富士山(白山岳)BC    3756m   百名山      
      

2012618日(月

 何気なく山スキー愛好家のブログを見ていたら、富士山の滑降記録があった。それが何と前日のホットな記録。6月も半ばを過ぎたこの時期にあっても、富士山ではまだ標高差1000mのダウンヒルが楽しめる由。標高が高い分、返って今頃の方が雪質のコンディションが良いのかも知れない。

 予報によれば、台風
4号が接近しつつあるものの、明日の天気は晴れ。その後は台風の大雨で雪解けが一気に加速してしまうだろう。今がラストチャンス、と言うことで修理から戻ったばかりの板には気の毒だが、3度目の正直となる板納めに出かけることにした。

 山スキー
1年生の私にとって初めての富士山での山スキー。先のブログによれば、北面の吉田大沢が6月としては例年になく好条件とあった。まるで実感がわかないが、何かあっても登山道も近いしここなら無難だろうと、大沢を目的地に決めた。

 早朝
5時過ぎに富士スバルライン5合目の河口湖口に到着。広い駐車場に車は数えるほどしかない。男女数名のハイカーが身支度を整えていたが、間もなく出発していった。

 
530分に私も車を後にする。スキー板と板に取り付けた兼用靴がずっしりと重い。今回は七合目まで雪が無いので、足回りはスニーカー。足首が固定されて可動域の狭い兼用靴と比べて足運びが何と楽なことか。


         富士山は雲の中から見え隠れ                       ざれた富士精進線を行く


 富士精進線をだらだらと下り、いつ登ったかわからないうちに六合目に到着。ここから落石防護柵に沿って火山礫の道をゆるゆると登る。向かう先には今日滑る予定の大沢の雪渓が待ち構えている。


           大沢の雪渓が見えてきた                          落石防護柵沿いに登って行く


 七合目で先ほど先行した男女混成パーティを追い越す。八合目に差し掛かると登山道に雪が出てきた。斜度を増した道を喘ぎ登っていると、同じくかなり苦しそうな同年輩の登山者に追いついた。話をしながら暫く一緒に歩く。
5月にも来たが、高山病が酷くなり3500m地点まで到達したところで無念の敗退になった由。今日は何としても初志貫徹したいそうな。


           七合目から雪がぼちぼちと                        雪渓の末端はこの辺り



             八合目は雲海の上                         そろそろスニーカーも限界



            雪渓が接近してきた                          同年輩のハイカーに追いついた


 右手の雪渓がかなり接近してきた。ここでスニーカーを兼用靴に替える。偵察を兼ねて大沢の雪渓をアイゼン履きで歩いてみることにした。雪渓の雪は堅くしまっていてなかなか快適だ。登山道から離れて雪渓を直登する。落石防止柵を回り込んだところで、拳大の石が音も無く目の前を滑り落ちて行った。この落石に肝を冷やして、その後は出来るだけ露出した岩峰に近い雪渓の際を歩くようにした。


          落石防護壁へ向かって直登                        防護壁を回り込んで上に出た


 八合目から九合目までが随分と長く感じる。頂上が近くなるほど合目の間隔が伸びているではないかと思えるほど。それに風も強くなってきた。穏やかなようでも流石に富士山。時折突風が襲ってくる。九合目近くなったところで板が強くあおられ、横倒しにされてしまった。落石やら強風やら雪渓歩きは剣呑だ。夏道に戻ることにする。


              夏道に戻った                                鳥居から山頂へ


 
3400mを過ぎると酸素不足が顕著になってきた。足は元気なのに息がすぐに上ってしまう。20歩歩いては呼吸を整えるといった感じ。ぜいぜい喘ぎながら雪のなかに立つ鳥居をくぐって最後に雪壁を直登、5時間半を要して久須志神社に到着した。風を避けて建物の間でランチタイム。


              久須志神社                                  白山岳山頂   


 お楽しみの滑降の前に、白山岳を往復する。前回の富士山初登頂の際に御鉢巡りをしたが、第二の高峰である白山岳は頂を踏まずに巻いてしまったためだ。ザックとスキーは神社にデポしておき空身で向かう。山頂までは僅かな距離だ。

 白山岳山頂に着いたものの、ともかく凄まじい風に体が弄ばれてゆっくりもしていられない。雲海上に頭を覗かせる南アルプスや八ヶ岳を拝んだだけでさっさと退散する。下山しながら剣ヶ峰方面に目をやると富士宮ルートからの登山者が三々五々こちらに向かっているのが見えた。


剣ヶ峰



南アルプス方面の眺望





 道すがら最適ドロップポイントを探したが、やはり鞍部しか無いようだ。再び神社へと登り返し、ヘルメットを頭にスキーを担いで鞍部へと戻った。ここで中高年カップルの登山者から写真のモデルを頼まれる。この時期、富士山のスキーヤーは珍しいのだろうか。



ドロップポイントはこの下の鞍部


 12
10分滑降開始。最初のうちだけ雪面が少しカリカリして緊張したが、すぐに気持ちの良いザラメとなった。中央付近は落石も無く、きれいなバーンで斜度も手ごろ。大斜面を一人占めして眼下の雲海目がけて下降していく。湧きあがる爽快感。5時間半の辛苦は正にこの瞬間のためにあったのだ。


雲海目がけ滑り降りる



           少し狭くなってきた                          それほどきつくない斜度は私向き


 1000m近い落差は一気という訳にはいかず、息を整えるため何回かストップ。細切れにしながら七合目辺りまで滑り降りた。雪渓の幅が次第に狭くなり、落石も散乱しているのでそろそろ限界だ。一旦スキーを脱いで落石防止柵の間を越え、ひと滑りで雪渓の下端に到着。ほんの
20分ほどでお楽しみの時間は終わった。


         次第に落石が散在するようになり                     落石防護柵を越えてオシマイ


 満足感に浸りながらここで大休止。後は消化試合だ。スニーカーに履き替え板を背負って歩き始める。下山開始してすぐにアメリカからの若者達と出合った。カメラを取りだしたのでシャッターでも押してくれと言われるかと思ったら、一緒に被写体になってくれと頼まれる。本日二度目。。。雪の具合はどうかと聞かれたので、彼らの足元を見るとスニーカー。八合目辺りで止めとく方が無難と応えておいた。


六合目からの大沢全貌(左の雪渓末端まで滑り降りた)


 六合目まで降ると漫ろ歩きの観光客とすれ違うようになった。ここでも奇異の目に晒されながら五合目に帰着。かくして今シーズンの山スキーは大満足のうちに無事幕を閉じたのでした。

行動時間  8時間45
歩行時間  8時間


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