早池峰山  岩手県 1917m         百名山 

岩木山より続く

20111021

 昨夜は久しぶりに再会したかつての山友と大いに語り合い、とても楽しい時間を過ごすことができた。現在青森在住の山友は、現役バリバリの多忙な時間を割いて青森の新鮮な海の幸で歓待してくれたのだった。彼はピッケルをゴルフクラブに持ち替えて毎週のように草刈りに励んでいるとのこと。背負うものと歩く場所こそ違うが、お互い還暦を過ぎても健康でアウトドアスポーツをエンジョイできるのは素晴らしいことだ。

 翌日はいつものように未明にホテルを後にした。体調はこれまでで最悪だ。飲み過ぎで頭には泥が詰まっているようだし、風邪をこじらせたらしく体全体が熱っぽく咳とクシャミが止まらない。

 午前
7過ぎに小田越の登山口に到着。最短距離で早池峰山を終えるにはここがベストなのだ。ところが、辺り一帯はロープが張ってあって駐車厳禁。体調が良ければ河原の坊の駐車場から登ることに何の不都合も無いのだが、今日は別だ。少しでも最短距離に拘りたい。小田越から花巻市側に少し下ったところに2〜3台分のスペースを見つけてここに車をとめた。小田越の反対側(遠野市側)にはもっと広い駐車スペースがいくつもあったのだが、頭が機能停止状態でこの時は気がつかなかった。

 7
45分に歩きだす。いつものペースより大幅にスローダウンし、息が乱れないように試みるが、それでも時折咳き込んでしまう。いつでも来ることのできる山ならこんな無理は絶対にしたくないのだが。。。


            小田越登山口                     しばらく整備された石畳道を歩く


 しばらくは樹林帯のなかをゆっくり高度を上げて行く。すぐにハイ松帯となって巨岩が累々としているなかの急な登りとなる。登山道脇のロープをチェックしている人達がいた。地元の山岳パトロールの方々だ。登山道を歩いて感じたことだが、環境保全と快適な登山に拘って細心のケアをされているようだ。コース内に無数にある石の頭頂部には一つ一つに刻みが入れられいるのはその一例だ。これなら登山靴でなくともスリップを防ぐことができる。他の山でここまで気配りをした登山道があったろうか。


         すぐに大きな石だらけの道になる            


 山頂間近という感じなのだが、いよいよピークかと思うとその先にまたピークがあってがっかりさせられる。極め付けはそろそろ頂上かと思うところで
5合目の標識が現れるのだ。これにはきっと誰しもがっかりさせられる。しかしそれも一時の辛抱。やがて山頂避難小屋が左手に見えてきて元気づけられる。


               5合目の標識                            鉄梯子


 傾斜はますます急となり、鉄梯子やロープの個所も出て来るが、危険を感じる所は無い。急登も一段落するとハイ松のなかの木道を歩いて避難小屋へと向かうようになる。遮るものが無い
2000m近い山の稜線だけあって冷たい風が吹き荒れている。山頂到着は935分。咳とクシャミを連発しながら登りついた貴重な山だ。林立する大岩の一つに登って周囲の景色を見渡す。早池峰山は北上山地の最高峰とは言え、周囲には見知らぬ山ばかり。唯一雲上に突き出た岩手山の秀麗な姿が印象的だ。


          ロープがかかっている                   中央の避難小屋が山頂



               山頂                             山頂の剣群



山頂避難小屋



岩手山が雲海から頭を覗かせている


 ぞくぞくと悪感がするので、そそくさ下山することにする。木道に差し掛かった所で犬連れのハイカーとすれ違う。何とも無愛想な男だ。さらにその先で登山の監視員が待ち構えていたように犬に遇わなかったかと聞いてきた。堰を切ったように件のハイカーとひと悶着あったことを話しだした。この山はペット持ち込み禁止と注意したが、聞き入れなかったのだと。犬連れの山歩きに関しては、どうやらネットでも色々な議論が交わされているようで、この手の話は賛否両論、何れも相当に感情的な対立にエスカレートし易いらしい。暫くガス抜きにお付き合いして再び下山を続ける。

 この頃になると引きも切らずにハイカーと行き合うようになった。中には華やかな山ガールスタイルの若い女性もいて中々人気の山のようだ。車には
1115分に帰着した。スタート時にはどうなるかと心配したが、山のフィトンチッドのお陰か、早池峰神社の霊験の賜物か余り辛い思いもせずに東北における最後の百名山を無事終えることができた。


行動時間   
3時間30
歩行時間   3時間


林道より



後記

 本日の宿、宮古へ向けてゆっくり林道を下って行くと標高600m近辺には素晴らしい紅葉が待ち構えてくれていた。るんるん気分でカーブを曲がった途端、林道の真ん中に何やら真っ黒な動物が居座っていたので仰天、急ブレーキを踏む。何と体長160cm位の熊だ。これまで随分と山道を歩いたり車で通行したりしたが、野生の熊に遭遇したのはこれが初めてだ。カメラを構える前に姿をくらましてしまった。2〜3日前に車を襲った羆のニュースがあっただけにちょっとショッキングな経験ではあった。

 宮古に到着後、市内を一巡してみた。至る所で復興の槌音がしているものの、土台だけになってしまった地域、家は残っても罹災廃業に追い込まれた数多くの商店等々、傷跡が癒えるのには相当の時間と労力、資力がかかりそうなことが実感できた。最終日の
1022日は、予定していた通り宮古から気仙沼まで三陸の浜街道沿いに車を走らせた。破壊しつくされた港湾、街、延々と続く瓦礫の山。テレビや新聞の報道で接していたはずなのに、実際の津波の被害は想像を遥かに超えていた。被災者の皆さまの頑張りはもとより、都会で安穏と暮らす私も何かできることから行動しなければと改めて強く感じた。宮古で東北産品を山ほど買いこんだのは、ささやかながらその第一歩。

 Map  Track   Weather  Map
 トップ

  山歩き

inserted by FC2 system