蝙蝠岳  塩見岳  2865m静岡県、3052m長野・静岡県       
 

2016年8月30日(火)

 初夏から体調不良が続いて見合わせていた南アルプス日本百高山ハントの旅。まだ体調十分とは言い難いが、おそらくは今夏最後のチャンスになるだろう台風一過の晴天を逃す手はない。心を過る不安を振り切って出かけることにした。

 折しも台風10号が関東に最も接近している時間帯に自宅を出発。まだ雨風の残る中、静岡駅から9時50分発のバス、静鉄ジャストラインへと乗り継ぎ、一路畑薙ダムへと向かう。実はこの南アルプス登山線は8月末日までの季節運行。広河原を目指すため、マイカーの使えない私にとっては、ぎりぎり滑り込みセーフといった感じだ。

 狭い山道を延々と揺られ、さらにタイヤパンクのおまけまでついて、午後1時過ぎに畑薙の臨時駐車場に着いた。幸い、降り続いていた雨も上がり薄日が差し始めている。


      前輪がパンク 下手すれば崖から転落、、、            頼み込んでOKしてもらったマイクロバスに乗り換え


 ここから東海フォレストの送迎バスに乗り換え、大井川の源流を延々と遡り、二軒小屋ロッヂに着いた時には4時を回っていた。丸一日かけて漸う山旅のスタートラインに立てたことになる。


              立派な本館                         新館 蝙蝠岳へはこの左脇から林道に下りる


 南アルプスのど真ん中、秘境とも言える二軒小屋だが、そこには似つかわしくないリニア新幹線の工事関係者も滞在するとのこと。どうやら南アルプスを貫く本坑に向けて、ここから工事用の斜坑が掘られるらしい。今後工事の本格化に伴い、多数の工事要員が滞在し、大型車両が行き来することになれば、環境や生態系に相当の悪影響が出ることは必至だろう。

 一方で標高の高いところでも日本鹿の食害が深刻な問題になっている。我らが愛すべき南アルプスの美しい自然を今回記憶に刻むことが出来るのは幸運と言うべきか、それともおそらく二度目はない不幸と言うべきだろうか。。。


            田代湖・塩見岳方面へ                       右手の坂を下って暫くすれば登山口


 ともあれ、夕食まで時間があったので、少々分かり辛い登山口までの経路を下見しておくことにした。夕食は山小屋とは思えないゴージャスなコース料理。それも一流レストランさながらシェフの解説付きだった。並みレストランと違うのは登山のアドバイスもしてくれること。翌日宿泊を予定している塩見小屋まで13時間は見ておいた方が良いとのことだ。念のため、予定していた出発予定時刻を早め、午前3時とすることにした。


2016年8月31日(水)

 午前3時15分、3人部屋を独り占めし快適至極だった二軒小屋を後にする。昨日下見をしておいたので暗闇でも迷うことはない。東俣沿いの林道を少し汗ばむスピードで歩き、十分にウォーミングアップしておく。


            蝙蝠岳登山口(前日撮影)                           樹林帯の急登


 登山口からは伸び切ったアキレス腱が緩む間の無いほどの急登が始まる。出発から1時間ほど、暗闇の中から忽然と中部電力の管理棟が浮かび上がった。手つかずの自然に異質な人工物はちょっと不気味、さっさとやり過ごす。

 容赦ない急坂はその先も暫く続き、標高2100m辺りで漸く一息ついた。コメツガの森の中に苔蒸した日本庭園が広がる。これぞ南アルプス南部という癒しの景観は何度見ても飽きさせない。


この雰囲気が何とも素晴らしい


 歩き始めて5時間近く、そろそろ疲れが出て注意力が散漫になったせいか、どこが頂か気が付かないまま徳右衛門岳を通り過ぎてしまった。樹間から目指す蝙蝠岳や荒川岳方面の展望が開け始めたのが唯一の救いだ。


               荒川岳方面                                 蝙蝠岳方面


 疲れた足に鞭打ちながら歩き続け、漸く長かった樹林帯を抜け出した。ただし展望と引き換えに強烈な風の洗礼を受けることになる。体が傾いでしまうほどの強風に耐えつつ黙々と歩を進め、やっと山頂に着いたと思いきや、そこは手前の2721mピーク。蝙蝠岳山頂はまだずっと先にあった。


ようやく稜線に出たが強風に煽られる


 背丈ほどのハイマツも強風と並んで行く手を阻む抵抗勢力だ。踏み跡も薄くわかり辛いところもあるが、幸い天気は良いので道を見失う恐れはない。


          行く手に待ち構えるハイマツ漕ぎ                       足元は全く見えない


 午前10時に念願の蝙蝠岳山頂に立った。山の名は蝙蝠が翼を広げた姿に由来するらしいが、バットマンサインのイメージしか頭にない私には今一つピンとこない。


v.s



      山頂(ありきたりの構図ながらバックは富士山)                  山頂直下に幕営跡



塩見岳を遥かに望む


 ここまででかなり体力を消耗したためか、未踏の百高山を一つクリアした喜びよりも、これから越えねばならない、高く険しく聳える塩見岳の方が気掛なのが正直なところ。風を避けて東側の平地に下り30分ほど大休止した後、重い腰を上げて縦走を継続する。


            再びハイマツ漕いで下り、、、                       ここから登り返し              


 道は100m弱下って登り返す。ここで本日初めてハイカーと出会った。この方は塩見小屋から蝙蝠岳をピストンするとのことだ。北俣岳から先は、両側ともスッパリ切れ落ちた痩せた岩稜となる。風に飛ばされそうとうっかり帽子に手をやるとバランスを崩しそうになるので、帽子は山に捧げる覚悟で両手をフル稼働させこの難所を乗り切った。


北俣岳への登り



強風に振られながら岩稜地帯を慎重に通過


 仙塩尾根の主稜線に出ると、これまでとは打って変わり流石に人通りが多い。最後のひと頑張りで6年ぶりに塩見岳の山頂に立った。久しぶりの山、それも出発から10時間近く歩き続けたので足に溜まった乳酸はもう限界に近い。


彼方に見えた塩見岳が目前



               最後の登り                                 山頂(東峰)



蝙蝠岳を振り返る



翌日歩く仙塩尾根



西峰へと移動し、、、



塩見小屋へと下る


 東峰から西峰、そして天狗岩と続く岩稜地帯を慎重に下り、午後2時5分に建て替えたばかりで今年新装開店した塩見小屋に到着した。幸い懸念していた痛みこそ出なかったものの、脚はもはや完全に逝ってしまい、離れのトイレ通いが辛いのなんの。明日も長丁場、こんな体たらくで果たして歩き通せるものやら。。。


行動時間 10時間50分



 
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