皇海山  栃木・群馬県 2144m    百名山
  


2010926

 週に引き続いて今週も人気ランキングで評価の芳しくない百名山巡りをすることにした。今週の目的地は名前がなんとも素敵な皇海山だ。午前2時に自宅を出発、関越の沼田ICから県道62号線を進む。前日に利根町振興局に問い合わせたところ栗原川林道の二つある入り口のうち、追貝は通行止めとのことで、もう一つの根利から入ることになった。根利は62号線が257号線に分岐しているすぐのところにある。真っ暗な夜道であったが、皇海山入り口との案内があったので迷わず林道に進入することができた。舗装はすぐに切れてダート道になる。しばらく走ると閉ざされたゲートが現れギョッとするが、野生動物の侵入防止用とのこと、車を降りてゲートの開け閉めを行う。道路以外はフリーパスなので意味があるのかちょっと理解に苦しむ。次第に夜が明けて視界は良くなったが、聞きしに勝る悪路だ。急ぎたくてもスピードは上がらない。腹を擦り、水溜りに突っ込みながら、およそ50分をかけて登山口に到着した。既に何台もの先客がいて身支度を始めていた。



     林道のゲート(下山時撮影)        栗原林道についてのウンチク


 私もすぐに支度をして6時きっかりに出発した。しばらく林道を歩いた先に皇海山への登山道表示がある。緩やかな登りの林間を進んでいくと道は沢を渡渉するようになる。登山路はこの不動沢を詰めるように付けられているようだ。何度か流れを渡り返しながら高度を上げていく。小滝やナメ滝があったりしてスケールは小さいながらも、いかにも沢コースらしくて楽しい。水の流れが消えるころになると傾斜が格段に増してくる。沢コースはいつもそうであるように最後の詰めの登りがきついのだ。ここで休憩していた一人のハイカーに追いついた。お先に失礼させてもらい、木の根っ子とロープに助けられながら胸を突く急斜面を登りきると皇海山と鋸山の鞍部に出た。ここから見上げる鋸山の急峻さは圧巻だ。鋸岳は後回しにするとして、ノンストップで左手の皇海山方面へと進む。しばらく熊笹のなかを歩くが、朝露でびっしょり濡れている上、登山道にかぶっているので、すぐに太腿から下がびしょ濡れになってしまった。笹が終わると苔むした石と古木の世界になる。眺望はないが、日本庭園を散策するような趣がある。頂上には745分に到着した。



               登山口                                 沢沿いを登る




      沢の最後の詰めはロープにつかまってよじ登る                  やっと稜線へ出た




皇海山山頂は樹林のなかで展望なし



 
先客は誰もおらず独り占めだ。しかし展望は今ひとつだ。木々の間から北西方向(武尊山方面か?)が辛うじて拝めるだけ。今日はゆっくりする時間はあるものの、眺めを楽しめないのでは長居をする気になれない。お弁当のお握りを食べてすぐに下山を開始した。しばらく下っていくと、この頃になってようやくぞろぞろとハイカーが登って来た。小型バスでやって来た20名くらいの団体さんもいる。百名山行脚をしているとこうした風景によくお目にかかるが、専門の旅行社でもあるのだろうか?再び分岐まで下りた後、今度は鋸山に向かった。しばらく下り加減の道を行くが、笹の繁茂が皇海山以上にものすごい。地面が全く見えない状態で、木の根っ子や段差、果ては倒木まで隠れているので下手をすれば大転倒してしまいそうだ。盲人さながら杖ならぬストックで先を確認しながら進む。

 やがて正面に鋸山が間近に見えてきた。急峻でいったいどう登るのか見当がつかない程だ。最後は殆ど垂直に近いと感じられるような岩場をロープ頼りに登って行きようやく山頂に立つ事ができた。見た目通りに山頂は狭い。ここには庚申山から登ってきたハイカーが一人休憩していた。急な下り道を見て嫌気がさしたらしく皇海山への往復は諦める由、そのまま引き返していった。再び山頂を独占する。今度は素晴らしい大展望だ。ここから眺める皇海山は深い樹林に覆われた平凡な山だ。そのすぐ右隣に見えるのは日光白根山、右方向には男体山も見える。皇海山の左側に見えるのは武尊山だろう。南方向には赤城山やはるか彼方に富士山の秀麗な姿も見える。皇海山で溜まったフラストレーションが、鋸山に来てすっかり解消することが出来た。鋸山は絶対にお勧めの山だ。皇海山だけではもったいない。

 山頂の景色を十分に堪能してから下山を開始した。多くの登山者とすれ違いながら来た道をのんびり下り、車には
1030分に戻ってきた。4時間半ほどのハイキングで、もの足りないが、その分帰りの林道で神経を使うのでよしとしよう。事実、この後悪路をものともせず飛ばしてくるモトクロスライダーには何度も肝を冷やすことになる。



鋸山の急峻なピーク




       ロープを頼りに登降(高度感が見えず残念)                ピークまでもう一息



                鋸山山頂                         皇海山は遠目にも今ひとつ




庚申山方面を望む




皇海山の右手には日光白根山が見える




 帰路、深田久弥氏がなぜ皇海山を百名山に選んだのかを考えてみた。おそらく今回のように群馬側からお手軽な登山口が昔からあって簡単に登れる皇海山であったならば、選に漏れたのではないか。栃木側からアップダウンの激しい峰々や文字通り鋸のような険しい鋸岳を越えてこの地域の最高峰である皇海山にやっと行き着くと、やさしく包み込んでくれるような日本庭園が待ち構えている。この過程を共有しないといけないようだ。やはり銀山平から庚申山、鋸山を経由して大汗をかかないと深田氏の境地には至れないとの印象を強く持ったが、この解釈は間違っているだろうか。



行動時間              4時間30
歩行時間              4時間
標準CT                 6時間40

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