2020年1月22日(水)
このところ、唐松岳といい、苗場山といい、ピークに立てない山スキーばかりで些か凹んでいる。しかし、このまま萎んでしまうのは癪。歳や道具のせいばかりにせず、気合を入れ直そうと、久しぶりにまとまった降雪のあった谷川山系の平標山を歩くことにした。今回自らに課した約束事は一つ、他人のトレースは当てにせず、独自のルーファイと単独ラッセルに徹して登頂すること。
午前6時、火打峠の駐車スペースに一番乗りする。平日でも天気の良い日には賑わう平標山。早出をせねばハイウェイが作られてしまう。少し明るくなり始めた6時30分、ハイクアップ開始。気温はマイナス10度、張り詰めた冷気が心地よい。
別荘地周辺の前日の降雪量はストック計測で10㎝ほど。それにしても積雪量が呆れるほど少ない。除雪最終地点から先は、例年林道が雪に埋もれて片流れのトラバースとなるのが普通なのに今年は平坦なまま。暫くは足首ラッセルで歩を進める。
明らかに例年よりも小雪
除雪最終地点の様子 林道がそのまま続いている
程なくしてヤカイ沢の分岐点に到着。ここは夏道との二択。藪の様子を知りたいという好奇心が勝ってヤカイ沢ルートを選択した。雪は更に深くなり、前日までのトレースは完全にリセットされているので文字通り我が道を行く、期待通りの展開となった。目の前にあるのはアニマルトレースだけだ。
ヤカイ沢との出合い 全く埋まっていない
藪の迷路
高度が上がるとややマシに
しかし、標高1300近辺はこの有様
斜度が次第に増し、スーパーファットをもってしても脛ラッセルとなった。標高1500m以下の藪密度は想像以上。登りでも枝を掻き分けねば先へ進めない箇所は多数あった。これではとてもスキーをさせてもらえそうにない。ヤカイ沢を帰路にとることは断念することにした。
上部には開けたところもある ここは楽しめそうだが、その後が地獄
支尾根に向かって右に大きく屈曲する頃になって後続が追い付いてきた。南魚沼から来たという若人。いつもなら喜んで先頭をバトンタッチするところだが、誓いを立てた今日はそうはいかない。幸い文句も言わず後塵に甘んじてくれる。しかも「すごい体力ですね」などと褒め殺し付き。お陰で好きなように脛ラッセルを継続させてもらった。稜線近くなると左手から若者がもう一人合流。結局最後までこの3人組で行動することになる。
いつものように稜線手前の樹林帯でアウターとヘルメットを着用。クトーも装着しておく。予報によれば風は穏やかとのこと。しかし、端っこに位置するとはいえ、厳冬期の谷川山系には変わりない。稜線に出ると雪礫を伴って寒風が容赦なく襲ってきた。
支尾根の稜線に出た
稜線を行く若人 彼とは抜きつ抜かれつしながら山頂へ
11時20分、今度こそピークに立つことが出来た。過去最長4時間50分のハードワークが報われた達成感と「やればまだ出来るじゃん」の満足感で一杯になる。強風吹き荒れる山頂で長居はしていられない。早速滑降の準備にかかったのだが、思わぬトラブル発生。。。冬山は予期せぬ出来事オンパレード、何が起きるか分からない。
エビの尻尾の無い山頂標識は初めて
谷川連峰
日本海も一望の下
シールオフした後は板が流されないようリーシュで足首に固定。その直後突風にさらわれ片方の板が凧のように舞い上がってしまった。あろうことか、余りの勢いにリーシュをビンディングに固定していたワイヤが切断。命綱とも言うべき板が、あわや仙ノ倉谷へ飛ばされてしまいそうになったのだ。
間一髪、両手で抑え込み事なきを得たが、先程までの高揚感はどこへやら、すぐには動悸が収まらない。板は生きてでもいるかのようにバタバタと動き回り、手を緩めればすぐに風にもっていかれそうになる。両手で押さえつけながら慎重にブーツをセット。両足無事に履けてようやくホッと一息付けた。
危険地帯からは即刻退散するに限る。滑降ルートは基本夏道沿い。平標山の家に向かって滑降する。風に叩かれ雪は締まっているが、それでも頗る快適だ。山の家から下は比較的疎藪となっている上、文句なしの上質パウダー。標高1200m辺りまで快適なパウダーランを楽しむことが出来た。
左側がマイシュプール
平標山の家
比較的疎林のパウダーランを楽しんだが、、、
やはり藪に捕まった
下りラッセルは若人にお任せ
次第に雪質は重くなり、日向では、板掴みに見舞われ急ブレーキがかかることもあった。標高を下げれば、やはり暖冬、すっかり春の雪の様相だ。痩せ尾根の急斜面を滑り降りて林道に出れば後は消化試合。下りラッセルは若い二人に任せ、満足感に浸りながらのんびり帰途についたのだった。
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行動時間 6時間45分
Gear Pontoon 159cm / Scarpa F1Tr
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