弓折岳BC  岐阜県 2588m       
   

20164月16日(土)

 若かりし頃、友人と双六谷を遡行したことがある。大雨で増水した沢を何度も泳ぎながら渡渉し、やっとのことで源頭近くまで辿りついたものの、とどめの鉄砲水に遭って命からがら双六小屋に逃げ込んだことは未だに脳裏に焼き付いている。そんな双六谷周辺でスキーを楽しむ人がいると知って是非再訪してみたいと思うようになった。

 夏はともかく積雪期には馴染みの無い山域なので、まずは小手調べに双六岳周辺を俯瞰できる弓折岳を往復してみることにした。

 午前
5時過ぎに新穂高に到着。ニューホタカホテル下の路肩スペースに車をとめる。いつものリチュアルを済ませ、540分に車を後にした。スキーとブーツを背に、足回りはスニーカーだ。


              ここからスタート                        雪が出てきたのでシール登行開始


 
20分ほど歩いたところで雪がつながり出したので、ブーツに履き替えスニーカーをデポした。日陰に細々と残る雪を拾いながら左俣林道をシール登行する。


            雪を拾いつつハイクアップ                       笠新道周辺は雪が無い


 笠新道の手前まで来ると雪が途切れてしまったため、再びスキーを担ぐ。しばらくすると右岸の沢から落ちた大規模なデブリが林道を塞いでいる。寡雪と言われてもこの凄まじさ。これが大雪の年だったらいったいどういう状況になっているのだろうか。


              デブリが道を塞ぐ                               わさび平小屋   


 わさび平小屋を過ぎると再び雪がつながったのでシール登行を再開。その後も雪切れとデブリにスキーの着脱を繰り返しながら歩を進め、小池新道と奥丸山への登山道の分岐点に着いた。広い沢筋はこれまでとは比較にならない程大規模なデブリで埋め尽くされている。デブリは土砂も巻き込んだ無数の雪塊の集合体。時を経ていないデブリはスキーの先端が突き刺さりそうな起伏が連続しており、とても滑降など出来そうにない。帰途がちょっと心配だ。


            弓折岳が見えてきた                          巨大デブリが道を寸断



小池新道入り口



デブリを越えていく


 デブリ帯を過ぎると遮るものの無い大斜面、陽光と照り返しに汗だくになりながらハイクアップを続ける。元々予定していたのは弓折尾根を登るルート。ところが気が付けば大ノマ乗越側に寄り過ぎ、そのタイミングを失してしまった。今更弓折尾根に取り付くには嫌らしい急斜面をトラバースしなければならない。いっそのことこのまま直登を続け、山頂へ最短距離の正面ルンゼを登り切ることにした。


流石北アルプス、スケールが大きい



この辺りで右の尾根に上がるべきだった


 しかしこの判断は甘かったようだ。高度が上がるほどに斜度がきつくなりシール登行を断念。スキーを背にキックステップで登って行くのだが、硬い雪面には爪先を二度三度と蹴り込み足場固めをしたり、緩んだ雪面は逆に足首まで嵌るラッセルをしたりでペースは大幅にダウン。


大ノマ岳方面



山頂近いようで遠い


 暑さに加え、予期せぬアルバイトを強いられ、消耗も激しい。最後の詰めの標高差
150mにたっぷり1時間もかかってしまった。山頂到着は1230分。実は双六谷源頭に滑り降りて登り返す腹案もあったのだが、とてもそんな余力は残っていないし、そもそも時間切れ。それでも当初の目的は達成できた。


槍穂高が一望の下に



大ノマ岳へと続く稜線



双六岳


 広い山頂を行ったり来たしながら周囲の地形や双六谷源頭部の様子を頭に叩き込む。ふと気が付けば山頂には真新しいシュプールが残されていた。私の他にはスノーシューの登山者が一人先行していただけのはずだったがどうもそうではないらしい。この疑問は後程解消されることになる。


 12
50分、滑降開始。登って来たルンゼは急峻過ぎて私の実力を越えるので弓折尾根の左側に開けた大斜面を下ることにした。適度な斜度、文句なしの快適ザラメに大満足。標高差850mを楽しく滑り降りた。


気持ちの良い大斜面の滑降



どんどん落ちる


 その先は恐怖のデブリランド。秩父沢からのデブリは少し表面が崩れ始めているので滑走可能ながら、その下の生々しいデブリの山が難儀だった。


デブリランドの滑降


 ここで
3名のスキーヤーに追いつかれた。これで先ほどの山頂に残されたシュプールの主が判明した。何と早朝3時半に発って双六岳を往復してきたとのこと。流石に皆さん足の揃った熟達者、大きな雪塊を巧みにかわしながら滑り降りどんどん先に行ってしまった。

 小池新道の登山口まで下山すれば後は消化試合。スキーの着脱を繰り返しながら左俣林道を下っていく。デポ地点まで戻ったところで置いたはずのスニーカーを探すがどこにも見当たらない。使い古した靴をわざわざ持ち去る酔狂な人がいるとも思えないが無いものは仕方ない。ブーツのまま下山を続け、車への帰着は
1540分。ちょうど10時間のスノーハイクだった。

 次回は是非双六谷源頭を探りつつ双六岳まで足を伸ばしてみたい。そのためには遅くとも午前
3時前には新穂高を発つ必要があるだろう。雪の締まっているうちに弓折岳を越えないと私の足で日帰りはまず無理だからだ。それともいっそ日帰りは諦め、双六冬季小屋をベースに双六岳周辺の春スキーをまったり楽しむ方が歳相応かもしれない。。。



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