権現岳  長野・山梨県 2715m     
 20111218

 先週に引き続いて今週も八ヶ岳に通うことにした。行き先は権現岳だ。2年前の4月にこの山に登った際(前回の記録はここ)には、山頂直下の急斜面のトラバースでひどい目にあった。ほんの数メートルほどだが、滑り落ちて腕に怪我をしてしまったのだ。この記憶がトラウマになって雪の季節には近づかないようにしていたのだが、当時よりも装備が良くなっているし、多少の経験も身についている。思い切って再チャレンジしてみようということで前回と同じ、天女山、三ツ頭ルートをピストンすることにした。

 中央高速の長坂
ICを降りる頃、夜明けを迎えた。中央道からは南アルプスや秩父方面をすっきりと見渡すことができる。ところが、残念ながら肝心の八ヶ岳の山頂部分は厚い雲ですっかり覆われている。冬型気圧配置がまだ居座っているせいだろうか。八ヶ岳横断道路から天女山へ向かう道は冬期閉鎖となっているので、そのゲート付近に車をとめることになる。午前6時半というのにこの限られたスペースはもう車で一杯だったが、留め置かれている除雪車の脇にかろうじて駐車することができた。

 車の外は意外なほど暖かい。先週は零下
10度を下回っていたので、最初からアウターを着たが、今日は二枚重ねのフリースだけで済みそうだ。もちろんアウターはザックに入れて背負っていくことにする。645分に出発。


           秩父の山々からの日の出                          天女山へと続く階段


 天女山への連絡道を登っていくと、すぐに小柄な女性に追いついた。足元に目をやると真新しい冬用登山靴を履いている。この先で追いついた中高年男性も下ろしたての冬靴の慣らし運転だと言っていた。どうやら権現岳は冬山の足馴しの場となっているらしい。


            朝日をあびる天女山                      振り向けば富士山が(傾いるのはカメラのせい)


 天女山からしばらくの間、
1500m程度の標高にも関わらず、木々が強い風にゴーゴーと煽られている。この分では稜線は凄まじいことになっているだろう。先週降った雪はかなり融けているようで、標高1620mの天ノ河原にも殆ど痕跡がない。それでも前三ツ頭へ向けて登り出すと次第に雪道になってきた。

 高度が上がるにつれて背後にせり上がってきた富士山と奥秩父それに南アルプスの山並みが美しい。北岳と甲斐駒ケ岳の摩利支天のドームがド迫力だ。あいにく向かうべき方向には厚い雲が待ち構えている。三ツ頭が近くなるにつれ視界が閉ざされ、モノクロの世界になってきた。しかし、その埋め合わせをするかのように美しい樹氷が慰めてくれる。


南アルプスの眺め



              前方には非情な雲                            次第に雪がでてきた



             次第に雪が増えてきた                             樹氷も


 吹きさらしの稜線では立ち止まりたくないので、前三ツ頭直下の樹林帯で小休止し、アウターやアイゼンなど冬装備を身に付けた。三ツ頭から一旦下って権現岳への最後の登りにかかるが、朝飯が軽かったせいか、力が入らない。完全にガス欠症状だ。風の通り道を避けて立ったまま菓子パンで腹ごしらえをする。

 前回はトレースが消えていた上に踏み抜きで苦労したが、今回は夏道がわかる程度の雪しかないので楽ちんだ。気掛かりであった頂上直下の一番の難所は、雪が少ない上に鎖やロープが露出しているので拍子抜けするほど全く問題なかった。難なくトラバースを終えて、ひと登りするとあっけなく頂上に立った。先行者が突き刺さった剣の前でカメラを構えていた。前三ツ頭からは強い西風が吹き付けていたのに、不思議なことに頂上付近では風が治まっている。ギボシがうっすらと見えるだけの視界しかないため、眺望は諦め、すぐに下山開始。


             ガスが濃厚になってきた                          山頂は全く見えない



          雪の少ないトラバース部分を振り返る                   前回はこの急斜面を歩いた



               権現岳山頂                               視界は20m


 岩場の下りは慎重に足を運ぶ。下るにつれ悔しいことに視界はどんどん好転してきた。遠目に三ツ頭を越えてくる登山者の姿が見える。三ツ頭まで来て振り向くと権現岳や赤岳、阿弥陀岳などがガスの合間から顔を出している。登頂のタイミングがもう1時間遅ければと思うが後の祭り。


降りたら晴れてきた


 前三ツ頭でアイゼン外したが、日陰にはまだ雪が残っていて何度かスリップして尻餅をついてしまった。だらだらとうんざりする長い尾根を下り続け、午後
225分に車に帰着した。取り立ててハイライトすることも無い平凡な山歩きであったが、久しぶりに締まった雪にアイゼンの刃を立てる感触が楽しめた。


行動時間  7時間40
歩行時間  7時間

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