赤石岳  静岡・長野県 3120m    百名山 
 


2011713

 713日から北海道の大雪山系の山々を巡るつもりでエアチケットやレンタカー、宿の手配など準備はすっかり出来上がっていた。唯一の気がかりは天候。出発日が近づくほどに、予報が悪化して北海道滞在中は毎日雨に祟られることが必至の状況になってきた。ぐずぐずと結論を先延ばしして当日まで様子を見ていたのだが、回復の兆しが無いことがはっきりしたのでキャンセルすることに決定。幸い、エアラインと交渉すると特典航空券にも関わらず、2週間後に往復の予約が取れた。宿もすべてキャンセル、レンタカーは違約金を要求されちょっともめたが、仕切り直し後も同じ店から借りる約束をして解決。これで無駄な金を使わずに済んだ。

 で、空いた穴をどうするか。毎日雨模様の北海道とは対照的に東海地方は晴れマークが続いている。それならばと、山開きの前に残された南アルプスの百名山巡りに行くことに急遽決定。すぐに東海フォレストに電話すると午後
3時に畑薙ダムから出るバス便があるとのこと。北海道向けに用意してあった荷物を急いで開梱し、山中2泊分のグッズをあれこれザックに放り込む。食糧を買う時間が無いのと軽量化のため炊事用具は割愛。

 転進決定からきっかり
1時間後の午前9時、荷物を車に積んで自宅を出発した。いつもは真夜中のドライブだが、今日は真昼間なので勝手が違う。都内や静清バイパスでの渋滞にイライラし、狭く曲がりくねっているのに結構な交通量のある山道に閉口しながらも、何とか3時前に畑薙ダムの第一発電所前に着くことができた。同時に送迎バスが到着。ぎりぎりセーフだった。

 大井川沿いを走るバスには私の他、釣り人が三人。話しぶりから、どうやら相当な常連さんのようだ。そのうちの一人は聖沢の登山口辺りで途中下車し沢釣りに。この御仁とは夕食時に相席だったので釣果を聞くと岩名を
7尾ゲットとのこと。小一時間の仕事にしては大したものだ。

 椹島ロッジにチェックインするが、下駄箱に登山靴は見当たらない。
716日の山開き前だからか。それにしてもこの時期の椹島ロッジは閑散としている。風呂は手違いで用意されておらず夕食まですることが無い。ロッジ周辺を散歩したり生ビールを飲みながらぼんやり景色を眺めたりして過ごした。夕食後はいよいよやることが無いので7時過ぎに早々と就寝。ここは標高1000mを越えていても暑苦しく眠りが浅い。


            閑散とした椹島ロッジ受付               88歳にして赤石岳登山というが実態は人力リフトらしい



714

 午前3時前には起きだしてごそごそと準備を始めた。用意してもらった稲荷ずしの弁当は出発前におなかに治まってしまった。出口に向かうと同じタイミングで出発する登山者が一名いた。彼は逆コースで千枚小屋へ向かうとのことだ。お互い周回コースなので、どこかで再会することになるだろう。

 ロッジから二軒小屋に続く林道を渡ってすぐ、東尾根を登り出した。慣れない重荷がずっしり肩に食い込む。登山道はよく整備されているし、斜度もそれほどきつくないので歩き易い方だ。辛いのは蒸し暑いこと、気晴らしになる眺望が無いこと。何よりも耐え難いのは虫の大群だ。口と言わず耳と言わず飛び込んでくるので敵わない。赤石小屋までは高度差
300m毎に5分割した標識が立っているので励みになる。3/5を過ぎてやっと眺望が得られるところまで出た。笊ヶ岳と思しき山の背後に富士山の御鉢部分が顔を覗かせている。


              高度300m毎の標識                        富士山が頭を覗かせている


 4
時間かけて赤石小屋に到着。この小屋のロケーションは最高だ。眼前には赤石岳から聖岳へと続く峰々がその見事な姿を見せてくれている。小屋番の皆さんが16日からの営業開始に向けて忙しく立ち働いていた。気さくな人達でいろいろと聞いても煩がらずに応えてくれた。赤石岳頂上まで余すところ600m、気合いを入れて歩き出した。


赤石小屋から見る赤石岳の雄姿


 富士見平への道を辿っていると、本日初めて登山者とすれ違った。今朝赤石岳避難小屋を発ってきたとのこと。ぼんやりしていたのか、何の変哲もないここの登りで、しなくてよいヘマをやってしまった。先日の燕岳に引き続いてまたもやコケたのだ。ストックがすっぽ抜けてバランスを崩したのが原因。谷側に一回転して左腕と左耳に擦り傷をつくってしまった。実にショック。こうも脆く転ぶようでは、そろそろ山歩きから足を洗うべきかも知れない。傷の痛みより精神的ダメージが大きかった。

 痛む耳を押さえながらよろよろと先へと進む。そんな情けない状態だったが、富士見平からの大展望とそこかしこに広がるお花畑に癒されて少し元気を取り戻した。水場を過ぎてから最後の急坂を喘ぎ登って、ようやく稜線に到着。流石に
2000mの標高差はきつかった。ザックを下ろして空荷で赤石岳へと向かう。大した重荷ではないのに肩にかかる荷重が無いというのはこうも楽なのかと思う。

 お花畑の中をゆるゆると登り赤石岳には
1115分にその頂きに立った。椹島から7時間15分。日帰りでは山頂まで6時間を一つのめどにしているので自分としては随分頑張った方だ。背中に負う荷物の重量と所要時間との明確な比例関係、それと年齢、つまり爺度との相関関係にかなり納得がいった感じだ。ともあれ百名山82座目の赤石岳は若かりし頃から40年ぶり、素晴らしい天気の下で二度目の頂きに立てて感無量だ。


         目的地はまだまだ遥かな高みにある                    富士見平の先にある水場



             稜線まで後わずか                         素晴らしいお花畑に癒される



稜線には雷鳥がお出迎え



        赤石岳山頂はガスでちょと残念                             山頂避難小屋



山頂から聖岳方面



荒川三山方面はガスのなか


 ガスが上がっているので、これから向かう荒川三山方面が少し隠されているのが残念だが、言葉を失うほどの圧巻の景観に文句は言えない。眼下の避難小屋には何人かの登山者の姿が見えるが、わざわざ顔を出す気がしないので頂上から
Uターン、再び来た道を辿る。ザック置き場まで戻ると後ろから若者二人が駆け下ってきた。これから向かう荒川小屋のスタッフとのこと。この先は危険も無いし、時間もまだ十分あるのでのんびり行くことにした。

 大聖寺平へ下っていく頃にはガスがかなり周囲を覆ってきていたが、急いでも仕方がないのでゆるゆると下る。その昔、小渋川を遡行してこの地へ辿りついた時には格別な喜びがあったことを記憶しているが、疲れた今はただの通過点、休まずに荒川小屋目指して下る。荒川小屋には
130分に着いた。まだ営業開始前なので本館の下にある避難小屋が今晩のねぐらだ。どうやら私の他には登山者がいないので20畳ほどのスペースを一人占めだ。


           大聖寺平への下り                           荒川小屋本館とアネックス(手前)



         アネックス、実は物置。。。                            それでも中は快適


 荒川小屋の正面には富士山、それとオッパイのようなツインピークを持つ笊ヶ岳が聳えていてとても印象的だ。夕食は調理パンなので
5分で終了。ゆったりと過ぎる時間を持て余して持参したウイスキーをちびちびやり出すが、ちょっとしたはずみで殆どを地図の上にこぼしてしまった。これでいよいよ寝るしか無くなった。午後6時過ぎ、まだ明るい日差しのなかで眠りについた。

行動時間  9時間30
歩行時間  8時間30分


荒川岳へと続く

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