四ツ岳BC   岐阜県 2745m            
 


2018年1月7日(日)

 厳冬期には貴重な大快晴に恵まれた四ツ岳。しかし最高の天気とは裏腹に私はと言えば風邪気味と睡眠不足で体調は最低。気力体力の限界に加え、股関節の痛みに耐えての正に「精根尽き果てた」四ツ岳でもあった。

 今回もご一緒させてもらうのは群馬のKさん。平湯、午前3時の集合時間に合わせ、午後10時に自宅を後にする。たまたま当日来客があったため、殆ど仮眠時間が取れず、眠い目をこすりながらハンドルを握る羽目になった。

 平湯キャンプ場には予定より早く2時30分に着いた。Kさんも申し合わせたかのように同時刻に到着。すぐに支度を整え、3時ちょうどにハイクアップを開始する。足周りはPon2oon。不遜にもスタート時点では私もラッセル戦力になるつもりだったのだ。結局最後までお役に立てず、スーパーファットは単に重い足枷と化してしまったのだが。。。

 暫くヘッデンを頼りに林間を緩やかに登って行く。ライトに浮かび上がる幻想的な雪景色も悪くないな、等と呑気に構えていると、小沢を越えた辺りからいきなり急登が始まった。キックターンするのも難儀な急勾配。これでナイトハイク気分は跡形もなく吹き飛んでしまった。


暗がりの中ハイクアップ開始



急坂を登る私


 ようやくフラットになって一息つくと今度は急下降。愈々事前に予想していた課題の一つ、大滝川の渡渉だ。過去のトレースは新雪にかき消されているので当てに出来ない。Kさんはここで動物的嗅覚を発揮。すぐに渡れそうなスノーブリッジを見つけ出し、雪をならすなどルート工作にかかっている。


大滝川渡渉 スノーブリッジに道をつけるKさん



スノーブリッジを渡る私


 Kさんのお陰で無事対岸へと渡りハイクアップを継続する。暫くは薄っすら残る過去のトレースを辿っていくが、標高が上がるにつれそれも難しくなった。Kさんはラッセルマシーンと化し、せっせと道をつけてくれるので私の出番は無い。それどころが、精一杯頑張っても先頭のラッセル車には追いつけない。それに私の弱点、股関節が痛み出し戦力外は決定的になってしまった。


モルゲンロートに染まる穂高 モデルは私



ラッセルを一手に引き受け頑張るKさん



疎林の間から山頂付近が望めるようになってきた



股関節の痛みに泣きながら登る私


 標高2400m辺りで後続のスキーヤーが追いついてきた。横浜から来られたAさん。パワフルなストライドでえらくペースが速い。先行しラッセルを始めてもこのペースは落ちない。後ろ姿は見る見る遠ざかってしまった。私とKさんの年齢差は14歳、Aさんに至っては30歳も若いのだ。ご老体としては、これはもう楽をさせてもらうしかない。ガイド付きツアー客に甘んじた私は踏み固められた軌道上を有難くマイペースで歩かせて頂く。


そろそろ樹林限界



Aさんのトレースを有難く拝借


 森林限界を抜け出ると、強い風に叩かれた雪面は固くクラストしてきた。標高2600mでクトーを装着。ふんわりした雪のクッションが無くなり、付け根にズキズキと響く。だましだましここまで登ってきたが、悲鳴を上げ続けている股関節はそろそろ限界だ。山頂まで残すところ130mで、ついに白旗を上げた。


樹林限界を越えると雪面はウインドクラストに



クトーを装着し登行する私



雪煙舞う中を登行するKさん



山頂までもう一息


 それでも折角ここまで来てDNFにはしたくなかったので、ブーツにアイゼン、板を背負って山頂を目指すことにした。多少の意地を見せないと余りに情けない。シール登行ではあれほどの痛みがあったのに、シートラではそれほどではなかったので助かった。

 12時35分に山頂到着。Kさんは強風吹き荒れる中で辛抱強く私を待っていてくれた。申し訳ない気持ちで一杯。それに眼前に広がる360度の大展望に感激もあらばこそ、これでようやく艱難辛苦から解放されるというのが正直なところだった。


山頂で私を待ってくれたいたKさん



シートラで山頂にやっと辿り着いた私



北アルプスを一望



大崩山、猫岳方面


 早速滑降の準備をし、滑降開始。無木立の大斜面のパウダーを蹴散らしながら気持ちよく滑り降りた。その後は楽しいパウダーのツリーラン。ところが、やはり相当足に来ていたようで立ち木の障害物にとっさのリアクションが取れない。コケなくても済むところでコケたり、時にはツリーホールに嵌り雪に埋もれて脱出に往生したりと、残された僅かな体力と気力をいたずらに浪費する始末。


穂高に向かって滑降するKさん



山頂直下、無木立のパウダー斜面を覗き込むKさん



滑降開始!



どんどん落ちる



さらに落ちる



私も落ちる



同上



同上


 そんなこんなで、やっとのことで渡渉地点に戻った。大滝川からの登り返しは僅かな距離だがシールで登行する。その後も急斜面の滑降など気の抜けない場面もあったが、何とか無事に平湯キャンプ場への帰着。時刻は15時30分。久しぶりに12時間越えのBCとなった。


最後の試練 大滝川のSBを渡る


 フィジカルには200%の完全燃焼。一方メンタルはと言えば残念ながら燃え尽きたとは言い難い。今回はKさんにおんぶにだっこ状態で山頂を踏めたようなもの。高齢者の仲間入りをしてからというもの、歳を追うごとに身体能力が着実に低下している事実を認めざるを得ない。それが何とも無念だったのだ。

 山スキーヤーの多くが70歳前後で現役を退くと聞く。古希に向けカウントダウンの始まった私。何時までこんなハードな山スキーを続けられるのだろうか、改めて考えさせられる一日となった。

 それにしてもKさんには今回も何から何まで本当にお世話になりました。感謝以外の言葉がありません。

行動時間  12時間30分
Equipment  Pon2oon 159cm/Scarpa F1Evo


  
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