鳳凰三山  山梨県 2840m    百名山
 

  
2009913

 前回の甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳に引き続き、南ア鳳凰三山の日帰りにチャレンジすることにした。日曜日の中央高速大渋滞を避けて土曜日としたかったが、予定していた912日はあいにくの雨。しかたなく、翌13日の計画実行とした。青木鉱泉からドンドコ沢、地蔵岳、観音岳、薬師岳から中道を経由して再び青木鉱泉へ戻るコースだ。昭文社の標準コースタイムによれば所要時間は12時間半ということで山旅を再開してから挑む最もロングコースと言うことになる。果たして自分の足は最後まで言うことを聞いてくれるだろうか。


 例によって自宅を未明の
2時に出発、ナビの指示に従って韮崎ICから市内を抜け、未舗装の細い山道に入った。前日の雨であちこちに大きな水溜りができているなかを慎重に進む。時折、野生の鹿の白い尻がライトに浮かび上がる。夜行性とはいえ彼らはこの暗闇のなかでどうエサを探すのだろう。地図ではすぐに見える距離なのになかなか目的地に着かない、ナビの設定をミスしていないことを祈りつつ案内を見落とさないよう前方を注視する。御座石鉱泉との分岐がようやく現れ、4時半に青木鉱泉に到着した。

 車のなかで軽い朝食を済ませ、身支度を整え歩き出す。時間は
450分。月明かりはあるものの真っ暗なドンドコ沢沿いの緩い登りをヘッドランプ頼りで登っていく。途中で道を見失い、しばらく枝沢を登ってしまった。間違いに気づき引き返すが、この時石の上でスリップ、とっさにしがみ付いた左手の中指を傷つけてしまった。左手が血でべとべとになる。これが今日これから先に何度も痛い目に会う怪我の第一回目とはこの時は知る由もなかったが。

 夜は明けてきたものの木々に囲まれた沢沿いの道はまだ暗い。沢を何回か渡り返したところで再び道を見失う。すぐに登山道を見つけて戻ろうとしたとき小高い岩の上で
2回目のスリップ、今度は両足が完全に宙に浮いてしまい、頭を下にして落下、背中と下半身を思いっきり河原の石に打ち付けてしまった。背中のショックはザックが受け止めてくれたが、腰の左側、左足の外側付け根の部分が、息が止まるほど痛い。しばらく痛みの引くのを待って歩き始めるが、歩を進める度にずきっと来る。折角名勝滝コースを選んだのに、今や完走できるかどうかが心配で気持ちの上で余裕が一気に無くなってしまった。南精進ノ滝、鳳凰ノ滝はパス、景勝よりも痛み耐えるのに精一杯。そのうち左足付け根は次第に腫れてきて、ズボンの上から触ると卵一個分を尻に貼り付けたような瘤状態になっている。それでも歩いているうちに痛みはやや薄らいで来たので最後の五色の滝だけは、コースから外れて見学にいく。高度もあって見事な滝である。

 急登が終わると緩やかな河原道となり、しばらく散歩道を進むと鳳凰小屋へ到着した。これまで登山者
1名に出会っただけだったのが嘘のように賑やかになる。宿泊客がちょうど食事を終えた時間らしい。多くの登山者が小屋を出入りしている。ここで小生もベンチに座って2回目の朝食、コンビニのお握り2個を食べて長丁場のシャリバテに備える。ここから地蔵岳への登りは砂状の花崗岩の歩きにくい急坂で、ネットの情報通り一歩上がれば半歩ずり下がる。これでも前日の雨でやや締まっているらしい。青木鉱泉から5時間でようやくオベリスク直下の地蔵岳の頂上に立った。


北岳の登山道から見た鳳凰三山(写真が無いので代用)



 
先日登った甲斐駒、仙丈はもとより、正面に北岳、間ノ岳、その先に続く南ア南部の山々がどっしりした山容を見せている。甲府盆地の方に目を転ずると八ヶ岳の広大な裾野が見渡せる。頂上付近は残念ながら雲のなか。景色を楽しんでいる間に、若者二人がザックを置いてオベリスクに向かっていく。もちろん小生はパス。アカヌケ沢ノ頭でビールを飲んでいたテント泊まりの方と話をする。昨晩は相当冷え込み、とてもビールに口を付ける気にならなかったらしい。夏用のシュラフでは耐えられないほど寒かった由。下界の残暑はまだ厳しいが山の上はもうすっかり秋ということか。確かに北岳方面から吹き付ける風は肌を刺す冷たさだ。

 先が長いので早々に失礼し、稜線を辿って鳳凰三山の最高峰、観音岳へと向かう。疲れが相当足に来ている。思うようにペースが上がらない。すれ違う連中は老若男女を問わず大荷物を背負っている。子供のランドセル程度の荷物で音を上げていては申し訳ないか。観音岳には
11時ちょうどに到着した。このペースだと、時間的に中央高速の大渋滞に嵌ってしまう。気合を入れることにする。ちょっと休んですぐに薬師岳へと向かう。

 広々した薬師岳山頂には
25分で到着。女の子から「あの大きなお山は何ですかぁ」と北岳を指差しながら聞かれた。「地図くらい持って歩いてね、南アルプスの盟主、日本第二の高峰だよ」とは心の中だけ、そのほかの山々も親切に教えてあげた。折角の展望に別れを告げ、岩に大きく「←青木」と描かれた案内に従って中道へと向かう。すぐに樹林帯に入り急な下りを足早に下る。ここで本日3度目の失態。湿った木の根っこで滑って再び両足は宙を舞い、落下したところで尾てい骨を強打してしまった。その後も何人かのパーティを追い越した後、休憩する団体さんの目前でアクロバットを披露するなど、ともかく懲りずにスリップしまくり。ぼろぼろになったお尻に鞭を打ち続けながら単調な急坂を下ってようやく林道に辿り着いた。ここから、またひとしきり急坂を下っていくと人家が見える。しかしよく観察すれば廃屋でがっかり。再び林道に出てしばらくとぼとぼ歩くとようやくゲートに到着した。

 ここには車を停めたオッサンから中道に適当なテント場があるか聞かれるが、スリップと尻の痛みに神経が集中していたため、全く記憶がない。岩屋があったような気もするが、適当なテント場はなかったと応える。河原を横切り青木鉱泉には
145分に帰着。所要時間9時間15分、ネットの歩行時間8時間30分の山歩きであった。昭文社の標準コースタイムが12時間30分なのでほぼ7掛けで歩き通せた。しかしその代償は大きかった。痣だらけの尻と痛みに耐えて無理をしたためか股関節までおかしくなってしまった。今回の教訓その一、強行軍をやる歳じゃない、山はもっとゆったり楽しもう。その二、愛着があっても底の磨り減った登山靴に今度こそグッバイしよう。

行動時間    9時間15分
歩行時間    8時間30分
標準CT     12時間30分


追記

鳳凰の観音様のお仕置きはまだ終わらなかった。帰宅から数日後、デジカメの画像を記録しておいたパソコンがクラッシュ、せっかくの写真は全部「オシャカ」になってしまった。

  

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