富山・岐阜県 2840m | |
2010年7月18日
7月の3連休を活用して北アルプスの最深部、黒部川源流域の百名山3座を周遊することにした。梅雨末期の豪雨が日本各地に被害をもたらしている最中でもあり、悪天候を一番懸念していたが、日頃の善行?の賜物かタイミングよく梅雨明けと重なり、素晴らしい山歩きを楽しむことが出来た。 登山口まで車でアプローチすることを前提に色々と検討してみた。地図と睨めっこし、ネットの情報をフルに活用して得た結論は、飛越トンネルから北ノ俣岳を経由して黒部五郎岳にアクセスするのがベストということ。多くの方が折立を足場にしているが、首都圏からだとかなり遠いし、今シーズンは小見線が閉鎖されていること、さらにゲートは午前6時にならないと開かない等々条件が悪すぎる。飛越新道は、黒部五郎岳への最短コースであることも魅力だ。 出発日は連休を一日外した18日と決めた。夕食後に仮眠をとった後、東京の自宅を午前零時に出発、中央道松本ICから国道471号、さらに大規模林道へと進む。この林道は信じがたい程立派な対抗一車線ずつの道である。快適に利用させてもらいながら文句を言う筋合いではないが、この山深い地にこれほどのインフラが必要なのかという率直な疑問が浮かぶ。飛越トンネル前の駐車場には午前4時半頃に到着。既に約20台がとまっていたが、多くの車には人の気配は無い。おそらく連休初日からの登山組であろう。
飛越新道は泥濘が酷い道と聞いていたので、膝下までのスパッツでしっかり足回りを固めた。出発は5時過ぎ、トンネルの左手に付けられた登山口から登り始める。しばらくは急斜面だが、すぐに緩やかな登りとなる。送電線近くでカラフルなトレランウエアの御仁が足取りも軽く追いついてきたので道を譲る。道はアップダウンを繰り返しながら徐々に高度を上げていく。くま洞の標示を過ぎた頃から泥濘との格闘が始まった。まともに足を踏み込むと踝までズブズブとはまり込んでしまう。植生保護のためには、多少の泥濘は我慢しなければならないと思うが、ここはその限度を越えている。足は少しでも沈まないところ、すなわち植生との際を辿るようになってくる。踏めば踏んだだけ緑が後退することは頭ではわかっているのだが足が言うことをきかない。やはり木道にするしか手はないのかも知れない。
神岡新道との分岐から寺地山の間で何人かの登山者に追いついた。そのうちの一人、メタボ体型の方が早くもバテ始めているようだ。脂肪分は不要な重荷になるし、荷物とは違って血が通っているので酸素を供給しなければならず、二重に心肺能力を圧迫するという理屈だろうか。かく言う自分も少なくとも標準体重を軽く7kgはオーバーしているので他人のことはとやかく言えないが。対照的に避難小屋への分岐近くで追いついた中高年のご夫妻はスリムでいかにも山慣れした軽やかな足取りあった。この方々とは同じコースだったのであちこちで再会することにる。
しばらく休憩した後、稜線を下る。これが思っていた以上に大変なコースだった。高度感のある痩せ尾根で岩場の上り下りの連続である。岩場の後は残雪である。夏道が隠れているので気をつけていないとルートを見失ってしまう。所々にルート標示の木片が落としてあるのでこのガイドに沿って下る。黒部五郎岳小舎への最後の下りは沢沿いで浅い流れのなかを進むことになる。岩、雪、水の三拍子の尾根下りだ。今日一日の長い行程で流石に足取りが重くなり、脳裏に「ビール」の3文字が点滅するようになった頃、ようやく小屋が見えてきた。本日の行動時間は8時間52分、宿泊手続きを終えた後は、まずは缶ビールを一気飲み、生ビールがあることに気がついてこれも追加し、やっと人心地がついた。この日はそれほど宿泊客がおらず、十分なスペースを確保してゆったりと過ごすことが出来た。
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