2011年9月28日
いよいよ秋本番になってきたようだ。太平洋高気圧に覆われて北陸地方は快晴との予報。せっかくの好天を前に北陸の登りたい山ナンバーワンの毛勝山がまず頭に浮かんだ。しかし如何せん首都圏からのアクセスが悪いので泊まりがけ覚悟となる。そうすると一山では勿体ないので、どこかもう一山もと、いつもの貧乏根性が丸出しになってしまうのだ。このように的が絞りきれない時は大体碌なことが無い。この際、欲張らず、きっぱりと日帰りにしよう。かくして今回の目的地は、毛勝山同様、登りたい山リストの上位にあった餓鬼岳となった。
例によって深夜に自宅を後にし、通いなれた中央道をひた走る。一頃に比べると随分と日の出が遅くなってきた。ようやく空が白み始めた5時15分に白沢の登山口近くのスペースに車をとめた。先着の車が2台あったが、どちらにも人の気配は無い。5時30分にGPSをオンにして出発。歩き始めてすぐに薬の飲み忘れに気がついた。抗血小板凝固剤、血管弛緩剤等々、若い頃は大の薬嫌いだったのが嘘のように今は薬漬け。しかしこれらは私にとって好きな山歩きを安全に続けるため、今や欠かせないアイテムなのだ。
ここからスタート しばらく車道歩き
しばらく草ぼうぼうの車道を登っていくと登山口があった。ここから白沢沿いの沢歩きとなる。右岸から左岸へ、左岸から右岸へと目まぐるしく沢を渡り返していく。一見頼りなさそうではあるが、その実しっかりした木板の橋が固定されているので、渡渉して靴を濡らすこともない。巻き道には梯子がかかっているし、危ういへつりには鎖が設置されている。雨で常にダメージを被る沢コースであり、かつメジャーな人気コースでも無いのに、よく整備されている。とは言えあくまで沢コース、高巻のアップダウンがやたらにあるのだ。それにコースの途中には雨で増水したら確実に通過が困難になりそうな狭いゴルジェがあるのが気になる。
ちょっとオーバーなCT こうした橋の連続
梯子もある 迫力の魚止ノ滝
紅葉ノ滝、魚止ノ滝と過ぎると水流は細くなってきた。最終水場を過ぎると道は尾根に向かって胸を突くような急坂が続く。足場の悪いガレ場を詰めて更に一登りすると大凪山に着く。散々汗をかかされた後だが、あいにくと樹林のなかなので景観のご褒美は無い。それでも木々の間から蓮華岳や針ノ木岳等、高瀬川の対岸にある峰々、それに鹿島槍ヶ岳の双耳峰が垣間見える。コメヅカの樹林帯の尾根を登り下りしながら進んでいくと、ようやく前方に餓鬼岳らしき高みが見えてきた。
両岸の迫ったゴルジェを渡る 木の板によるへつり
この渓谷美を見てほしい
最終水場 振り返ると市街地が見える
ようやく2000mを越える 垣間見える蓮華岳
鹿島槍ヶ岳 針ノ木岳
一旦下ってからいよいよ最後の登りとなる。ここを百曲りと呼ぶらしい。ここで本日初めて他の登山者に出合った。昨日登って餓鬼岳小屋に泊まって今日は唐沢岳方面に行ってきたとのこと。樹林限界もそろそろ終わる頃、餓鬼岳まで30分の案内があった。これに元気づけられ、乳酸の溜まってきた足に鞭打ち先を急ぐ。しばらく行くと今度は餓鬼岳小屋まで10分の標識が出てきた。尾根沿いのフラットの道を行くと窪みに埋もれたようにして建つ小屋があった。
餓鬼岳小屋も近い もう一息だ
小屋脇から見えてきた山頂を目指して最後のひと踏ん張り。山頂到着は9時50分、歩き始めから4時間20分を休まずに登りきった。山頂は文句なしの大展望だ。展望のきかない樹林のなかの登りで溜まったフラストレーションが瞬時に解消する。夏場は午前10時も近くなるとモクモクとわき出てきたガスでせっかくの景色も台無しになることが多い。それが秋空の下では乾いた移動性高気圧のおかげで心行くまで絶景を堪能させてもらえるのだ。写真撮影、腹ごしらえ、山座同定といつもの儀式を一通り終え、もう一度景色を目に焼き付けた。これで思い残すことは無い。そろそろ下山にかかろう。
針ノ木岳をバックに
唐沢岳方面
燕岳の向こうに槍ヶ岳
針ノ木岳と蓮華岳
餓鬼岳小屋前にいた小屋番らしき若者に挨拶してから往路を引き返した。大凪山辺りで単独男性、さらに百曲りで中年カップルと行き合い、これで出合った登山者は合計4名となった。昨夜のテレビで涸沢ヒュッテからの中継番組があったが、平日にも関わらず150名もの宿泊者が居たそうな。そうした北アルプスのメッカと比較したら何と静かで味わい深いコースなのだろうか。
紅葉には1~2週間早すぎたのが唯一の心残りだが、またの機会を期待しよう。花崗岩のザレ場で尻もちをついたり、沢沿いの濡れた岩場を慎重に通過したりと下りに予想外に時間がかかったが、午後2時に無事登山口に帰着した。
行動時間 8時間30分
歩行時間 8時間(登り4時間20分、下り3時間40分)
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