鎖場が連続する



鋸山直下の急登



急峻な岩場にコイワイカガミがひっそりと



アスレチックが続く


 鋸山到着は9時35分。出発からここまで5時間。余裕があれば皇海山をピストンするつもりだったが、不動沢のコルまでの急下降を思い出して俄かに戦意喪失。当初の計画通り、ここで回れ右することにした。


ようやく山頂に到着



庚申山を振り返る



日光の山々



六林班峠方面



山頂周辺の石楠花






 余談ながら皇海山は江戸時代に流行った民俗信仰、庚申講の奥の院、庚申山はその前山という位置付けだったらしい。信仰熱き人々は固定ロープや鎖に頼ることも無く、あの険しい鋸山をどう乗り越え皇海山に参拝していたのだろうか。

 さて帰路をどうするか。往路をそのままトラックバックするのは、花や展望は良いが新味が無い。折角の機会なので余り評判は芳しくないのを承知で、六林班峠経由で下山することした。

 最初のうちは、笹に覆われた気持ちの良い尾根道。しかし下る程に繁茂する笹が登山道を覆い、踏み跡を探すのも一苦労となってきた。そのうち完全に道をロスト。時には背丈を越える猛々しい笹の藪漕ぎを強いられるようになった。踏み跡らしきものが出てきてもすぐにまたロスト。そんなことを繰り返しながら笹のジャングルをかき分けて行く。


最初は気持ちの良い尾根道だが、、、



こうなって道をロスト



振り返ってもどこを歩いてきたか分からない


 山頂から一時間かけ、笹との格闘も一段落。ようやく六林班峠にたどり着いた。しかしここからも試練は続く。山腹をトラバースする道は、右下がりの片流れの斜面が延々と続く。どうしても右足下がりの不自然な姿勢を取らされ、これが地味に足に堪えるのだ。しかも、樹林の中、余り展望も無いうんざりする程単調な道。救いはシロヤシオの群生と新緑の美しさ。これで何とかメンタルのバランスを取りながらの2時間半。やっとのことで庚申山荘に舞い戻った。


六林班峠にやっと着いた



こうした小沢をいくつも越えていく



癒しはお花と、



目に染みる新緑



シロヤシオの群生もあった


 その後は境内の散歩道。登ってくるハイカー数人と挨拶を交わしながらのんびり下山を続けた。一の鳥居で再びバイクに跨る。しかし銀山平まで一目散、、、という訳にはいかず、ハンドルをしっかり握りしめ砂利道と格闘。舗装区間になってようやく自転車の機動力を発揮できるようになった。


ヤマツツジに見送られ、、、


 午後2時50分、駐車場に無事帰着、見頃のお花見とちょっとスリリングなアスレチックなど、それなりに充実した良き一日だった。


行動時間  10時間10分


 二日後に同じ山を歩いたKさんから頂いたコウシンソウの写真


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