白馬旭岳BC    1867m        
      

2012526(土)

 前回、剣沢で今シーズンの滑り納めをしたつもりだった。しかし、頭のどこかに焼け棒杭が残っていたようで一週間も経たないうちにまた火がついてしまった。針ノ木沢、剣沢と続けば、残る日本三大雪渓は白馬だけ。これは行かねば板が納まらない。

 好天確約の日を狙って深夜に自宅を発ち、猿倉には
5時半に到着。先着の車は意外に少なく20台ほど。入れ違いでブーツと板を背にしたスキーヤーが出発していった。足元は軽快なズック姿。確かにブーツを履いての林道歩きは楽ではない。思わず、私もと心が動いたが、軽量化の方が最優先、兼用靴のままで通すことにした。

 用意万端整え、午前
6時にハイクアップ開始。猿倉荘に立ち寄って登山者カードを提出しておく。白馬鑓温泉への道を別けてしばらくすると景観が一気に開けた。新緑に残雪の峰々という絵になる美しい景色だ。道端には三脚にカメラを据えてシャッターチャンスを狙っている人もいる。


           林道を歩きだすと、、、                       視界が開けて小蓮華山が歓迎してくれた


 林道沿いの残雪は次第に増えて、終点周辺はすっかり雪景色となった。
2年前の同時期、林道から雪渓に踏み入れた際に苦労して沢を渡渉した記憶があるが、今年は雪が途切れることは無かった。大雪渓に入ってからはシール登行にスイッチ。同じくシール登行を始めた前を行く二人組は右に方向を変えて白馬沢へと向かって行った。この辺りの雪面は縦皺だらけで洗濯板のようだ。それに大小様々な落石がそこかしこに散乱している。私の足前では、石を器用に避けながら滑るのはとても無理、板が悲鳴を上げることになりそうだ。


            やがて林道は雪に覆われる                        林の向こうは大雪渓



雪面は落石と縦皺だらけ


 大雪渓の遥か先の方には登山者の姿が点々と見えている。縦に連なって歩いているので、どうやら団体さんらしい。とてもキャッチアップできる距離とは思えなかったが、きつい斜度になってスピードダウンしてきたのか、葱平の急斜面に差し掛かる辺りでこの人達に追いついた。話している言葉からすると、どうやらお隣の国からの登山客らしい。


             氷河のようなデブリ                         先行登山者をキャッチアップ



団体さんにも追いついた


 シールのままジグザグ登行しているスキーヤーもいたが、私は躊躇なくつぼ足アイゼンに切り替えた。シール登行が未熟ということもあるが、新グッズを試してみたかったのだ。それはアルミ製の
10本歯のアイゼン。これまで使っていた鉄製12本歯の半分程度の重さで装着も簡単だ。実際の使用感も悪くない。但し岩混じりでは材質強度の点で無理なので、あくまで山スキーの補助的なアイテムだ。


小雪渓へと向かう人達


 頂上宿舎に到着したところで小休止し、栄養補給をしておく。そうこうする間に追い抜いた人達がぞくぞくと登ってきたので、私も小屋脇の雪壁を登って稜線へと出た。雪が切れて岩や砂礫が露出した稜線を板を担いで富山側へと渡る。雪の有る地点まで降りたところで、ちょうど
3人組が旭岳へ向けて滑り降りて行った。私も続いてシールのまま下降する。


           すっかり夏毛となった雷鳥                     雪の無い稜線の向こうに旭岳が登場


 下り切ったところから約
150mの登りだ。山頂が近付くにつれて傾斜がきつくなってきたものの、シールはしっかり雪を噛んでくれている。何とかシール登行のままで山頂に立つことが出来た。旭岳は主稜線から外れて目立たない山だが、標高は2867m、日本で39番目に高い山だ。登山道が無いので、残雪の時期に登りたいとかねがね思っていた山の一つ。


先行する3人パーティを追う



           段々と斜度がきつくなり、、、                         やっと山頂に到着


 小休止の後は、シールを剥がしてお待ちかねの滑降を開始する。先行の
3人組は、北斜面にテレマークで滑り降りて行った。私は滑りやすそうな南斜面を清水谷めがけて降りることにした。出だしはちょっと急だったが、新雪が塩梅よくザラメに変化しているので極めて快適だ。


一筆書き


 ノートラックの斜面に一筆書きし、傾斜が緩くなったところで一旦停止。谷は右へドッグレッグして落ち込んでおり、まだまだ滑りを楽しめそうだ。しかし軟弱男の私にはもうこれで十分。高度差で凡そ
200m滑り降りた地点から稜線目指して登り返す。再び岩稜むき出しの稜線へと出て、スキーを担いで長野側の雪のあるところへと戻った。

 白馬山荘直下の雪田を登って、半ば雪に埋もれた山荘に到着。ここから空身で白馬岳山頂をピストンした。
1245分に山頂に立つが、残念ながら薄雲が広がって眺望は今ひとつだ。長居することなく下山開始。山荘へ戻る道すがら旭岳を観察していると東面へ一条のドロップ跡があった。急斜面というよりむしろ切り立った崖。エクストリームというのか、こけたら一巻の終わりだろう。


             稜線への登り返し                             白馬岳山頂へと向かう



山頂から大雪渓を見下ろす



         旭岳東面に滑走跡                      白馬山荘
 
 午後
1時、シール剥がして大雪渓の下降を開始。こんな時間になってもまだ登ってくるハイカーが多数いる。狭い小雪渓に点在する人を避けながらの滑降だ。幸い扱いやすい雪で快適にターンがきまってくれるので、今日はギャラリーの目があっても平常心で滑ることができる。


     杓子岳を正面に小雪渓から大雪渓へと回り込む                お楽しみもそろそろ終盤      


 調子に乗ってがんがん飛ばしていたら、葱平の急斜面で前方宙返りの大転倒をやらかしてしまった。一本のスキーは雪に刺さり、もう一本は流れ止めが利かずにどんどん滑り落ちて行く。登り返して一本を回収し、尻セードで降りようとしたら、もう止まらない。スラフと一緒にどんどん落ちて行く。結局流されたスキーともども傾斜が緩むところまで落ちて、せっかく楽しみにしていた急斜面をふいにしてしまった。


雪面は荒れて落石が多くなってきた


 気を取り直して荒れ始めた雪面に散在する落石に注意しながら下って行く。次第に増える縦皺で快適には程遠い滑り。時折石を踏むたびにソールと私の口から同時に悲鳴が上がる。沢の流れが眼下に迫り、雪も切れだしたところで滑降は終了、ここからスキーを担いだ。

 林道をのんびりと歩いて猿倉には
1420分に帰着。おびなたの湯で汗を流してから、帰宅の途に着いた。今度こそ今シーズン最後の山スキー、累積高度2000m弱を登り、思う存分滑れて大満足の一日だった。


行動時間  8時間20分                 

後記
 帰宅してあらためてチェックすると、スキー板のソールは大小様々な傷でえらいことになっていた。これでは、チューンアップショップに修理に出さねば使い物になりそうにない。つまり今シーズンの山スキーはこれにて強制終了と言うこと。これを機に今度こそ夏山モードに頭を切り替えよう。           

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