2758m、2670m 長野県 | |
2015年9月28日(月) 好天の続いたシルバーウィークはどこの山も盛況だったようだ。私は残念ながら私事色々あって禁足状態。混雑緩和に多少の協力は出来たかも知れない。ようやくお許しが出たので、次の高気圧のサイクルを待って北アルプス百高山ピークハントの旅に出掛けた。狙いは西岳、赤沢山、赤岩岳の3座。これらの山々は何れも喜作新道沿いにあるが、何故か微妙に主稜線から外れている。ネットで調べると登山道のしっかりした西岳以外はルーファイや藪漕ぎが必至なようだ。 それと問題は長いアプローチ。ベースとなるヒュッテ西岳へは、上高地、中房温泉何れからでも標準CTで9時間30分もかかってしまう。同じ所要時間ならと、紅葉シーズンを迎え大混雑しているであろう上高地を避けて中房温泉から登ることにした。ところがその中房温泉にも暗い内から車が引きも切らずにやってくる。午前4時過ぎというのに第一駐車場は早くも満車、少々登山口から遠くなるが第二駐車場に車をとめることになった。 4時45分に登山届を提出し、今回で3度目となる合戦尾根を登り始めた。ヘッドランプの光が上にも下にもチラチラ見えている。朝早くから大勢のハイカーが燕岳山頂を目指しているようだ。
第二ベンチを過ぎた辺りで夜明けを迎えた。陽光が差し始めるとモノトーンの景色に色彩が蘇ってくる。まず赤く色着いたナナカマドが鮮烈にデビュー。合戦小屋周辺まで来ると赤と黄のコラボで正に錦秋と言った感じだ。紅葉、黄葉に厳しい登りの疲れも癒されて燕山荘に着くことができた。目標にしていた3時間切りも出来たし、出足はまずまずのペースだ。
燕山荘前のベンチで小休止した後は、銀座通りに繰り出す。山荘周辺は、槍ヶ岳方面にレンズを向ける大勢のカメラマンが列をなしていた。その間を縫うようにして大天井岳へと向かう。
流石に表銀座、行き交う人が多い。大下りの辺りに見るからに登山経験の浅いパーティがいた。すっかり腰が引けてしまっている人、スニーカーに毛が生えたような足回りでフリクションが効かず苦戦する人、等々。実は彼等は台湾からのツアー客で、この日同じ山小屋に同宿することになる。通訳はいてもガイドは伴っていなかったようで、万一悪天候だったりしたらどうするのか、ちょっと懸念されるところ。中央アルプスにおけるガイド無し韓国人ツアーの遭難事故の例もあったし。。。
切り通し岩からは大天井岳はパスし、山腹をトラバースして行く。大天井ヒュッテを素通りし、喜作新道に入ると人通りはめっきり少なくなる。ヘリの爆音に気がついて目をやると、北鎌コル辺りを場所を変えながらホバリングしている。先週末、北鎌尾根で遭難者が出たのだろうか。
赤岩岳は翌日に予定していたのだが、気がつかぬ間に通り過ぎてしまい、残念ながら登山ルートのサーベイは出来なかった。
この日のねぐら、ヒュッテ西岳の手前に西岳へと向かう分岐があった。この分岐からは急坂ながら僅かな登りであっけなく標高2758mの頂きに立つことができた。日本百高山一座目ゲットだ。360度の大パノラマは文句なしに素晴らしいが、次があるので余り長居をすることもなく回れ右する。 ヒュッテ西岳にチェックインし、これから赤沢山に向かうことを告げると、ヒュッテの管理人からレインウェアの着用を強く求められた。衣服に付着したハイマツのヤニ臭が小屋の寝具についてしまうのだそう。それと、森林管理局に入林の届をしておいてくれるとのこと。槍穂周辺は保護林に指定されているが、その関連で何か特別なローカルルールでもあるのだろうか。
赤沢山の起点はヒュッテの南側にあるテント場のはずれだ。事前に調べた通り、岩場を右に巻くようにして急坂を下りると、果たして薄い踏み跡があった。トラロープもあったのでルートは間違いないようだ。それにしても思わず怯んでしまうような激下りだ。
込み合ったハイマツの枝を押し分けるようにして下っていく。レインウェアを着ているのでヤニの前に全身汗まみれだ。枝を押しのけた拍子にザックの脇ポケットに入れてあったペットボトルが引きずり出され、音もなく落下し奈落の底に消え去ってしまった。足を滑らせば私も同じ運命と、思わず枝を掴んだ手に力が入る。
約70m下降し、降り立ったギャップの底は沢の分水嶺。痩せているので慎重に通過し赤沢山への登りにかかる。これがまた今までの下降に輪をかけた激登りなのだ。ハイマツの枝で確保しつつ、殆ど垂直にも思える壁を登っていく。
次第に傾斜は緩み、なだらかな尾根を進むようになる。薄い踏み跡を見失わないように注意しながら、これでもかとハイマツの海を泳いで行く。
午後1時55分、やっとのことで本日2座目の百高山の頂きに立った。我ながら何を好き好んでこんなマニアックな山に来ているのかと正直思うが、苦労しただけに胸に広がる得も言われぬ達成感は格別だ。 乾杯用の飲料は先ほど山の神様に進呈してしまったので、三角点の記念写真を撮っただけで引き返す。激下り、激登りは同じだが、西岳側のハイマツは背が高い上に雪の重みのせいか、どの枝も下を向いており、それを掻き分けながら登るのは下る場合よりも比較にならない程辛かった。
大汗をかかされ、午後3時10分、無事ヒュッテのテント場に帰着。目の前に見えている小山ながら、ヒュッテから往復2時間がかりの赤沢山になってしまった。しかも管理人のご指摘通り、全身ヤニだらけになって。。。 行動時間 10時間30分 二日目 |