1850m 新潟・山形県 | |||||||||||||||
2018年6月2日(土) 先日の富士山をもってシーズンアウト宣言をしたつもりだったのだが、やはり納豆と山スキーは後を引いてしまうものらしい。Kさんからのお誘いにまんまと乗せられてしまい、飯豊の門内沢に向かうことになったからだ。前の週にも飯豊を訪れたKさん曰く、今年は雪面の状態が良好、飯豊温泉のゲートオープンが予定されているので飯豊山荘まで車で入ることが出来る云々と美味しそうな話ばかり聞かされればNoとはとても言えない。 自宅からスタート地点の飯豊山荘までは400Kmを越える。午前5時の集合時間に間に合わせるため、夕食後短時間の仮眠をとって日付が変わる前に自宅を後にした。 この日から飯豊山荘まで車が通行できるようになったためか、山荘近くの駐車場には既に多くの車が先着していた。もう一人同行する先日火打北面でご一緒したSさんの車も私より少し遅れて到着。KさんとSさんは、ここから登山口となる堰堤まで機動力のあるMTBで向かう。私の愛車は23Cのロード用タイヤを付けたクロスバイク。悪路は苦手なので行けるところまで行ってデポするつもり。
5時15分、板とブーツでずっしり肩に食い込むザックを背負い、バイクに跨り飯豊山荘を後にする。温身平まで15分ほど。その先は鋭角な石がゴロゴロしてきたので無理せず林道脇にデポした。堰堤からはブナの新緑を愛でながら梅花皮沢沿いをハイクアップする。
5年前の5月にここを訪れた際は残雪豊富で何度もミスルートした記憶があるが、今年は完全に夏道が露出している。前回崩れやすい足元と板に絡みつく枝に大苦戦したへつりの難所は、枝が払われ、おまけにロープまでかけられており難なく通過。帰途この辺りでとんだハプニングが私に起きるとは予想だにしなかった。
2時間ほどシートラを続け、標高700mを越えた辺りからようやく雪渓がつながった。ここからシール登行。履いてきた軽登山靴は岩の上にデポしておく。この辺り雪渓の末端は雨溝と落石が多く、余り快適な滑降は望めそうにない。雪渓の崩壊箇所はゴーゴーと流れが渦巻く巨大マンホールと化しており要注意だ。
雪渓上には多くの登山者やスキーヤーが遠望され、まるで砂糖に群がる蟻のよう。その殆どが向かう先は石転び沢だ。門内沢に目をやると、単独スキーヤーと数名の登山者パーティだけといたって静かなもの。
高度と共に勾配がきつくなってきたのでジグザグに登る。標高1500mでブーツアイゼンに換装。稜線が近づくにつれ勾配は一層増して来る。40度はあろうかという斜度の登りは忍の字の一言だ。
余談ながら、沢登りは山頂に向かってどんどん勾配がきつくなる指数関数。一方尾根登りは、最後は斜度が穏やかに緩む正規分布といつも感じるのだが的外れだろうか。 稜線上の雪渓最上部にスキーをデポし、門内岳の頂を踏みに行く。11時20分山頂到着。門内小屋の方から数名のハイカーがやってくる。彼等は梶川尾根を登ってきたのだろうか。
スキーのデポ地点に戻り愈々滑降のスタートだ。かなりの斜度はあるものの、広々しているのでルンゼ滑降のような威圧感は無い。例によってKさんが先陣を切って滑り降りた。続いて私。縦溝にスキーの先端が嵌ったりすれば、黒部五郎カールの二の舞になってしまう。絶対にコケないよう慎重に滑り降りた。殿のSさんはダイナミックなテレマークで続く。
中間部は落ち着いた雪面で今度こそ今シーズン最後となる滑りを楽しむことが出来た。下部は地雷を踏まないよう辛抱の滑りとなるが、それでもこれが今シーズン最後と思うと名残惜しい。
再び登山靴のデポ地点まで戻って標高差1100mのお楽しみタイム終了。Kさんは山菜取りのため先行。Sさんはゆっくり腹ごしらえとのことで、私は板とブーツを背にマイペースで下山する。途中で山菜満載のポリ袋を手にしたKさんに追いついた。 この後、最初のへつり箇所が冒頭のハプニング現場となる。何気なく置いた私の右足の足元が崩れバランスを崩したのだ。おそらくスキーとブーツでトップヘビーとなっていたせいだろう。不自然に体が振られ右半身から横転して崖に転落してしまった。 とっさに掴んだ植物(Kさんによればスカンポというらしい)の茎で何とか落下は免れたものの、バックパックがずり落ちそうで一人ではどうにも身動きが取れない。私の身代わりになってもらい荷物を崖下に落として後で回収に向かう選択肢も頭をよぎる。しかしKさんが身の危険も顧みず、私に近寄り、追いついてきたSさんと協力して板とバックパックを引き上げてくれた。お陰様で荷物ともども無事生還。
山スキーはスキーを脱いだ後でも最後まで気を抜いてはいけないのだ。その後は足運びをより慎重にし、堰堤に帰着。バイクをピックアップし午後3時に飯豊山荘に無事帰着した。
今回の出来事を通して山の遭難事故の多くが高齢者という事実を身をもって理解することができた。山の初心者でもしないような初歩的はミス。山を歩けばどこにでもあるようなシチュエーションであわや転落というお粗末さ。どうしてこんなイージーな所で遭難するの?ということが実際に起きるのだ。 ジム通いでいくら心肺機能や筋力を鍛えても、それをコントロールする反射神経や運動神経の方が加齢により劣化してはどうにもならない。最近評判の運動神経を刺激する「くねくね体操」にでも本気で取り組み、もう少しあがいてみようか。それとも今回の顛末は、そろそろ山スキーから足を洗いなさいという天のお告げだったのだと受け止め、素直に従うべきなのだろうか。。。 行動時間 9時間50分 使用Gear Dynafit Cho Oyu /Scarpa F1 Evo |