一ノ倉岳BC  群馬・新潟県 1974m             
 


2016
3月20日(日)


 お彼岸の連休中日に私にとっては初体験の芝倉沢へ向かうことになった。同行者は群馬のKさんと先日乙妻山で初めてご一緒させて頂いた埼玉のYさん。午前7時に土合駅前に集合するが、上空には雲が激しく流れ、小雨がパラつくあいにくの空模様。3人でGo/No goを協議した結果、晴耕雨読主義のYさんは潔くご辞退。百戦錬磨で経験豊富のKさんと高い交通費の元を取りたい私は肩の小屋まで登ったところで再度判断するという結論になった。

 結果的には
Kさんのガイド宜しきを得て初の芝倉沢滑降は完遂できたものの、冬型気圧配置による強風、ホワイトアウト、アイスバーンといった冬山3点セットを前にして私にとっては終始緊張の解けることのない厳しいBCとなった。

 午前
830分始発のRWに乗り込み天神平へ。眼下の西黒沢や田尻沢は雪消えが一段と進んでおり、まるで初夏の様相だ。山頂駅を一歩出ると目の前には広大なゲレンデ。小雪が舞ってはいるものの、幸い風も穏やかで視界もそこそこある。しかし、ゲレンデはそこかしこテカテカのアイスバーンだらけ。ここからさらに500mほど高度を上げて行くが、気温上昇は余り望めない中、雪面はどういう状況になっているのか不安になる。


下りきった鞍部からハイクアップ                       熊穴沢の頭の急斜面


 しばらく待たされた後、ようやく動き出したリフトで天神峠へ。そこでスキーを履き、ガリガリに凍結した天神尾根をエッジを効かせながら鞍部まで滑り降りた。前回同様、ここからはスキーを背にしてシートラーゲン。今一つ扱いに慣れない
CampTEC対応アイゼンを装着するが、案の定10歩も歩かない内に片足が外れてしまった。先日の万太郎の悪夢の再来かと心配したが、幸いセットしなおした後は問題なかった。一方で同じ製品を使用するKさんは不幸にもこの先何度もアイゼン脱落のトラブルに見舞われることになる。


     熊穴沢避難小屋                            天神尾根を登る団体さん


 高度が上がるにつれて吹き曝しの天神尾根は風当たりが強くなってきた。天狗のたまり場を過ぎると風は一段とその勢いを増し、耐風姿勢を取らされることもしばしば。急坂の上に足元はカチコチのアイスバーンなので神経は休まらない。


 11
40分に肩の小屋に到着。小屋の中に入りエネルギー補給をしながらこの先の作戦を相談する。結論は計画続行。全面アイスバーンで広くも無い天神尾根をおっかなびっくり下るより、比較的斜度もマイルドでパウダーが期待できる芝倉沢の方がましという判断。沢の上部を除きその想定は当たっていたが、視界がさらに悪化し、天も地も分からないホワイトアウトになるとは思いもよらなかった。。。


トマの耳山頂                              オキの耳山頂


 続々と小屋に詰めかける登山者に席を譲り、再びハイクアップ開始。トマの耳は記念撮影しただけで通過。オキの耳を過ぎると登山者の姿を見ることは無くなった。先行者のトレースも皆無だ。岩稜地帯をルートを探りつつ東側の雪庇に注意して進んでいく。

             一ノ倉岳を登るKさん                               同左


 一ノ倉岳の急登を終えるとのっぺりした雪原となる。避難小屋や山頂標識は雪の下でどこが山頂か分からない。
GPSで位置確認をし、形だけの記念撮影をする。ここからいよいよメインイベントの芝倉沢滑降だ。スキーを履いて北側の斜面にドロップ。

 いざ滑り出すと元々乏しい視界に目標物が無いため天と地との区別がつかない。グレー一色の中で唯一参照できるのは先行する
Kさんの姿だけ。ちょっと目を離すと途端に平衡感覚がおかしくなって転びそうになってしまう。

 それに足下は無情にも一面のアイスバーン。落ち口の緩いスロープでは何とかターンをつなげていられたが、次第に斜度がきつくなるともういけない。エッジが辛うじて引っ掛かる状態ではターンはもとより、キックターンもままならず、安全第一で横滑りの連続で高度を下げていくのみ。幸い笹薮が顔を覗かせていたのでそこで方向転換し、次の笹藪まで横滑りと言った塩梅だ。


核心部分を滑るKさん



ノドを抜ける私



核心部安全地帯で休むKさん


ようやく緊張から解放されやれやれ



デブリが生々しい


 そのうち視界も少しずつ回復し、斑模様ながらパウダーが出てきたのでまともにターンが出来るようになった。ノドの危険地帯を足早に通り過ぎるが、小雪のせいか大規模なデブリも無く難なく安全地帯まで逃れることが出来た。ようやく緊張感から解放されたが、その後は総合格闘技。湯檜曽川右岸の雪を拾いながら、藪をくぐり抜け、時には段差を転げ落ち、落とし穴にハマり、谷川岳東面を源にする沢を何度も渡渉して
1730分、やっとの思いで土合駅に帰り着いた。


            幽ノ沢スノーブリッジ有り                           一ノ倉沢の渡渉



          雪は至る所で寸断状態                          国道直前でも(西黒沢の渡渉)


 初めての芝倉沢、苦労が多かった分、喜び、達成感も一入だ。今回も
Kさんに大感謝です。しかし同じ気象条件での二度目は無いなというのが正直なところ。Yさんはとても賢明なご判断でした。


行動時間  
7時間40



  
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