守門岳  新潟県 1537m     二百名山
  

2011413

 前回、仙ノ倉山で見た雪庇は迫力があってとても印象深かった。帰宅後ネットで調べると、同じ上越の守門岳にはどうやら日本有数とか、東洋一とか言われる大雪庇が見られるらしい。この季節、ガイド付き雪庇ツアーまで組まれるほど人気の山との記事もある。日増しに暖かくなっているので、今がおそらく今年最後のチャンスかも知れない。日帰りにはちょっと遠いが思い切って行くことにした。しかし、一つだけ気掛かりなことがある。それは、この所頻発している福島県近辺を震源地とする強い余震。何しろ目と鼻の先の浅草岳は、福島県との県境に位置しているのだ。

 夜半に自宅を出発。深夜の関越道をひた走り、ほぼ予定通りの午前5時半に目的地に到着した。車をとめたのは、二分山神社の少し先にある除雪最終地点の駐車スペースだ。シーズン中の登山口、二口の駐車場はここから2kmほど先にある。先着の車は一台、単独男性がちょうどスキーを履いて出発しようとしているところだった。私も手早く身支度をして550分にスキーヤーの後を追う。2mほどの雪壁を登ると人気の山だけあって至るところにスキーやつぼ足のトレースがついている。トレースが無ければ無いで心細いが、あり過ぎても困るのだ。西川を渡った後は、縦横無尽につけられた踏み跡を無視してGPSを参考にしながら一直線に保久礼小屋を目指した。まだ気温が低いので雪は良く締まっていてとても歩きやすい。長峰と小屋を結ぶ尾根筋へ上がると背後の景観が見事だ。時々振り返り眺望を楽しみながら高度を上げていく。



   除雪最終地点の駐車スペース                      人気の山らしく無数の足跡



   登山口を振り返る                          右手は万太郎山だろうか


二口コースの尾根が見えてきた                       雪に埋もれた保久礼小屋



 深い雪に埋もれた保久礼小屋を過ぎると途端に勾配がきつくなってきた。無雪期は階段が連続するところらしい。ブナ林のなか、フリクションの良く利いた堅い雪を踏みしめてどんどん高度を上げる。程なくキビタキ避難小屋に着いた。小屋の殆どが雪に埋もれて屋根が申し訳程度に顔を覗かせているだけだ。この辺りから森林限界となり真っ白な雪の大斜面を登るようになる。この山の西側は肉まんのようなコンベックス状の尾根なので下からは頂上が見渡せない。もう着いたかと思うとまだ先に白い頂がある。そんな失望を何度か繰り返した後、
830分に大岳の頂に立った。歩き始めから、ここまで2時間40分。写真では何度も見ていたが、守門岳にかけて連続する大雪庇の実物は文句なしに大迫力だ。これだけの雪の塊が微妙なバランスで空中に突き出していて崩れ落ちないとは信じがたい。反対側に迫り出す中津又岳の雪庇も圧巻だ。また庇になっていなくても山稜に乗る雪の厚みが半端ではない。おそらくはタンカー何十隻分にも匹敵するであろうが、これだけの大質量を乗せて山の形が変わることは無いのだろうか。シャッターを切りまくった後は、風が強いので頂上付近に掘られていた雪洞跡に体を沈めてしばし休憩する。



  犬小屋(失礼!)のようなキビタキ避難小屋             のっぺりした大岳の頂はもうすぐだ



中津又岳の雪庇



これが見たかった!左端が守門岳



 しばらく休んだ後は、大岳から守門岳へと向かう。稜線がかなりの斜度で急下降しているので、念のためアイゼンをつけることにした。雪庇には近づかないように気をつけて下る。
一旦鞍部に降りてから1436mピークへの登り返しもやや急坂だ。二口コースへの分岐を過ぎるとゆったりした尾根歩きになる。大自然の作り出す奇観、景観を楽しみながらの稜線漫歩だ。青雲岳を越えると僅かな登りで守門岳の山頂に着いた。時刻は935分。360度の大展望は本当だった。残念ながら霞でもやっている上に、土地勘ゼロなので山座同定は辛うじて浅草岳と越後三山をそれと推定するのみ。近場では、守門岳からの稜線に続く鳥帽子山の尖ったピークが妙に存在感がある。



  大岳からの下り、頂上直下の雪庇がすごい                   1436mピークへの登り



大岳を振り返る



           守門岳へのゆったりとした登り                     頂上からは360度の大展望



飯豊山方面



正面は浅草岳


越後三山方面



隣の鳥帽子山が険しい


 ここでゆっくりしたい所だが、強い風に負けて昼食は諦め、すぐに下山を開始することにした。先ほど通り過ぎた1436mピークに戻り、ここから派生する尾根を下る(二口コース)。高度が下がるとともに風も落ち着いて来たので昼食とする。振り返れば真っ白い稜線が一望でき、雄大な景色に感動を新たにする。先ほど登ったお隣の大岳の尾根(保久礼コース)には、登山者がゴマ粒のように点々と見える。一息ついた後は、再び下山開始。二口コースはお気楽な下山路と思いきや、とんでもないコースだった。下るに連れて尾根が痩せてきて左側はミニ雪庇、右側は谷と平行に走るクラックだらけと恐ろしい状況になってきた。安全に歩けそうなのはせいぜい幅1m位なので気が抜けない。こんな所を通過中に震度6級の地震に見舞われたら、只では済みそうもない等と思わず考えてしまう。やっとの思いで痩せ尾根地帯を通過したら、今度は重い雪の足枷だ。強い日差しと高い気温で雪は完全に腐って脛から膝まで潜ってしまうのだ。猿倉橋から先の林道歩きも強い日差しの下、一歩一歩が深く潜るので消耗する。こんなことならスノーシューを持って来るべきだったと後悔しきり。出発点には1225分に帰着。車が随分と増えて林道の雪壁脇にもずらりと並んでいた。



大岳を振り返る、雪庇はだいぶ崩壊しているようだ



             雪の厚みが圧巻                               二口コースを下る



緊張させられた痩せ尾根


        橋の上にまだ3mはあろうかという積雪                    守門岳(大岳)を振り返る    



 今回は、体力と神経の大半を登りより下りで消耗すると言うあまり経験したことの無い山歩きだった。しかし守門岳はその労苦に見合う評判通りの素晴らしい山、十二分に来た甲斐があった。それにしてもと思う。。。すぐ隣の福島県が大震災、津波と原発事故の三重苦で悲惨な状況にあるとは信じがたいような平和で美しい残雪の山。同じ汗を流すなら何故被災者のためになることをしないのかと自責の念にとらわれることなく、心から日本の美を楽しむことが出来る日が一日も早く来ることを祈りたい。


行動時間              6時間35
歩行時間              6時間10

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