聖岳より続く
2012年8月21日
午前3時、お隣の目覚ましアラームで起床。ツアーの元気いっぱいジジババ軍団も起きだして出発準備を始めている。間違っても大行列の最後尾には付きたくないので、特急で身支度、トイレを済ませて小屋を後にした。空を見上げれば降るような一面の星。冬の星座オリオンがよく見える。昼間の残暑が嘘のように、夜空はいつの間にか秋冬バージョンに切り替わっているようだ。
高度順応が出来たのか、熟睡できたせいか、昨日ほど息切れせずにせっせと足が動く。しばらくヘッドランプを点けて歩いていたが、森林限界を超える辺りで消灯した。富士山の左側、笊ヶ岳のツインピーク辺りから幾筋もの光が伸びている。まるで旧軍隊の旭日旗のイメージそのものといった感じ。南アルプスから眺める明け方の富士山は何度見ても最高だ。
富士山と旭日旗
まだ薄暗い南岳山頂 上河内岳を望む
南岳の山頂でご来光を拝みたかったが、タイミングが少々早すぎたようだ。日の出を待ちきれずに山頂を後にしたので、上河内岳へ登る途中で日が昇った。モルゲンロートに染まる峰々を眺めながら山頂を目指す。上河内岳山頂には5時30分に到着。360度遮るものの無い絶景ポイントだ。これから向かう茶臼岳の奥には光岳や大無間山等々、南アルプス最南部の峰々が朝日を浴びている。振り返れば長々と尾を引く聖岳東尾根が一望だ。
上河内岳を目前にして日の出 上河内岳山頂
聖岳と東尾根(手前は南岳)
大無間山
風が冷たいのであまりじっともしていられない。ゴージャスな景色を十分堪能できたので次に行きますか。上河内岳からしばらく下ると亀甲状土になる。名前からしてこの辺り一帯の岩石が亀の甲羅模様になっているのだろうと推測するが、そんな風景は目にすることが出来ない。むしろ自然が造園した素晴らしい庭園と言った感じだ。残念ながら花期を終えてしまったのか、お花畑と言えるほどのものは殆ど見かけなかった。
庭園を行く 庭園から茶臼岳
茶臼小屋への分岐まではあっという間。ここから一登りして今回最後の山、茶臼岳に着いた。山頂には真っ黒に日焼けした精悍な中年男がいてカメラを構えていた。北岳から延々縦走してきて今日が最終日だとか。お盆の週は雨に降られ通しで大変だったらしい。
茶臼小屋との分岐より 山頂
茶臼岳も360度遮るものが無い頂きだ。ここからの眺望も上河内岳に劣らず見事だった。大気は澄み渡ってすっかり秋の雰囲気。空を見上げれば刷毛で掃いたような巻雲も見える。夜空の星座同様、着実に秋バージョンに衣替えが始まっているのだ。もとより陽がもっと上がれば夏空に逆戻りするので、一日のうちに二つの季節が同居しているというのが正しい表現かもしれない。
中央アルプス、木曾御嶽山から北アルプスの槍穂まで遠望できた
上河内岳を振り返る
光岳と加加森山との間に池口岳も顔を覗かせている
十二分に景色を堪能できたので、単独氏より一足先に下山にかかる。再び分岐へと戻り、下り続ける。茶臼小屋は、小川の辺に立つ小ぢんまりした小屋だ。水はたっぷりあるので水場は素通り。時折大きなザックを背負った若者達とすれ違う。今朝横窪沢小屋を発ってきたのだろうか。
茶臼小屋 横窪沢小屋までこの手の癒し系の標識が多い
急坂の下りが続くが、グリップの良くきく歩きやすい道なのでそれほど足に堪えない。横窪沢小屋、ウソッコ沢小屋を過ぎると沢音がいよいよ近くなってきた。美しい渓流を眺めながら何回か吊り橋を渡っていく。しばらく続く登り返しにウンザリする頃、ヤレヤレ峠に着く。ヤレヤレとは言い得て妙。まさにその通りの気分だ。
明るい感じの横窪沢小屋 無人のウソッコ小屋
本当にヤレヤレのヤレヤレ峠 高度感十分の大吊り橋
畑薙湖(山頂はガスだろう)
峠を過ぎると畑薙湖へ向かって急下降、フィナーレとなる大吊橋を渡って東俣林道に出た。小休止した後はひたすら林道を歩く。前からは中部電力、後ろからは東海フォレストのバスが来て土埃を舞い上がらせながら追い抜いていく。畑薙ダムの堰堤を過ぎてからがまだ長い。12時5分にようやく下記臨時駐車場に帰着。下山届けを提出して素晴らしい天気に恵まれた二泊三日のミニ縦走の旅を無事終えた。
行動時間 8時間40分
歩行時間 8時間
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