飯縄山BC              二百名山
  

前日より

20121227

 今日は最高の山スキー日和だ。移動性高気圧に覆われ、長野市内のホテル最上階からは周辺の山々や白銀に輝く北アルプスがくっきりと見渡せる。早々に朝食を済ませ、早る心を抑えて戸隠スキー場へと向かった。スキー場に到着後は身支度もそこそこに半日券を買ってリフト乗り場へと直行する。

 瑪瑙山へのリフトは午前
9時からとアナウンスされていたが、定刻を過ぎても改札がオープンしない。仕方が無いので圧雪されたコースを何本か滑り時間を潰す。そうこうしているうちにリフトが動き出したので飛び乗るがちょっと出遅れた感じ。案の定、瑪瑙山山頂には多くの若者達がいて飯縄山との鞍部へ向けて滑降を始めている。もうスロープはすっかり食い尽くされてしまい、管理されたオフピステコースと何ら変わりない。それでも右端に残っていたパウダーを気持ちよく頂いて鞍部に降り立った。

 若者達は皆ここでシールを付けて登り返している。どうやら飯縄山へ向かう人はいないようだ。鞍部を少し尾根が痩せたところまで進んで板を外した。この時信じられないことが起きた。シールを付けようと板を持ち上げた際、うっかり取り落としてしまったのだ。手から離れた板は、あっという間にスルスルと谷間に流れ姿を消してしまった。一応小ぶりな流れ止めが付いてはいるのだが、パウダー相手には全く機能してくれなかった。どこまで落ちたか分からない。ともかく祈るような気持ちで、沢の源頭を腰ラッセルで降りていく。標高差にして
30mほどだろうか、何とか止ってくれた板を見つけた時は心底嬉しかった。鞍部まで登り返してやれやれと胸を撫で下ろした。

 無事板の回収に成功したものの、約
30分をロスしてしまった。こうしたミスが時と場合によっては遭難事故につながるのだろう。いい勉強になった。今度は慎重にシールを付け、GPSもスイッチオンしてハイクアップ開始。

 時刻は
1015分。トレースの痕跡もない尾根筋を足首から脛のラッセルで登りにかかった。暫くは樹林帯のふかふか雪の登りだ。少し尾根が痩せた所でクラストした雪混じりの岩場が出て来た。ここは面倒だが板を外して慎重に乗り越えた。今度はリーシュをしっかり掴んで間違っても板を落とさないように細心の注意を払う。

 再びシール登行開始。かなり傾斜がきつくなってきたのでジグを切りながら高度を上げて行く。
1150分に飯縄山の山頂に立った。快晴の空の下360度の大パノラマを思う存分堪能する。北信の峰々はもとより北アルプス、果ては富士山まで遠望できて大感激だ。足元に目をやれば山頂には飯縄神社の方からツボ足のトレースがあった。南か西のどちらの登山道から登ってきているのだろうか。

 山頂には
10分ほど滞在した後、シールを付けたまま飯縄神社へと向かう。途中で地元の方と思われるツボ足の登山者とすれ違った。神社からはいよいよお楽しみの滑降だ。スピードを抑えて下っていくと、再び二人パーティの登山者とすれ違った。夏道の分岐点まで下るとトレースは南登山道へと向かっている。私が下山する西登山道の尾根にはトレースが無かった。

 標高
1700m辺りで木々の生い茂った稜線を避けて左側の斜面を下って行くが、込み合ったブッシュが酷い。藪の隙間を探してブッシュと格闘しながら先に進んでいるうちに片足が強固な蔦に絡まって転倒。斜面に頭を下にして仰向け状態で宙吊りになってしまった。腹筋総動員でザックもろとも上半身を持ち上げもがく事しばし、大汗をかきながら両足の板を外して何とか脱出に成功。疲労困憊で限界の腹筋が攣りそうだ。

 稜線に戻ろうとするが、ブッシュが密で下り加減のトラバースでルートを取るのは無理。どうやら登り返すしかないようだ。ツボ足で歩こうとすると重い雪に腰ラッセルで身動きが取れない。結局僅かな距離ながらシールを付ける羽目になった。

 稜線に戻ると、夏道に沿ってブッシュが切り開かれていたのでホッとした。しかしスキーにはスペース不十分で下手な私にはうまくターンを操作出来ず、ボーゲンを交えて四苦八苦しながら降り続ける。

 標高
1400m辺りまで下ったところで、一休み。ここでカメラを取り出そうとして愕然。あろうことか、カラビナでザックに固定していたカメラバッグが無い!ここ何年か山を共にした愛用のコンパクトデジカメをなくしてしまった。どこかで藪に絡め取られて山の神への捧げ物になってしまったらしい。戻って探そうかとも思ったが、ブッシュ地帯までの登り返しは高度差約300m。時刻は既に午後2時を回っているし、そもそも気力が湧いてこない。暫く躊躇したが涙を飲んで下山を優先することにした。

 広くなった代わりに傾斜の緩くなった尾根をゆるゆると下り続け、林道に出た。軽い登り加減の道をヒールフリーにして漕ぎ進み、中社のゲレンデ脇を通り抜け戸隠神社へ。物陰にザックやスキーをデポして戸隠スキー場へと向かう。
30分ほど車道をてくてく歩いてだいぶ陽の傾いた午後345分に駐車場に帰着した。

 それにしても今日は短い行程ながら事件の多い日だった。あわやのスキー紛失騒ぎ、逆さ吊りの刑、止めはデジカメ紛失だ。カメラも惜しいが、せっかくの画像が全て失われてしまったのは本当に心残り。安全に山スキーを楽しむにはまだまだ修行が足りないと深く反省した一日だった。



行動時間  6時間30分(ゲレンデトップから)

 
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