朝日岳  山形県 1870m    百名山 

  

201089

 昨日は月山を終えた後、最短ルートとなる27号線から山間の林道を通って朝日鉱泉に到着した。


朝日鉱泉


 
この道は時間的にはメリットがあるものの、周囲には人家が殆ど無い山道である。とうとう最後まで自販機を見かけることもなく、ビールはおろか、ペットボトルの飲み物すら買いそびれてしまった。朝日岳は長丁場なのに水筒代わりの500mリットル容器が2つしかない。それに朝日岳には「アサヒ」ビールを飲むと決めていたのにこれもお預けだ。図らずも休肝日になってしまった。まぁいいか。ビールが飲める小屋泊まりにちょっと心が動いたのが正直なところだが、朝日鉱泉ナチュラリストの家の前庭にズラリと並ぶ車を見て当初の予定通り車中泊とすることに決めた。しかしそれを後で大後悔することになる。標高が600m程度と低いこと、それに沢筋なのでともかくじめじめと蒸し暑い。それに虫がわんわんと飛び交っていて締め切った車の窓ガラスに激突してくるほどだ。殺虫剤を調達する予定だったが、月山から人家もないような道を選んでしまったため手に入れずじまい。車のドアの開け閉めには気をつけたつもりだが、蚊やブヨが無数に車内に入りこんでしまった。追い出そうにもその術が無い。虫の羽音がハーモニーを奏でるなか、覚悟を決めて寝ることにした。我ながら一体どういう神経をしているのか、それとも余程疲れていたのだろうか、比較的熟睡することができたのは不思議である。ただし、むき出しにしていた手足は虫の集中攻撃を喰らって無残なことに。一週間経っても赤の点々がたくさん残っていて痒い。顔が比較的無傷で済んだのは面の皮の厚さのおかげだろうか。


朝焼け



金山沢で水分補給


 
午前3時に起床、狭い車のなかで身支度を整えて3時半に出発。鉱泉の小屋の前を下っていくと吊り橋がある。暗闇の吊橋は嫌だなと思っていたが、ちゃんとライトアップしてあった。しばらく沢沿いに行くと島原山との分岐が現れる。ここから尾根沿いの急登になる。斜面の勾配はきついが、ジグザグが切ってあるのでそう苦しくはない。千枚峰あたりで夜が明けてきた。見事な朝焼けだ。空が真っ赤に染まっている。道はアップダウンを繰り返しながら次第に高度を上げていく。水が1リットルしかないことを心配していたが、まず金山沢でたっぷり水分補給することができた。その後も水場はふんだんにあって最後まで水に不自由することはなかった。やがて木道が現れてきた。左手に島原小屋が見える。木道に導かれて小屋に寄ってみた。数名の泊り客がいて出発の準備をしている。方言からして地元の登山客らしい。彼らから蔵王や月山等の山々を教えてもらった。


島原小屋が見えてきた



島原山の展望台から小朝日岳を望む



手前が小朝日岳、その奥が大朝日岳



昨日登頂した月山の遠望


 
小屋から一旦白滝沢方面への分岐に戻り、ここから島原山への登りにかかる。どこが頂上かわらないうちに通り過ぎるが、その先にある見晴らし台が頂のようなものだ。大朝日、小朝日岳の景観が素晴らしい。ここから見ると小朝日岳がごつごつとして大朝日のたおやかな山容とは対照的である。いっそ雄朝日、雌朝日といった方が適切ではないかと思ったりした。しかし後で大朝日山頂から見下ろすと、小朝日岳は大人しくこじんまりしている。やはり呼称は「雄雌」より「大小」が適切だと思い直した。小朝日岳の頂上には大朝日小屋から来た人達が何人もいた。小朝日岳からの下りは急降下といってよいほどだ。一気に150mほどを下り、再び登り返していく。稜線の両側に広がるお花畑に癒されながら高度を上げていく。途中で古寺鉱泉からの人に追いついた。同じ方向を目指す初めての人だ。


大朝日岳が次第に近くなってきた



ニッコウキスゲが満開



避難小屋



大朝日岳山頂にて(写真は私ではない)



この尾根をひたすら下る



周囲はお花畑だらけ



ようやく沢筋まで下ってきた、最初の吊り橋



朝日鉱泉前の吊り橋



朝日鉱泉から展望する大朝日岳


 
大朝日小屋の脇を素通りして、さらに一登り、本日の目的地、1870mの朝日岳山頂に立った。昨日の月山とは比較にならないほどそっけない頂上である。高曇りの天気ながら、展望は十分に開けている。飯豊、吾妻、蔵王、月山等の眺望が素晴らしい。下山方向の尾根の先には今朝後にした朝日鉱泉の屋根が光って見えている。しばらくするうち北側からガスがどんどん上がって来るし、小雨もぱらついてきたので早々に下山することにした。山頂から伸びている細い尾根を朝日鉱泉めがけて下っていく。GPSのレコードを見ると、ともかく一気に1200mを下っている。太腿と膝には相当な負担がかかるわけだ。途中何人か登ってくるハイカーとすれ違った。家族連れの中には元気な小学生もいる。次第に沢音が聞こえるようになるが、なかなか近くならない。それに下るほどに耐えがたくなる蒸し暑さ。二俣の吊り橋を渡ったところの河原で顔の汗を流す。下山コースは河原沿いなので、緩やかな道をお気楽に行けばよいと思っていたのだが大違いであった。巻き道がいくつもあり登ったり降りたりで結構な重労働だ。清流の流れる小沢が至る所にあるので水の心配はないのが救いだ。

 天気も回復してカンカン照りになってきた。汗がどんどん噴き出す。エメラルド色の滝つぼを見る度に、裸になって飛び込む誘惑にかられる。吊り橋を2つ越えてさらに進むとやがて朝日鉱泉直下にある最後の吊り橋となる。朝日鉱泉から振り返って大朝日岳を望むとあれほどガスが出ていたのに、今は嘘のようにすっきり晴れ渡っている。汗みずくのシャツやズボンを着替えてすぐに車を出す。朝日鉱泉で風呂に入るという選択肢はなぜか全く頭に無かった。虫から早く解放されたいと言うトラウマがそれほど強かったからかも知れない。わき目も振らず向かう目的地はガイドブックで紹介されていた「りんご温泉」。対向車には全くお目にかからないひと気の無い山道を抜けて朝日町へと向かう。りんご温泉の入浴料は
350円也。湯船に浸かった後はしばらく冷水シャワーを体にかけて涼をとった。これで沢水の行水の代替えにしたつもり。ようやく生き返った思いだ。ところで湯船には青林檎がぷかぷかと浮いていたが、いったいどのような効能があるのだろう。ついてに遅い昼食も摂って人心地がついた後は、再びハンドルを握り鳥海山へと向かう。

行動時間    9時間20分
歩行時間    8時間30分
標準CT     12時間10分


一日目   二日目    三日目  
月山    朝日岳    鳥海山  
 
   Map  Track
 トップ  山歩き
inserted by FC2 system