荒川岳  静岡・長野県 3041m    百名山 
 

赤石岳より続く

715

 午前2時に起きだして出発の準備を開始。今日も長丁場だ。午前3時、避難小屋を丁寧に掃除して後にする。後方から煌々と満月に照らされているのでヘッドランプが要らないくらいだ。前岳や中岳の崩壊が新雪でも積もっているかのように白く見えるのは何故だろう。前岳を巻いてから道はジグザグに一気に登り出す。

 夜目にもお花畑がきれいで見とれていると突然目の前に柵が現れたのでびっくり。鹿の食害防護柵だ。それにしても中級山岳ならいざ知らず高度
3000mに近いところまで鹿が出没するとは。鹿に罪は無いが、それでなくとも温暖化で生育環境が厳しい高山植物が食い荒らされるのも考えもの。増えすぎた個体数の調整が必要なのも事実か。

 
440分に中岳山頂に立った。丁度日の出に間に合った。昨日登頂した赤石岳がモルゲンロートに染まっている。この頂は南アルプスの全体像が見渡せる絶好の位置にあると言えそうだ。北は甲斐駒、白峰三山、塩見岳、南にはちょっと赤石岳がかぶっているが、聖岳や上河内岳、それにいつぞやは苦労させられた笊ヶ岳や大無間山もクリアに展望できて嬉しい。もちろん槍穂高、中央アルプス、御嶽、乗鞍など主たる中部山岳も一望なのだ。そしてどの山よりも強烈な存在感のある富士山。日本を象徴するのに相応しい山だとあらためて実感する。


                夜明けの富士山                         東岳から登るお天道様



中岳の背景は南アルプス北部の山々



もう一度富士山



中央アルプス



北アルプス


 素晴らしい絶景だが、いつまで眺めていてもきりが無いので先を急ぐことに。中岳避難小屋を素通りして東岳へと向かう。一旦稼いだ高度を返上してコルへと下る。それにしてもこのコースを時計回りにして正解であったと思う。常に富士山が向かう方向にどーんと聳えているのだ。それと笊と小笊のツインピークがいつも目の前にあって、やはりその存在を主張している。立場を替えれば、ここが南アルプスの絶好の展望台と言われる訳がよくわかった気がした。

 東岳への登りで本日初めての登山者とすれ違う。特に苦労することも無く
200mほどを登り返して荒川三山の最高峰、東岳の頂に立った。荒川小屋から2時間45分。絶景は中岳と変わらないが、陽が高くなっている分、景色がカラフルになっているようだ。


富士山と笊ヶ岳



           朝日に染まる赤石岳を振り返る                    荒川三山最高峰 東岳山頂



南アルプス北部、手前左は塩見岳



南アルプス南部(左奥は大無間山)


 しばらく休憩した後、千枚岳へ向けて下る。それにしても至る所お花畑だらけで本当にきれいだ。250mほど下って痩せ尾根を登り返していると二羽の雛を連れた雌の雷鳥が登山道にいた。この母鳥は私の気を引くように盛んに鳴きながら登山道を先導してくれた。雛を放りっぱなしで何をしているのだろうと訝しく思ったが、おそらく雛を守るため自分にアテンションを向けさせようとしたのだろう。母性のなせる技かな。











 千枚岳には出発からちょうど4時間で到着。ここから今回歩いた赤石岳、中岳、東岳を改めて振り返った。感無量だ。これだけの感激を与えてくれた山と天候に感謝し、下山を開始。下り始めてすぐに昨日椹島ロッジで別れを告げた御仁とようやく再会できた。今日は赤石岳避難小屋に泊まるとのこと。大きな三脚を背負っての撮影旅行らしい。私の方はハイライトは全て終了、後は消化試合のようなものだ。ところがこの試合が長いのなんの。シラビソの原生林のなかを延々と下るのだ。どこまで行っても同じような単調な景色の連続で、いい加減にしてくれと叫びたくなるほど。長大な尾根なのでいくら歩いても高度が下がらない。清水平を過ぎた辺りから登って来る人達に行き合うようになった。明日からの連休ではさらに人出が増えて騒がしくなるのだろう。再び蒸し暑さ、虫の大群に悩まされながら下り続け椹島には1150分に帰着した。すぐにシャワーを借りて汗を流し、生ビールとカレーライスを注文。久しぶりのまともな食事だ。その後は外のベンチでうつらうつらしながら午後2時のバス出発時刻まで時間をつぶした。



              千枚岳                                    軌跡を振り返る



      樹林帯に入ると、む〜と熱くなってきた                焼失した千枚小屋(今年11月を目標に再建中)


行動時間  8時間50
歩行時間  8時間

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