2020年12月27日(日)
今冬は西太平洋の海面水温が平年より低い、所謂ラ・ニーニャ現象の発生確率が高いそうな。ラ・ニーニャ発生時には偏西風の蛇行を引き起こし、日本付近に寒気が流れ込みやすくなる。先日の大雪に引き続き、年末には大寒波襲来とのことで、今冬は冬らしい冬になりそうだ。
過去平標山には山スキーで15回訪れているが、そのうち12月はただの一度だけ。藪が雪に埋もれておらず難儀すること必至だからだ。しかし、最近アップされた記録を見ると、ラ・ニーニャは年を跨ぐ前に早くも藪を雪で覆い隠してくれたらしい。そうならば、ということで慣れ親しんだこの山でシーズンインすることとした。同行してくれるのは、いつもの相棒Kさん。いつくかの候補の中でまだ訪れたことがない栂ノ沢を案内してもらうこととなった。
下山予定地の二居にKさんの車を置き私の車で火打峠へと向かう。駐車スペースには先着の車が3台ほど。早速支度をして5時45分、ハイクアップを開始する。軽登山靴とデイパックでの山歩きに慣れた身には、久しぶりの冬山装備とシールの感触は新鮮だが、やはり錘を引きづっているかのように脚と肩の荷がずっしりと重い。
少々拍子抜けの感があるが、除雪最終地点から先には先行者のおかげでしっかりした轍が出来ている。今日はラッセルに汗を流す必要はなさそうだ。林道からヤカイ沢に入ると一気に積雪量が増してきた。ストック計測で前日までの新雪は50㎝ほど。しかし、バックパックに着けた温度計によればマイナス5度と気温がやや高めなので、サラサラパウダーという訳にはいかない。
立派な轍あり楽ちんハイクアップ
藪が煩いところもあるが、何とか突破できそう
晴れてきた 振り返るとこの景色
ヤカイ沢の様子
ヤカイ沢を離れて右に大きくドッグレッグする辺りで、後続の方に追いつかれた。お話すればKさんのヤマレコの他、私の拙いサイトまでご覧になっているとのことで恐縮至極。お歳は私に近いとお見受けしたが、足元はPon2oon。この重い道具をものともせず、大きなストライドで先行していかれた。
ハイクアップするKさん
Pon2oonの方は強い
稜線に出ると、覚悟していた強風の洗礼は無くてこれまた少々拍子抜け。追いついてきた二人組と相前後しながら、山頂を目指した。斜面は殆ど氷化しておらず、クトーを使用することも無く9時20分、山頂到着。
スプリットボードの方と談笑するKさん バックは仙ノ倉山
平標山の家が見える
苗場山のガスが取れた
山頂到着
谷川岳連峰
タカマタギ方面
記念撮影を終えたら、愈々滑降開始。一ノ肩は東側から巻いて行くが、ここはいつも氷化していて緊張するところだ。ところが今回は新雪が笹の乗っている状態で勝手が違う。Kさんは難なく抜けたが、私は笹を踏み抜いた拍子に足を取られてでんぐり返し。後で思えば、これがこの日の苦行の幕開けとなったのだった、、、。
一ノ肩へ向かって滑降するKさん
平標山を振り返る
一ノ肩のトラバース開始
同上
栂ノ沢源頭部へ 私
栂ノ沢源頭部へ Kさん
平標沢や日白山へと延びる尾根を見送ると本日のメインディッシュ、栂ノ沢の源頭部が眼下に広がった。事前にチェックした地図からはセンノ沢や平標沢と比べるとかなり等高線が密になっているように感じたが、実物もその通りでかなり急峻、しかも藪も濃そうだ。
栂ノ沢へドロップインするKさん
同上
栂ノ沢を滑る私
同上
沢床へは落とさずトラバース気味に滑降
ファットの板では雪が深すぎてトップが浮かない
小尾根を乗越すKさん
こんな大穴があるので要注意
沢芯はヒドンホールが怖い
そんなスロープにKさんに続いて滑り込むと、雪質はとろける様なパウダーとは程遠い、ねっとりと重く、しかも深い。バランスを崩して転覆でもしようものなら、スキーや体の掘り起こしにもがかされ体勢の立て直しが容易ではない。そのうち普段使い慣れていない太腿の内側の筋肉、内転筋が攣りだした。これまで脚が攣るような経験は余り無かったのだが、加齢のせいだろうか、最近はちょっと無理しただけで耐え難い激痛に見舞われるのだ。元々急斜面、藪、重雪の三点セットは大の苦手なのに、最近は加えて医学用語で言う「有痛性筋痙攣」までプラスされて四点セットになってしまった。
それでも斜度が緩くなり樹間も広がるとそれなりにツリーランを楽しむことが出来た。問題はこの斜度がゼロに近づいたとき。うんざりするような下りラッセルが待ち構えているのだ。しかし何たる行幸だろうか、センノ沢との出合まで来ると高速道路が開通していたのだ。施工してくれたのはセンノ沢を滑降した若い二人組。それにしてもトレースが何本も交錯しているのは何故だろうと訝しく思っていたが、聞けば何と鹿が先導して道をつけてくれていたのだった。
センノ沢出合からは高速道路
最後は自動運転
林道の下りラッセルは若い二人組とKさんにお任せし、ちゃっかりと介護老人送迎サービスの恩恵に授かった。二居帰着は12時15分。シーズンインは「平標山辺りで軽く足慣らし、、、」といった不遜な思いは脚の激痛で吹き飛んでしまった。翌日になってもまだ痛む太腿をなでさすりながら、何年経験しても山スキーはそう甘くはないと、文字通り痛感したのだった。
行動時間 6時間35分。
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