四阿山BC  長野・群馬県 2354m    百名山
  

201233

 今回で3回目となるBC、人様の作ったトレースの上を漫然と歩くだけでは飽き足らないと少し欲が出てきた。多くの人が歩く手垢の着いた山でも降雪直後に一番乗りすれば、マイ・トレースを描けるかもしれない。例によって天気図をチェックし、雪をもたらす低気圧が南岸を通過した翌日四阿山へと向かった。この山は人気の百名山、万一何かあっても野垂れ死は避けられるだろう。

 午前
6時にあずまや温泉に到着、登山者用に提供されている無料駐車場に車をとめた。キャンピングカーが一台止まっていたが、人の動きはない。早速身支度し、車を後にする。登山口で板にシールを貼りつけてハイクアップ開始。小雪が舞っているが、上空には青空も見えるので早晩天候は回復してくるだろう。残念ながら降雪量は期待していた程ではなかった。


            あずまや温泉わきの登山口                       しばらく林間コースを行く


 別荘の点在する林を抜けて行くと鉄条網の牧柵が行く手を遮っている。ここから菅平牧場へ不法侵入。柵を跨いで越えると目の前は広大な雪野原だ。薄っすらと以前のトレースが見えているが、今日の目的は先人のトレースを外して歩くことなのでこれを無視。出来るだけ最短距離を歩く。スキー板を踏み込むと雪面がざくっと崩れるが、経験の浅い私にはこの雪質が滑りに良いのか悪いのかわからない。圧雪されたゲレンデとは違うことだけは確かだ。


               牧柵の鉄条網                              トレースの残る牧場



               山頂は雲の中                              牧場を抜け林の中へ


 牧柵沿いに真っすぐ進み、林のなかに入った。ここから尾根に沿って右に折れていく。左手の西へ伸びる尾根は中尾根。
2年前の4月に根子岳から四阿山へと縦走した際の下山ルートだ。高度が上るにつれ、木々が氷を纏いガラス細工のような美しい光景を演出してくれる。


               中尾根の展望                            雪や氷を纏った木々が美しい





期待通りの未踏の雪


 次第に風が強くなってきた。薄っすらと残っていたトレースは、跡形もなく吹き飛んでいる。傾斜が急になってきたのでクライミングサポートを一段、二段と上げて行く。大きく波打つ吹き溜まりの雪面が乗り越えられず難渋することもしばしば。どうしても板が滑って越えられない急斜面も出てきた。仕方ないので方向転換に苦労しながらジグザグに登ることにする。

 相変わらずシール登行の技術は未熟だ。視線を足元ではなく向かう先におき、踵にしっかり荷重すべしと何かで読んだが、なかなかうまくいかない。やがて周囲にはスノーモンスターが見られるようになってきた。何度見ても様々な動物キャラクターを思い起こさせる幻想的な光景だ。

 標高
2200mを越えた辺りは強風が通り道になっているのか、所々岩が露出している。下降時、スキー板を傷つけないようノートしておこう。

 夏道はこの辺りから右へと巻いて行くが、そのまま直進、根子岳から続く尾根筋へと出た。アップダウンが激しい痩せ尾根で吹き溜りも多く、どうやらこのルート取りは失敗だったようだ。下り斜面で前のめりにコケたりと四苦八苦しながら進む。


山頂が姿を現した


 雪のリッジを越えて山頂の御堂に到着。時刻は
1015分。3時間40分の無休憩ハイクアップだった。風も治まって穏やかな山頂だが、流れるガスで期待していた360度の大パノラマは空振り。前回感銘を受けた浦倉山へと続くナイフリッジも一目見たかったのに残念だ。恒例の菓子パンでエネルギー補給しつつしばし休憩する。


                 山頂直下                            あいにくのガスで視界なし



            辿ってきたリッジを振り返る                           山頂のお堂


 さて問題は下降だ。シールを剥がしてスキーと靴を滑降モードにする。狭い山頂から格好よくドロップするなど夢また夢。おそるおそる滑り出すが、慣れない雪質に板が全くコントロール出来ない!あわや立木に正面衝突しそうになり大転倒。四苦八苦しながら山頂直下の急斜面を下りたところで吹き溜まりに突っ込み、またもや大転倒。たまたま居合わせたスノーシューの登山者が雪まみれの私を見て目を丸くしている。


天気は良くなってきたがスキー操作に手一杯


 往路にとった尾根筋は狭くてとても降りることは出来ないので、南側に開けた斜面を斜滑降していく。雪は重く板がひっかかる感じなのでちょっと気を抜けばすぐに転倒してしまう。毎度のことながら深雪から起き上がるのは大仕事だ。


このいたいけな斜面に醜いトレースをつけるのだ



              開けた大斜面もひたすら斜滑降                  ここは当然斜滑降だが時々立木に衝突                       


 この先林の密度が濃くなるにつれて立木との格闘が待っていた。続々と登ってくる登山者に注目され、格好悪いことこの上ない。転倒で穴だらけのよれよれシュプールが見られていると思うと自分が掘った穴に入りたいくらいだ。ともかく曲がれないので大きな斜滑降を繰り返しながら高度を下げて行く。夏道の狭い個所は足を大きく広げてボーゲンで滑り降りた。両足を踏ん張り続けた結果、太腿がパンパンになって何度も立ち止まる。

 皮肉なことに下降するにつれ天気はどんどん良くなってきた。振り返れば青空の下に白銀の峰、しかし景色を堪能する余裕は全くなし。ようやく牧場の大斜面に帰りついた時は心底ほっとした。ゲレンデとは全く異質の雪質に戸惑いながらも、広大な斜面の滑降を本日初めて楽しむことができた。


牧場から四阿山を振り返る


 再び牧柵を越え、林間コースをゆるゆると下って
1215分にあずまや温泉に帰着。自然のなかを颯爽と滑る自分をイメージして始めたBCだが、結果は期待値からは程遠い。ゲレンデの特訓で少しづつ積み上げた自信はもろくも壊滅的に粉砕されてしまった。ナチュラル・スノーには経験を積むことが大事と言うが、この歳ではね~と凹みまくった今回のBC顛末でした。


行動時間  5時間45
登り    3時間40
下り    1時間50

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