北岳  山梨県 3193m   百名山
   


  
20091012

 北岳は言わずと知れた百名山、しかしこの山だけをピストンするのは余りにもったいない。ぜひとも白峰三山を縦走したいものだ。この計画を山小屋がまだ開いている10月中旬に実行に移すことにした。体育の日に絡む三連休は混雑間違いないので、1日ずらすことにしよう。12日からの12日とすることに決定。長いブランクの後、登山を再開したが、デイトレッカーの山行ばかりで山小屋泊まりは久しくしていない。今回は北岳小屋に素泊まり一泊である。技術革新のおかげで最新の山道具は機能性にも優れ、軽量化が著しい。昔は横長のキスリングザックに必要装備を詰め込むと簡単に20kgを越えたものだが、今ならその半分で済みそうだ。それでもアタックザックの日帰り装備に比べたらずっしりと重い。

 例によって自宅を午前1時に出発するが、この早出パターンにも大分慣れてきた。十分とは言えないが4時間ほど熟睡している眠くはない。中央高速から身延経由で奈良田温泉には4時過ぎに到着。バス停留所脇の駐車スペースに車を停める。広河原行きのバスは5時半なので車中で朝食をとったり、ガイドブックを読んだりして過ごす。実はこのときルームランプを消し忘れ、下山後えらい目に遭うことになってしまった。この顛末は農取岳編に記述してある。奈良田からの始発バスの乗客は56人、動き出してすぐに広い駐車場へと入っていく。ここで10人ほどが乗り込んできた。僅かな距離だが、始発とこのバス停との料金差は\100。下山後の余分な林道歩きと料金をダブルで損したことになる。事前調査が不十分だった。

 バスは再び広河原まで野呂川沿いの曲がりくねった林道を、エンジンを唸らせながら登って行く。車窓からの紅葉を期待していたが、この辺りの標高は
1000m前後なのでまだ早いようだ。奈良田から1時間弱、多くのハイカーで賑わう広河原に到着した。35年前にこの地を踏んだ当時、マイカー乗り入れが許可されていて河原には数多くの乗用車が停まっていた。その光景を見て「いつかリッチになって今度は車で来るぞと」と誓ったものだが、乗り入れ禁止とあってはこの夢は永久に叶いそうにない。バスのなかで身支度をしておいたので下車してすぐに歩き出した。時刻は625分。天気は申し分ない。沢と反対側の高みには朝日に染まる北岳の荒々しい峰が顔をのぞかせている。吊橋を渡り、その先にある広河原山荘からいよいよ登りにかかった。


バットレスが見えてきた


紅葉真っ盛り


色づくナナカマドと鳳凰三山

 大樺沢沿いのコースはよく整備されていて歩きやすい。下ってくる登山者と引っ切り無しにすれ違う。休みなしで二股まで登り、ここで小休止した。ここは北岳のハブ的な存在で左股コース、右股コースと白根御池小屋コースの各登山道へ行き来する人々で賑わっている。上を見上げると大樺沢の雪渓はわずかしか残っていない。その脇にそそり立つバットレスの荒々しい風貌は何度見ても壮観の一言。この辺りはダテカンバやナナカマドの葉や実が真っ赤に色づいて見事である。二股からは右股コースに進む。次第に傾斜はきつくなってくるが、ジグザグによく整備された道なので一定のリズムで歩け、息切れすることもない。途中の登山道で三脚を広げて青空をバックにダケカンバを撮っている外人さんがいた。カメラオタクは日本人だけではないようだ。  
 稜線が近くなると、すれ違うハイカーが次第に減ってきた。連休を外した目論見どおり静かな山旅が期待できそうだ。肩の小屋には
115分に到着した。商売繁盛の後始末といった感じでスタッフが忙しく立ち働いている。ここでしばらく休憩し本日最後の登りに備えた。北岳頂上には12時きっかりに立った。いつもより荷が重いにも関わらず足が軽く感じられて楽な行程であったが、最後の急登はちょっと足に来た。頂上からは360度、どこを向いても山、また山。近くは正面に相対して存在感のある仙丈岳、花崗岩で初雪のように白く見える鳳凰三山、ドームの塩見岳とそれに連なる南ア南部の山並み、これから向かう重厚な間ノ岳、そして遠い彼方には富士山、秩父、八ヶ岳、新雪を頂いた北アルプス、中央アルプス等々。奈良田から同じバスで来られた方が八本歯経由で一足早く到着していて、しばらく話をする。この方は今日、北岳小屋泊まりで同じコースを計画しているが、奈良田までの2200mを越える下山路の標高差を嫌って大文字沢小屋泊まりにするつもりとのこと。確かに奈良田まで一気呵成に下るのは辛いかもしれない。明日は出来るだけ早出にしよう。


北岳肩の小屋



北岳小屋と間ノ岳



北岳小屋から北岳を見上げる、風が強くなってきた


 
しばらく頂上で景観を楽しんだ後、北岳小屋に向け下山にかかる。小屋には30分ちょっとで到着した。35年ぶりの山小屋、懐かしさと戸惑いで複雑な心境であった。宿泊手続き後、大部屋に案内されたが、100人は泊まれそうな部屋に誰もいない。その後も入室してきたのは数名だけ。しかもシュラフは結局、私だけだった。時間を持て余して外で富士山を眺めながらビールを飲む。ガスを伴って西から吹き付ける冷たい風が次第に強くなり、羽毛服を着ていても寒くなってきた。流石に3000m超、下界はまだ夏の名残があるのに、ここはもう冬だ。小屋の食堂のストーブの回りで暖をとりながら山渓や岳人などを読みながら時間をつぶす。5時前には早々とレトルトカレーで簡単な夕食を済ませ、ガラス越しに刻一刻と姿を変える雲をぼんやり眺めたり、ナイトキャップのウイスキーをちびちびやりながらゆったりと過ごし、6時過ぎにはシュラフに潜りこんだ。

行動時間    6時間45分
歩行時間    5時間40分
標準CT     7時間15分

一日目    二日目    
北岳     間ノ岳・農取岳   
 


        トップ


 山歩き

inserted by FC2 system