四阿山  長野・群馬県 2354m    百名山 

  
 

201049

 日本の山々には判読困難な山名が少なくない。浅学をさらけ出すようだが、この四阿山はその最たるものではないかと思う。この名の由来についてネットでチェックしてみた。四阿には「四角い回廊のある家」、「四角い四隅のある王の棺」などの意味があるらしい。山名の由来は日本庭園に見られる、アズマヤにその形が似ているからだという。それを言葉遊びで「四阿」の字を当てたということらしい。別のバージョンとしては、深田久弥の「日本百名山」に記述されている、日本武尊が鳥居峠で「吾妻はや」と妻を偲んだという故事から名付けられたという説。しかし結局のところ、よく分からないと言うのが正直な印象だ。

 前置きが長くなるが、実はこの山には今年
2回チャレンジしている。第一回目は今年1月。買ったばかりのスノーシューを担いで勇んで菅平入りしたが、予報に反して冬型の気圧配置が緩まず、降り積もった新雪を前にあえなく敗退した。この時はスノーシューを着けても太腿から腰までのラッセルを強いられ菅平牧場の入口にすら到達できなかった。今回は二度目、前回に懲りて、雪との格闘をせずに済む季節の到来を待っての再チャレンジである。

 朝
5時半に根子岳、四阿山の登山口に到着、牧場事務所近くの駐車スペースに車をとめた。周囲に雪はほとんど見当たらず、前回とはえらい様変わりだ。手早く朝食を摂った後、身支度を整えて6時に出発した。胸元には、これまでの山行には無かった重量200gのハイテク新兵器がある。先日、大枚を投資したガーミンのGPSハンディー機だ。那須岳では電池切れで不発になってしまったが、今回はこのガジェットをフルに活用することができた。使用感として、まず便利であることに疑いの余地はない。しかし、便利なものは常にそうであるように、頼り切ることは禁物、使い手の判断、経験や常識も合わせ持つことが重要ではないかとも感じた。恥ずかしながら今回はのっけからルートファインディングに失敗している。四阿山から根子岳へ縦走するつもりで、12500地図に描かれた登山道に沿って歩くことにしたが、牧場のなかで迷子になってしまった。GPSの指示に従って牧場内の草原を大明神沢へ向けて進むが、牧場の柵が途切れずに続いているので、どこまで行っても沢筋に降りることが出来ない。そのうち沢からどんどん離れてしまった。GPSと言うよりむしろ国土地理院の地図に記載されている登山コースを盲信してはいけないということだろうか。

 仕方が無いので最初の目的地を根子岳に変更、左手にルートを取ることにした。同じように柵があるが、一部破損している箇所があったので、ここを越えて尾根筋の登山道と思しき方向へと向かう。トレースや赤布のマーキングはほとんど見あたらない。気温がまだ低くよく締まった雪上を、キックステップを利かせて登る。根子岳へのルートは一本道でわかりやすい。次第に高度が上がってくると長野市、須坂市の平野を挟んで白銀の北アルプスの素晴らしいパノラマが広がってきた。


      北アルプスの山並み(ちょっと傾いているのは御愛嬌)


 
    黒姫岳、火打岳、妙高岳



根子岳山頂、右手は四阿山


 
雪を頂いた黒姫、妙高、火打も立派な山容を見せてくれる。黒姫山、火打山、妙高山こうした景色に癒されながらそれほど苦労することもなく、1時間40分ほどで根子岳の頂に立つことが出来た。ここで、初めて四阿山の全貌が視界に飛び込んできた。長野県側はゆったりした裾野を広げているのとは対照的に群馬県側は急峻な地形をしていている。痩せ尾根があったりしていて険しそうだ。一息を入れた後、銃走路へと足を踏み入れる。あまり登山者が入っていないせいか、或いは雪解けが急ピッチで進んでいるためか、雪上のふみ跡は微かである。痩せた尾根を下降していくと、切れ立った高度感のある岩峰を右から回り込む箇所があってやや緊張する。次第に幅の広がった尾根筋を尻セードも交えながらどんどんと下る。広々とした鞍部から一転して登りにかかるが、地図の示す通り、ここからは相当の急登である。樹林帯のなか、深い雪に足を取られることが多くなったのでスノーシューを履いた。足が沈むことは無い代わりに傾斜のきつい斜面では爪が十分に利かず歩き辛い。
 
 黙々と視界のきかない急登に耐えていると、いつしか傾斜が緩み、当初予定していた菅平牧場からのルートに合流した。ここから雪深い痩せた尾根筋を進むと、間もなく祠のある四阿山の山頂である。根子岳から
1時間35分を要した。頂上は思いのほか狭かった。祠の先は両側がシャープに切れたった雪のナイフエッジになっている。群馬県側の嬬恋村へ抜けることが出来るが、この難場を通過するには相当に度胸が要りそうだ。


縦走路から根子岳を振り返る



根子岳からの下り



鞍部から四阿山を眺める



四阿山の頂上まであと一息



山頂の祠



嬬恋村への道は険しいやせ尾根


 
しばらく休憩した後、足回りをスノーシューからアイゼンに付け替えて下りにかかる。夏道は不明でトレースも見当たらないため、GPSで現在位置を把握しながら樹林帯のなかの歩き易そうなところを選んでどんどん下る。そのうち熊笹に行く手を阻まれてしまったため、藪漕ぎをしながら少しでも夏道に戻るようするが、GPS上の指示に反して登山道らしい状況にはならない。そのうち尾根を巻くようになると沢越えのポイントに出た。雪もいつしか消えている。しばらく進むと牧場の柵が現れるが、道は牧場内に立ち入らないよう柵沿いに迂回している。小生は柵の隙間から牧場内に入り地図通りに進むことにした。牧場内への立ち入りは不法侵入ということだったのかも知れない。そうすると地図上に記載される牧場内を横切るルートとは一体何なのか。割り切れない気持ちのまま、1145分に駐車場に帰着した。帰宅後チェックしたGPSの軌跡は以下のようになっていて夏道をそう大きくは外していないようだ。結局この日は最後まで他の登山者と遭遇することは無かった。この日は長野市内のJALシティホテルに一泊した(例によってマイレージの特典で)。明日は草津白根山へと向かう。


菅平牧場のなかを下る

行動時間              6時間10
実歩行時間           5時間20
歩行距離       14.6Km


一日目   二日目
四阿山 →  草津白根山

Map     Track
  トップ     山歩き 
inserted by FC2 system