2012年11月10日
3年前に滝の名勝で知られるドンドコ沢を登ったことがある。その際、思わぬ怪我ですっかり意気消沈して次から次に現れる滝を眺めることなく素通りしたこと、さらについていないことに、帰宅後パソコンがクラッシュしてせっかく撮った写真が消失してしまったことから、いつか再訪したいと思っていた。
自宅を未明に出発。2時間半ほどで青木鉱泉に到着した。記憶では立派な舗装路でアプローチできるはずなのだが、どうしたわけかナビに出てこない。結局韮崎の市街地からかなり荒れた未舗装の林道を走行するはめになった。夜明けとともに青木鉱泉に到着。週末ということもあってか、駐車場には既に10台ほどの車がとまっている。
いつものように、地図を見ながらの朝食、その後の身支度を済ませて6時10分に車を後にした。鉱泉近くのドンドコ沢沿いでは大規模な法面工事が行われていた。山の遥か高みにパッチを当てたようなコンクリートの構造物が見える。
工事現場を過ぎて沢沿いの登山道に入った。ここで私を待ち構えたいたかのように日本カモシカに遭遇。かなりの至近距離だ。黒っぽくコロコロした姿は一瞬熊かと見紛うほど。しかし、よく見れば愛嬌のある顔立ちをしている。しばらく目と目が合ったが、そろりとカメラを取り出そうと目を離した隙に視界から消えてしまった。
工事現場を歩く 朝日を浴びて輝く紅葉
その後は気持ちの良い枯葉の絨毯が続く。そろそろウオーミングアップも完了、少しペースを上げてみる。体調は悪くないようだ。朝日を浴びて光り輝く紅葉に元気をもらいながら、先行していた単独やカップルのハイカー数人を追い抜いた。
緩やかだった道は次第に急登へと変わり、ぐんぐんと高度を上げて行く。やがて最初の滝、南精進滝と記された道標が現れた。滝見サイトへは登山道とは別の道を辿るが、滝の先で合流している。前回見損なった南精進滝は二段の見事な大滝だった。
南精進滝 鳳凰の滝
さらに急坂をどんどん登って行くと鳳凰の滝との分岐が現れた。指示通り踏み跡を辿って沢に降りていくが、途中で道を見失い、しばらくウロウロする。ようやく滝の下部に着いて見上げるが、名前負けしているような冴えない滝でちょっとがっかりだ。左右の岸壁から二筋の流れが落ちているだけ。近寄ってみたいが大きな岩がゴロゴロして行く手を阻み簡単ではなさそうだ。相前後してやってきた若者が沢を登って行ったが、諦めて引き返してきた。
さらに歩くこと暫し。次は白糸の滝だ。これもいかにも平凡で期待はずれ。最後の五色滝は一旦沢筋まで下って滝壺近くから眺めた。流石に高度感もあり迫力満点で見事だ。私の好みからすれば、これがベストオブドンドコ滝。
白糸の滝 五色滝
やがて登山道が源頭を辿るようになると鳳凰小屋も間近だ。ここから嘴のような地蔵岳のオベリスクが展望できるので自然とモチベーションも上がる。鳳凰小屋は素通り。冬期小屋の手前の分岐から薬師岳へと向かう。地蔵岳は昨年末に御座石温泉から登ったので今回は割愛だ。
地蔵岳のオベリスクが見える 鳳凰小屋
そろそろ風が冷たくなってきたのでウインドブレーカーとグローブを身に付けた。林間コースを抜けて稜線に出るといきなりの大展望。正面に薄らと雪を纏った迫力満点の北岳が迎えてくれた。
観音岳への近道分岐 稜線に出ると北岳が出迎え
ザレた花崗岩の稜線を少し上り詰めるとそこが観音岳の山頂だ。青木鉱泉から5時間弱。ちょっと時間がかかり過ぎのような気もするが、滝見のため寄り道をしたのでこんなものだろう。先着のハイカーが3人。快晴の下、南アルプスの峰々はもとより、すっかり冬の装いの槍穂、乗鞍、御獄山まで一望できる。それに富士山、何度眺めても圧巻の存在感だ。
観音岳までもう一息 山頂到着
北岳と間ノ岳
甲斐駒ケ岳、バックにはすっかり冠雪した槍穂と乗鞍岳が見えている
薬師岳と富士山
大パノラマを楽しみながらランチをとるが、風が冷たいので早々に山頂を辞し、薬師岳へと向かう。快晴の下での最高の稜線漫歩。薬師岳まで半時間もかからない。広々した山頂には二つの岩峰がある。このうち薬師岳小屋を真下に見る南側のピークに登ってみた。最後の岩場は急峻でとても登れないが、遮るもののない素晴らしい富士山の眺めに別れを告げることができた。
帰路は中道を下山する。途中で何組みかのパーティとすれ違った。下山してわかったことだが、林道終点の廃屋に何台もの車がとまっていた。ここから観音岳をピストンする人もいるようだ。
樹林帯の中の急坂をどんどん下る。転ばないように細心の注意を払っているつもりでも、二回ほど尻餅をついてしまった。標高が1500mを切ると次第に美しい紅葉の景色が広がってきた。最後は紅葉を愛でながら林道をしばらく歩いて青木鉱泉に帰着。車のワイパーに駐車料金の請求書が挟んであった。請求額は暴利とも思える750円也。ともあれ充実した山歩きができたので良しとしよう。胸いっぱい吸い込んだ山のフィトンチッドと満足感に浸りつつ帰途についた。
行動時間 8時間25分
歩行時間 7時間30分
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