八海山   新潟県 1778m       二百名山   
 

2016年10月7日(金)

 今回は越後駒ヶ岳を歩く予定が、道路閉鎖で登山口まで行き着けずに断念。仕方なくお隣の八海山に転進したが、それが図らずも越後の秋山を存分に堪能する充実の一日となった。

 越後駒ヶ岳はBCで何度もその頂を踏んでいる。しかし、アプローチは銀山平など、いつも東側のメジャールートからばかり。機会あれば無雪期に西側の水無川ルートから登ってみたいとかねがね思っていた。越後の山らしく急登の連続する難路ながら、その労苦に見合うだけの素晴らしい眺望が得られるとの前評判のコース。期待に夢を膨らませていると、折よく山頂付近の紅葉が見頃とのネット情報を得た。早速出動準備、台風一過の晴れ間を狙い一路南魚沼へと向かった。

 高速を降りて登山口の森林公園キャンプ場へ通じるR265 に入るとすぐにゲートが通せんぼ。あろうことか、せっかく夜を徹して250Kmを走破してきたのに、災害により全面通行止めとのこと。ご丁寧に「森林公園へは行けません」との張り紙まであった。

 がっかりしていても仕方が無いので代案を検討する。地図を眺めると、すぐ近くに八海山大倉口コースの登山口があった。いつものことで余り考えることもなく即決。かくして霊峰八海山に転進することになった。登山口の八海山神社里宮に行ってみると、山と高原地図に記載の30台あるはずの駐車スペースはどこにも見当たらない。しばらくウロウロし、結局少し下った「八海山おおくらの森」の公園駐車場に車をとめた。

大倉里宮                              踏み跡薄い杉林を行く


 午前5時55分、車を後にし、登山口へと向かう。一合目は、標高255mにある八海山神社、大倉里宮だ。家内安全、無事登山を祈願し登行開始。辺りには苔むした霊神塔や石碑が立ち並び、如何にも歴史ある登拝路なのだが、如何せん下草が道を覆い隠すほどに繁茂しており一種寂寥感が漂う。おまけに昨日の大雨でたっぷり水滴を載せているので、膝から下はすぐにびしょ濡れだ。


              下草がびっしり                         こんな絵もあったが、センス的には、、、


 登山道は薄い踏み跡ながら明瞭。しかし余り手入れはされていないようだ。ロープウェイで労せずして四合目まで行ける今、この登拝路は修験者からも見放されてしまったのだろうか。

 杉林を抜けると急登が始まる。濡れた石や木の根、泥濘とスリップの要素満載の急坂なので殊の外神経を使う。この辺りは朴木の群生でもあるのだろうか、台風の置き土産らしく、登山道上には朴葉の落ち葉が折り重なり合って絨毯となっている。これは程よいクッションとなってくれているが、もう一つの置き土産は進路妨害する無数の枯れ枝。足にまとわりつくのでストックや手で払いのけながら進む。


              急登が続く                                   風穴


 高度が上がるにつれて視界が開けてきた。下界には魚沼平野の一角が、左前方には登るはずだった越後駒ヶ岳の中腹が見え隠れしているが、上部は雲の中だ。


             植生が変化してきた                         越後駒ヶ岳方面の展望も


急登と泥濘に耐え、2時間かけて四合目半の主稜線に合流。登山道は広々し立派、まるで田舎道からハイウェイに乗り入れたかのようだ。


           主稜線のハイウェイに出た                         泥濘対策もバッチリ


 六合目の女人堂までは緩やかなアップダウンの続く道だ。ここで本日初めてハイカーと行き会った。女人堂を過ぎると再び急登が始まる。濡れた岩肌が長く続く鎖場があったりして中々緊張させられる場面も。


                 女人堂                                濡れた岩場の鎖場   


そうこうしてようやく到着した薬師岳の展望は圧巻だった。正面の千本槍小屋の先には、紅葉に彩られた八海山の核心部、八ツ峰の岩稜がそそり立っている。


薬師岳からの展望


 9時25分に千本槍小屋に到着。小屋脇にあるはずの登山道は崩壊のため閉鎖となっていた。屏風道は通行不可ということだろうか。4年前の初夏、連続する鎖と急な雪渓に肝を冷やしながらこのコースを登ったことを懐かしく思い出した。

 この先鎖場の連続する八ツ峰縦走は一度経験しているので余り執着は無い。それでもここで回れ右をするのは勿体ないので、せめて白川岳までは行き、そこから迂回路に降りて引き返すことにした。


迫力の地蔵岳



不動岳から屏風道を展望



薬師岳を振り返る


 険しい岩峰を鎖頼りに上り下りしながら越えていく。目的地の白川岳に着いてみると、山頂近くには大勢の撮影スタッフが居て準備作業の真っ最中だった。カメラを搭載したドローンまでスタンバイさせている。邪魔しては悪いので、その先の摩利支岳まで登ったところでランチタイムにすることにした。





               白川岳には、、、                           撮影隊がスタンバイ


 遮るものの無い岩峰からの眺めは大迫力で申し分ない。それに雲に隠れていた越後駒ヶ岳や中岳が私の到着を待っていたかのように、するするとベールを脱いでくれた。白川岳の撮影隊もこの機会を待っていたようで、ドローンを飛ばし始めた。


大日岳



白川岳の撮影隊を振り返る



ドローン離陸



越後駒ヶ岳 右のピークはグシカハナか


 栄養補給を終え、景色も存分に楽しんだのでそろそろ下山にかかる。白川岳との鞍部にある迂回路の分岐点からトラバースルートを辿っての下山。初めてこの迂回路を歩いてみたが、急な山肌に鎖頼りの長いトラバースが続き、これはこれで中々なスリリングだった。


迂回路から阿寺山と巻機山



            迂回路といえどもスリリング                           同左


 千本槍小屋に帰り着くと、どこから湧いてきたかと思うほどの大勢のハイカーがいた。スキー場のロープウェイ運行開始からすぐに登ってきた第一陣だろう。その先もハイカーの列は引きも切らない。鎖場で団体とすれ違いでもすれば延々と待たされる。


          千本槍小屋へと引き返す                        ハイカーが続々と登ってきた


 正午過ぎに大倉コースとの分岐に帰着した。このまま大倉コースを下るのは余りに芸が無いし、時間もあることなので大崎口コースへ寄り道することにした。


八海山にお別れ RW山頂駅近くの見晴らし台より


 登山道はアップダウンを繰り返しながらロープウェイ山頂駅へ。観光客で賑わう展望台にも立ち寄ってみた。その先はまた無人の荒野となる。大崎尾根は距離が長い分、勾配は緩やかだが、余り歩かれていないのは大倉尾根と同様で、登山道に散乱する落ち枝払いに追われることになった。


        比較的勾配は緩やかな大崎尾根                            霊泉小屋


 霊泉小屋を過ぎてからは一合目まで激下り。下った先は山崎神社里宮だ。地味な大倉里宮よりも遥かに大規模で立派な神社だった。ここからは車道をのんびり歩いた。周囲に広がる米どころでは稲刈りを終えた田が広がっている。休む間もなく収穫後の作業に追われている農機関係の人々。。。山の起伏歩きも楽しいが、たまには山を下りた後のこうした里の散策も悪くない。


               山崎神社                                 参道を下る



再び越後駒ヶ岳を眺めながら大倉へ


 いい加減足が棒になった午後3時35分、大倉の駐車場に帰着した。本命の越後駒ヶ岳は未遂に終わり残念だったが、期せずして越後の山と里の素晴らしさを心行くまで味わえた秋の良き一日となった。


行動時間  9時間40分



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