後はいやらしい箇所はない。岩交じりの斜面にアイゼンをガリガリいわせながら登り、11時丁度に頂上に立った。大きな剣の刺さった狭い頂上である。ここで昼食とするが、帰路をどうしようかと頭が一杯で、気も漫ろである。少し休んで下山開始。先ほどの滑落の恐怖感から同じところは通りたくない。トラバース地点に着いてから落ち着いてもう一度観察すると雪渓下部のはい松帯まで下れば大丈夫なようだ。雪渓への降り口がいやらしかったが、その後は何事もなく無事尾根筋まで戻ることができた。
やれやれと一息ついたところで本日初めての登山者と遭遇した。聞けば小生のトレースの後をついて来たらしい。後続のパーティもいるが三ツ頭から引き返したとのこと。トラバースに気をつけるよう声をかけて別れた。その後は引き返す途中の二人組み、単独の2パーティを追い越して三ツ頭へ。いい調子でどんどん下っていくうちに踏み後を見失い、別の尾根をしばらく迷い込んでしまう。すぐにミスに気がつくが凡そ15分をロスして再び同じ連中を追い越すはめになった。スタート地点には14時15分に到着、合計8時間10分の山歩きとなった。雪面を数え切れぬほど踏み抜いた割には疲労はそれほどではない。緊張されられる場面があったせいだろうか。総じて素晴らしい景色に加えて色々体験できて充実の山行だったと思う。
今回の反省は、4月の山を甘く見たこと。下調べも不十分であったし、残雪期と言えどもピッケルと10本爪以上のアイゼンが必携だ。腕の傷跡はその後もなかなか消えず、見るたびに慎重に行動せねばと己に警告を発してくれている。
|