2115m 山梨県 | |
2017年8月23日(水) 8月に入ってからの記録的な長雨も一段落。ようやく関東地方に戻ってきた晴れ間を利用して奥秩父の鶏冠山に登ることにした。この山は山梨百名山の一つに数えられる知る人ぞ知る名山。その険しさからか、山と高原地図に登山道は描かれていないにも関わらず、好んで登るマニアも多い。かく言う私もその一人。2年前の秋に一度訪れ、そのワイルドな魅力にすっかり憑りつかれてしまった。
午前5時に西沢渓谷に到着。平日のせいか、広い駐車場に車は疎らだ。5時25分に駐車場を後にする。笛吹川沿いの遊歩道を暫く歩き、二俣吊り橋を渡ると、正面に大きく西沢渓谷と書かれた案内板がある。すぐその右脇に青地に白で「鶏冠山→」の道標。ここが実質的に鶏冠山の登山口だ。
暫く林の中を進み、固定ロープを頼りに急斜面を下ると、鶏冠谷出合い。東沢の渡渉地点だ。ここに最近橋が架けられたと聞いていたが、大雨で流されてしまったのだろう。来てみれば残骸しかなかった。石伝いはとても無理なので、面倒でも裸足になるしかない。幸い水量は膝下程度、汗ばむ体には格好の水遊びだ。
鶏冠谷の入り口からすぐのところに鶏冠尾根への取り付きポイントがある。前回ここを見逃して谷を奥まで進み、右往左往してしまった。登山道は良く踏まれてはいるが、主稜線までアキレス腱が緩む間が無いほどの情け容赦の無い急登が続く。主稜線が近くなると木の根っこのジャングルジムのアトラクションまであるのだ。
出発から2時間30分、大汗をかいてようやく主稜線に出た。この先も深い樹林に阻まれ展望の無い単調で辛い急登が続く。しかし永遠に続くかと思われたそんな急登は唐突に終わる。樹林帯から抜け出すと目隠しが外れたかのように360度の展望が目の前に広がった。
前方にはこれから向かう鶏冠山の荒々しい岩稜地帯が続いている。振り返れば国師ヶ岳や乾徳山などこの山域の主要な山々とともに、どこから眺めても存在感と迫力満点の富士山の姿があった。
これでモチベーションも一気にアップ。鎖のかかった第一岩峰、第二岩峰は難なく越え、いよいよ鎖の無い難関の第三岩峰の下に立った。前回はあっさり白旗を上げ迂回道に進んだことが、心のどこかでしこりになっていたのかも知れない。今回は気合十分、迷うことなく直登にチャレンジした。
岩峰を下からじっくり観察すると、左上のクラックに回り込めば何とかホールド、スタンスが確保できそうだ。しかし半端無い高度感。短い手足を精一杯伸ばし必死のアスレチックで何とかクラックに回り込めたが、足場の見えない下降は至難。もう戻ろうにも戻れない。
時間をかけて確実なホールドを選び、体を少しずつ引き上げる。残置ハーケンにかかったスリングにも随分お世話になった。そんな危ういクライミングの真似事をしてやっとのことで第三岩峰のピークに立てた時は心底ホッとした。もう二度とはないだろうジジイのアドベンチャーだった。
この先も中々緊張から解放されない痩せ尾根のアップダウンが続く。9時25分、2115mの鶏冠山山頂に立った。ここまで4時間のハードワークだった。夏山の常でこの時間になるとどこからともなく湧いてきた雲で先ほど前の青空はかき消されてしまった。
急き立てられるように次の目標、木賊山へ向かうことにする。2年前嫌というほど味わされたシャクナゲのジャングルは健在で、枝を押しのけながら何度も往復ビンタを張られてしまった。また数えきれないほどの倒木またぎや倒木くぐりを強いられることも変わらない。しかしこの2年間で明らかに登山道の整備は行き届きつつある。丁寧に付けられたピンクテープのマーキングのおかげで前回何度も迷い込んだデッドエンドの枝道に踏み込むことは無かった。
11時40分、長い障害物競走からようやく解放されて、木賊山山頂に到着。前回はまだ甲武信ヶ岳まで足を延ばす元気があったが、今回はもうこれで十分満腹。寄り道せず素直に下山することにした。
下山路として久しぶりに近丸新道を歩いてみた。枝が散乱し全般的に荒れた印象。何とヌク沢の渡渉点に架けられた橋は水没状態で使い物にならなかった。石伝いに何とか渡れたが、その後もあちこち崩落が見受けられ廃道化が着々と進んでいる印象を受けた。この登山道も西沢森林軌道跡のレールと同じ運命を辿るのだろうか。。。等々思いにふけりながら遊歩道をのんびりと歩き、午後2時40分に駐車場に帰着した。 行動時間 9時間15分 |